2023/09/29

日米製鋼業盛衰と合衆国IT産業の巨利

その昔,伊藤博文が英国を視察してその国力の源泉は造船と鉄鋼にあると看破した結果,明治政府は官営八幡製鐵所を建設した。その後,英国の鉄鋼業は競争力を低下させ合衆国とドイツが台頭した。2次大戦期のUSスチールの製造能力は凄まじく,世界の兵器廠となった。しかし現在,USスチールの時価総額は200位すら入らない。一方,日本製鐵は53位である。日本の自動車産業が衰退すれば,日本製鐵もランク外になるのだろうか。

合衆国の時価総額上位はITテック企業ばかりである。日本ではGoogleのような新興サービス企業が勃興しないせいか,この種のサービス収支は赤字である。

国家資本主義の中国はGoogleを排除してテンセントとか百度を保護育成して合衆国に対抗しようとしている。かつての日本が辿った道である。中国は世界のヘゲモニーを握れるだろうか。

中国はエネルギと食糧を自給できない。日本も同様だ。ともに自国通貨をスイスのように強くしないと財が流出して衰退していく。日本の経常収支は赤字が定着した感がある。
2023/07/07

EUの中華5G除外と楽天モバイル

EU行政委員会がファーウェイとZTEを締め出す。自宅Nuro光回線の宅内変換機器はZTEだ。5Gになると,欧州は中華排除を決定した。これに対して中国政府の反論反対声明がないから,EUは不法な何か証拠を提示したのか。

情報漏洩を気にしない地域と言えば,アフリカ南米,東南アジアそして日本だろうか。かつて大英帝国は海底ケーブル電信網(レッドルート)を構築し,英政府による電信傍受は周知だった。日英同盟により,ロシア海軍バルチック艦隊の極東回航状況は日本にもたらされていた。

デジタル時代になり,傍受はさらに容易になった。AIは解析分析もする。WWII時のパンチカード(IBM統計機)を操作するオペレータも不要になった。世界最初のプログラム式電子計算機はエニグマ解読のための英国のボンベだった。ナチスドイツは開戦前,大量のIBM製統計機を輸入していたが,日本政府は購入せず,鉄道省と第一生命に各1台あるだけだった。日本陸軍が富士通にフリップフロップ回路の試作を依頼したのは終戦直前だった。戦後,富士通はひたすらIBM互換機と称してコピー機をFACOMとして販売した。合衆国では何台売れたのだろう。

さて楽天モバイルは5G投資に耐えられるだろうか。2024年になっても半分しか5Gに対応しない。基地局設備は中華から韓国に変えるようだ。それにしても,自由競争下ではNECとか富士通のような国産通信機器メーカの凋落は止まらないのか。国策による保護がないとダメな業界なのであろう。一方人口が少ない北欧にはグローバルに販売している通信チップメーカがいくつもあるから,C&Cを標榜していたNECの衰退は日本企業の象徴だろうか。

楽天モバイル5G基地局が韓国製に変わるとは意外だった。高度電子機器とか兵器は韓国製が優位なのであろう。軍の通信システムをみれば,その国のレベルがわかる。空自戦闘機と海自護衛艦との間にデータリンクがない不思議な縦割りである。ドローンとかAI以前の問題だ。自衛隊幹部は旧軍同様どうにもならないのであろう。空母が導入されて,少しはマシになるかな。

参考
2023/05/27

北海道への中国資本招致

九電は北電と同じ PWR を再稼働させてCO2を大きく削減させている。変革の精神が北電では期待できないのであろう。JRも九州の方が積極的経営だろうと思う。なぜ北海道は駄目になったか。地方交付税の優遇させ過ぎではないか。

とりあえず北電に中国資本を入れたらどうだろう。英国は電力鉄道とか売れる公共サービスは売り払った。鉄道電力は日立,原発利権は日立がさらに中国に売却した。中国は世界初のSMR実証炉建設中である。JR北海道も日立が買わなければ,中国に売っていいのでは。しかし売りに出しても中国が手を挙げない可能性もある。北電なら合衆国資本も手をあげるかもしれない。外資は円安のメリットを活かせる。

参考

蛇足
日本がシナのドツボにはまるキッカケはソ連から購入した満鉄利権だった。長い長い支那事変下,鉄道と大都市を占領できても,蒋介石は重慶に遷都して対日戦を継続した。貴重なガソリンは従来のソ連から合衆国が供給するようになった。合衆国は突如,石油製品及び関連技術を道義的禁輸(対日経済制裁)にして在支日本陸軍トラックは燃料に困る。師団長は中央への意見具申が可能である。良識のあるまともな在支師団長が対米戦不可と具申したらしいが,無能な働き者東條は対米戦を決意した。

船の油に困って陸軍が大東亜戦争を始めたのではない。中国との戦争を継続するために油が不可欠だったのだ。昭和天皇には,中国との戦争を止めるために対米開戦しますと説明したのであろう。
2023/05/20

MRJと泊原発

三菱重工のMRJは原型機が飛行できたにもかかわらず FAA の型式認証取得ができずプロジェクトを閉じた。同様に北電の泊原発は再稼働ができず11年経過した。

原子力規制委員会の安全指針をクリアできなかったらしい。MRJにしても高性能を求められていたわけではない。最低限の安全規格である。泊原発だと防潮堤の新規建設工事がネックのようだ。両者とも困難な技術的課題とは程遠い。それなのに迅速かつ安価な方策を見い出せなかった。

改変とか対応は苦手のようだ。お役所みたいな会社かな。丸山真男は敗戦後,外交戦争の意思決定プロセスを天皇を中心とする「無責任体制」と呼んだ。陸海軍のような硬直した組織形態と似通う企業風土は独占市場故に自然淘汰の原理は機能しないのかもしれない。しかし九電は北電同様のPWRながら,規制をクリアして原発再稼働してCO2排出量削減に大きな差が出た。

北電 0.549 kg/kWh
九電 0.299

時は金なりの資本主義の基本が北電と九電では違うのかもしれない。ダラダラ設備投資はお役所工事の典型だろう。しかもフクシマ以降嵩上げした防潮堤を撤去して,新設するという。既設防潮堤の内側に新設すれば,既設防潮堤が津波エネルギを減衰させると思うがそうしないのは何故だろう。総額793億円/1.2kmだから,66百万円/m となる。撤去工事費は何%占めるのかな。

その昔,米海兵がガ島に重機資材もなしに急造した陣地攻略に日本陸軍は失敗した。何故,急速に建設できたか。事前の予想と訓練の成果だろう。一方,日本軍は白兵突撃の訓練ばかりだったか。今でも米陸軍は士官学校最優秀を工兵に配属している。日本陸軍は歩兵科偏重だった。一木,川口そして丸山もどれだけエンジニアリング(工事工兵)に通暁していたか。自ら建設しないと,弱点もわからないだろう。

本土決戦計画では陸軍参謀本部は九州および関東での陣地構築を諦め,水際突撃に回帰した。沖縄戦の牛島も総攻撃して戦力低下を招いている。しかも牛島は陣地構築を参謀任せにして,指示せず構築中の陣地を放棄させて別に構築,中途半端な建設となった。北電の防潮堤も似たようなものか。

参考
2023/02/11

日本株式に長期投資しない理由

武者によると,
ROE(自己資本利益率)を日米で比較すると日本(TOPIX平均)8%、米国(S&P500平均)21%と極端な差がある。またPBR(株価純資産倍率)は日本1.1倍、米国3.9倍と4倍も引き離なされている。
今の日本株式相場は GPIF とか官製相場だろう。NISA もその一環だが,ババを引くのは庶民になるのではないか。国内株式の優遇税制に惹かれて投資するよりは,合衆国株式への長期投資の方がリターンが大きいと思う。

参考
【武者リサーチ】ストラテジーブレティン (323号) 2023.01.23