2014/07/09

原発事故避難計画に消極的知事候補

現在,元官僚,元労組および共産党候補の間で,滋賀知事選が争われている。京都新聞の調査によれば,原発再稼動反対が賛成を大きく上回っている。昨年,日本は7兆円を超える LNG 代を支払った。環境負荷の少ない LNG は高価でしかも日本は天然ガスを液化して輸入しなければならないハンディを抱えている。電力会社は利益を出せない構造になっている。かつて,東條陸軍大臣が大蔵大臣の軍需企業の利益に関しての発言をさえぎり,軍需企業が儲けるのはもってのほかだと閣議で発言したらしい。本来,電力会社が利益が最大になるようエネルギミックスを考えて発電所を運営するのは資本主義ではあたりまえだが,県民はそれを不適当と考えている。

私は原発事故に対応して,事前に県民の避難計画を策定するのが県役人の義務だと思うが,県民はそうとは思わないようだ。一人一人各家庭が逃げるのを当たり前と思っているのかもしれない。というより,逃げる事すら考えていないかもしれない。重大な原発事故が福井で起きると,冬季間の場合,風下の琵琶湖は汚染される。私の住んでいる市は琵琶湖が水源なので飲用に適さなくなる。滋賀県のシミュレーションによれば,2週間の間,琵琶湖は飲料水として不適当となるらしい。

何故,避難計画が上手く作成されないのか。ドイツは第二次世界大戦を始めたとき,軍需工場の疎開,分散を進めた結果,米第8航空軍と英空軍 RAF による長期間の戦略爆撃にも関わらず,戦闘機の生産はさほど低下しなかった。投下爆弾量は日本向けの10倍以上とされる。日本は島国のせいか,米機動部隊のたった一回の空襲で中島(関東)と三菱(中部)の軍用機工場は簡単に壊滅した。戦後の米軍のレポートを読むといかに日本がドイツに比べ疎開計画がずさんで,爆撃対策をとっていなかったを書いてある。日本国民がドイツ国民に比べ,劣っている訳でもなかろう。単に戦争を計画した日本官僚が愚かだっただけだ。

滋賀知事いわく,避難に際し,500 台のバスを用意しますが,運転手はおりません。馬鹿じゃなかろうか。事故が起きたら,滋賀県の役人はいったい何をするのか。バスの手配すらできないだろう。役人の手は何のためにあるのか。市町村提出の書類を保管するだけなのだろうか。長浜と大津には放射能のモニタリングポストがあるけど,非常時にはデータを公表しないかもしれない。福島の例をみると県庁役人,警察と家族が避難した後,放射能値が公表されている。役所を頼らず,各家庭が車で夜間,逃げ出さなければならないようだ。

幕末の黒船来航時,官僚化していたにしろ,武家政権下にあった日本では当時の役人は動員され,彦根藩兵 3000 は浦賀防衛に出動しキャンプを設営した。そんな危機対応能力が残っていたが,明治以降の武官文官分離により,そんな能力は陸自にしかなくなった。経産官僚はたった 200 台のローリすら手配できなかった。危機になればなるほど,文官は仕事をしなくなる。韓国の客船沈没事故対応をみていると,優秀な官僚の酷さがわかる。李朝末期,日本が 200 名足らずの兵力で王宮向けて進軍したとき,朝鮮の文武官僚は何も役に立たず,蜘蛛の子ちらすように失せてしまった。極まった朝鮮王はロシア大使館に避難した。このとき,国民は何を思ったか。西欧流の王なら,臣民を率いて留まるか,あるいは引き連れて脱出するかだろう。中国王朝の最後の皇帝は大抵,戦うことはせず都で自死して終わりだった。首吊りが多かった。その前に,官僚百官はお別れの廟議をひらき,皇帝の前で泣くのが礼儀だった。号泣県議もいたな。お別れ会見だったのだろう。新王朝の皇帝が即位すると,官僚は従前と同じように新皇帝に仕えた。中国以上に儒教化した朝鮮文官は筆と紙により漢文を使用するのを誇りとし,それ以外の道具を蔑んだ歴史がある。公式文書は末端まで全て漢文であった。一方,形骸化していたにしろ,日本の歴代藩主は銃砲の訓練を行い,将軍はフランスから贈られた軍装を身に付けたりしていた。滋賀知事はバスの運転に対して,蔑視の意識があるのかもしれない。自らバスを運転する発想が全くないのだろう。県役人を避難のために動員する考えもないだろう。朝鮮王,中国皇帝および天皇と大した違いがない。東アジアの官僚は奉仕精神が薄く,国家に寄生していると見るべきだろう。東アジアの発展は勤勉意識のおかげであり,国家レベルでみると効率は良くなく,他の地域との競争,とりわけ軍事感覚の鈍感さはどうしようもない。太平洋戦争,朝鮮戦争,ベトナム戦争とかみればわかるように民衆が苦しむだけだ。

福井から押し寄せる避難民を県境で制止,もしくは滋賀県内に収容しつつ,滋賀県民を県南に避難させる発想がない。そんな事をするには警察武力が欠かせない。県警と陸自との協力が必要だが,県警も陸自も中央官庁(警察庁と防衛本省)を向いたままであろう。難民暴徒を抑止する思想はいつからなくなったのだろう。毎日新聞によれば,元陸自官僚は治安出動はしたくないとの言及をしている。幕府は天草の乱を収束させた後,領民を全国に転出させ,天草には他から農民を入植させた。ソビエト政権が実施していたような事をしていた。明治の西南の役になると,そのような強制収容はしなくなったが,旧幕府側の武士への扱いは酷く,北海道への開拓(追放)となった。

福井原発が重大な放射能漏れ事故を起こした際に,短期的には琵琶湖水源の飲料水可否問題と高島市と長浜市民の避難問題がある。知事の発言を聞いていると他人事のように聞こえた。とりあえず,県民を水を飲める地域へ避難させる発想がないようだ。原発と琵琶湖に関心の高かった知事ですらこの程度だから,新知事に誰がなろうと避難計画の策定は進まないだろう。東京空襲を英独航空戦から予想できた金持ちは郊外に引っ越していた。琵琶湖を水源とする各家庭は避難ルートの策定と避難先を独自に用意しなければならない。県はあてにならないという事だ。市に頼っても安全な飲料水の供給は無理だろう。市の計画に水と燃料の記述がないのに驚いた。それともヨウ素を飲みながら,放射能汚染水を飲めという事なのかな。

日本人は水と安全はタダと思っているとの本があったが,原発(エネルギ)と戦争(石油)は日本人に不向きなのかもしれないな。尖閣を守って石油輸入が止まるというような馬鹿な事態が起きても不思議でなくなった。タンカー全部が日本船籍ではないし,船長船員は日本人ではない。日本人船員は皆無である。先ほどのバス運転手と同じ問題が起きる。あたりまえだが護衛艦も油が尽きると,尖閣警備できないのだ。その点,米海軍はインド洋に浮かぶ諸島にタンカーを係留し,有事になれば軍属によりタンカーを運航する。昔,中国から撤兵さえすれば,米国は石油の禁輸を解除したと思われる。東條陸軍大臣は中国撤兵は心臓だと近衛首相に開き直り,近衛は退陣した。当時の安保感覚と今は同じなような気がする。米国が日中の領土問題に介入するかどうかは日米安全保障条約と関係がない。どんな国であれ,他国の領土問題には軍事不介入が原則だ。日米安保が発動されるのは朝鮮有事だ。

参考
再稼働反対56% 福井の原発、京都新聞世論調査 滋賀県知事選
原発事故で住民避難は・・・滋賀県の嘉田知事に聞く
守山市地域防災計画(原子力災害対策編)(案)概要
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