GDP 成長率における技術進歩率の評価
私は大学で経済関係の講義を一切,受けておらず,今の社会では高校の政経程度の知識では全く通用しないと実感している。日本は低成長どころか,マイナス成長に苦しんでいる。Diamond Online が,「成長戦略・規制緩和は経済成長に寄与するか」との題目のなかで,GDP 成長率を分けて,その中に技術進歩率なる項目を知った。
実質GDP成長率
=資本分配率*(資本ストック伸び率+稼働率変動)
+(1-資本分配率)*(労働力人口伸び率+就業変動+労働時間変動)
+技術進歩率
=資本分配率*(資本ストック伸び率+稼働率変動)+(1-資本分配率)*就業変動
+(1-資本分配率)*労働力人口伸び率
+(1-資本分配率)労働時間変動
+技術進歩率
と表せるそうだ。高橋は,「技術進歩も、90年に入ると低迷している。ただし、技術進歩は、設備投資によって体現化される場合が多い。つまり、どんな技術があっても設備投資がなければ、絵に描いた餅になる。設備投資が低迷すると、それにともなって、体現化される技術進歩も少なくなる。と考えると、金融政策で設備投資が減少した結果とも考えられる」と述べている。一理あるなとも思う。しかし,ゼロ金利でも設備投資は活発ではない。既存の産業構造がまだ,過大な生産設備と労働者を保有しているせいであろう。

技術進歩(TFP)について,財務省のレポートがあり,航空輸送業における技術進歩がいかに生産性を上げたかの説明があり,なるほどと思わせる。農業に関しても,西欧中世において農具農法の進歩が農民に富を蓄積させ,やがては英国の貴族階級ではないジェントリ層が,対外通商そして毛織物産業に投資を始め,一大イノベーションにつながっていった。だが,今の日本では富を食い潰しているようだ。フランスのように対外投資中心に食べていくのか,それともオランダスイスのように内国産業を活性化させるかだ。両国はネスレ,フィリップのようなグローバル企業もあるけど,金融と農業は強い。強固な金融資産を背景に日本の地銀に相当するような規模の銀行が日本の中堅企業のスイスフラン債を引き受けたりする。日本の銀行が大量の日本国債を購入しているようでは,絶対日本の経済は上向かない。国のインフラ整備は最も,投資回転率が悪い。オランダスイスを繁栄させてるのは巨大企業ではない。効率の良い政府自治体と個人中小企業の活動だ。農業にしても家族経営が主体だ。合衆国にしても,大企業は農園経営に手を染めない。日本の農業に大企業が参入しても,家族経営のようなきめの細やかな営農は難しいだろう。古代の大農園は効率が悪く,中世の農奴制に変わった。ソ連のコルホーズ,中国の人民公社,イスラエルのキブツがうまくいかなかったのは当然だ。明治以降と戦後に農家から繊維産業と機械電子産業に転進して成功した経営者が多かった。しかし,政府が進める官主導のベンチャー優遇は明治の官営企業が殆ど失敗に終わった経験があるのにも関わらず,似たような政策を始めている。何かを栽培したり,作ったりした経験のない役人が独占とか規制によらず,外国と競争できると思うのはとんでもない思い上がりだ。
しかしながら,日本の場合,将来,共産党であれどんな政党が政権を担うにしても,官主導は止まない。既存の産業は補助金漬けで官とのもたれ合いが酷い。こんな環境では技術進歩があっても,それを推し進める気がなくなるのは当然だ。幕末と戦後の改革がそうであるように,外圧しか日本人の背中を押すものはない。今だと TPP がそれに該当する。だが,合衆国は捕鯨時代と自動車を輸出していた時代と異なり,今はシェールガス革命もあり極端に内向きだ。人口が減少一方の日本は成長するには外国との共存共栄しか他に方法はないのだが,閉鎖的な気性の日本人には自国の開放は難しい。オランダスイスは長い間,外国勢力に支配されて,軍事貴族がいなかった。オランダは商人,スイスは農民が武装化して列強の対立の合間に独立した。宗教も教会中心のカソリックから聖書中心のプロテスタントになった。今の日本の閉塞状況は日本人の集団に同調する精神構造にも関係しているのではないかと思えるのだが。
高校および大学の一般教養の「経済」を役に立つ講義に変えていかないとダメだな。スイスの工業高校では「経済」を教えるらしい。ノーベル賞受賞者を輩出するチューリッヒ連邦工科大学は TH (Technische Hochschule) と称され,University ではない。スイスの銀行の頭取は大学卒ではないそうだ。あんな小さな国だがカントンと称される州の連合体だ。国民皆兵のスイス国防軍の職業軍人のトップは将軍 General ではなく,中将だ。いかにスイス連邦が官僚無縁の国家だかわかる。
参考
実質GDP成長率を要因分解
Price-based EstimateによるTFPの試算
東工大のパートナー大学 スイス連邦工科大学チューリッヒ校
実質GDP成長率
=資本分配率*(資本ストック伸び率+稼働率変動)
+(1-資本分配率)*(労働力人口伸び率+就業変動+労働時間変動)
+技術進歩率
=資本分配率*(資本ストック伸び率+稼働率変動)+(1-資本分配率)*就業変動
+(1-資本分配率)*労働力人口伸び率
+(1-資本分配率)労働時間変動
+技術進歩率
と表せるそうだ。高橋は,「技術進歩も、90年に入ると低迷している。ただし、技術進歩は、設備投資によって体現化される場合が多い。つまり、どんな技術があっても設備投資がなければ、絵に描いた餅になる。設備投資が低迷すると、それにともなって、体現化される技術進歩も少なくなる。と考えると、金融政策で設備投資が減少した結果とも考えられる」と述べている。一理あるなとも思う。しかし,ゼロ金利でも設備投資は活発ではない。既存の産業構造がまだ,過大な生産設備と労働者を保有しているせいであろう。

技術進歩(TFP)について,財務省のレポートがあり,航空輸送業における技術進歩がいかに生産性を上げたかの説明があり,なるほどと思わせる。農業に関しても,西欧中世において農具農法の進歩が農民に富を蓄積させ,やがては英国の貴族階級ではないジェントリ層が,対外通商そして毛織物産業に投資を始め,一大イノベーションにつながっていった。だが,今の日本では富を食い潰しているようだ。フランスのように対外投資中心に食べていくのか,それともオランダスイスのように内国産業を活性化させるかだ。両国はネスレ,フィリップのようなグローバル企業もあるけど,金融と農業は強い。強固な金融資産を背景に日本の地銀に相当するような規模の銀行が日本の中堅企業のスイスフラン債を引き受けたりする。日本の銀行が大量の日本国債を購入しているようでは,絶対日本の経済は上向かない。国のインフラ整備は最も,投資回転率が悪い。オランダスイスを繁栄させてるのは巨大企業ではない。効率の良い政府自治体と個人中小企業の活動だ。農業にしても家族経営が主体だ。合衆国にしても,大企業は農園経営に手を染めない。日本の農業に大企業が参入しても,家族経営のようなきめの細やかな営農は難しいだろう。古代の大農園は効率が悪く,中世の農奴制に変わった。ソ連のコルホーズ,中国の人民公社,イスラエルのキブツがうまくいかなかったのは当然だ。明治以降と戦後に農家から繊維産業と機械電子産業に転進して成功した経営者が多かった。しかし,政府が進める官主導のベンチャー優遇は明治の官営企業が殆ど失敗に終わった経験があるのにも関わらず,似たような政策を始めている。何かを栽培したり,作ったりした経験のない役人が独占とか規制によらず,外国と競争できると思うのはとんでもない思い上がりだ。
しかしながら,日本の場合,将来,共産党であれどんな政党が政権を担うにしても,官主導は止まない。既存の産業は補助金漬けで官とのもたれ合いが酷い。こんな環境では技術進歩があっても,それを推し進める気がなくなるのは当然だ。幕末と戦後の改革がそうであるように,外圧しか日本人の背中を押すものはない。今だと TPP がそれに該当する。だが,合衆国は捕鯨時代と自動車を輸出していた時代と異なり,今はシェールガス革命もあり極端に内向きだ。人口が減少一方の日本は成長するには外国との共存共栄しか他に方法はないのだが,閉鎖的な気性の日本人には自国の開放は難しい。オランダスイスは長い間,外国勢力に支配されて,軍事貴族がいなかった。オランダは商人,スイスは農民が武装化して列強の対立の合間に独立した。宗教も教会中心のカソリックから聖書中心のプロテスタントになった。今の日本の閉塞状況は日本人の集団に同調する精神構造にも関係しているのではないかと思えるのだが。
高校および大学の一般教養の「経済」を役に立つ講義に変えていかないとダメだな。スイスの工業高校では「経済」を教えるらしい。ノーベル賞受賞者を輩出するチューリッヒ連邦工科大学は TH (Technische Hochschule) と称され,University ではない。スイスの銀行の頭取は大学卒ではないそうだ。あんな小さな国だがカントンと称される州の連合体だ。国民皆兵のスイス国防軍の職業軍人のトップは将軍 General ではなく,中将だ。いかにスイス連邦が官僚無縁の国家だかわかる。
参考
実質GDP成長率を要因分解
Price-based EstimateによるTFPの試算
東工大のパートナー大学 スイス連邦工科大学チューリッヒ校
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