2015/05/24

TPP と9カ国条約

合衆国上院が通商条約締結権限を大統領に委譲する法案を通した。具体的には TPP の事だ。中国が急速に成長できたのも,合衆国が中国の WTO への加盟と通商制限を解除したからだった。その頃から,中国にとり日本の比重は下がり続け,現在の反日になった。日中友好平和条約締結の頃は,中国政府は日本の外貨と技術が欲しかったけど,今ではさして必要にならなくなった。

第一次世界大戦後の戦間期に,欧州ではベルサイユ体制が築かれ,アジア太平洋では9カ国条約が列強の間で締結された。この条約は中国における列強の権益を互いに尊重して追認し,加盟国の突出を禁ずる紳士協定だった。実質は日米の2強が中心だった。TPP も協定加盟交渉国は多いけど,交渉の実体は日米の経済摩擦だ。そして日米交渉者の頭の中にあるのは,中国の存在だ。考えようによっては,TPP は9カ国条約の焼き直しとみなせなくもない。大きな違いは欧州の列強が姿を消し,かつての植民地がプレイヤーとして登場した事だ。

戦間期では,疲弊した欧州列強に代わり,日米がものすごい伸び率で中国投資を増大させた。何の事はない,日中の中国権益獲得競争が太平洋戦争になった。皮肉も,中国は日中戦争を通じて,一気に租界等の権益回収および治外法権の廃止,さらに列強の地位(常任安全保障理事国)を得た。争いが不利になると,戦線を縮小するより拡大する方が有利になる場合がある。弱かったけど広大な中国とか償還できない国債を発行し続ける日本政府の政策がそうだ。マスコミは焼け太りと称している。

NHK の報道によれば,昨年度の日本の対外資産の伸び率は驚異的だった。日本は世界最大の債権国だとのコメントがついた。日本国債の残高は国内の金融資産を超過している。これは日本が債務超過になっている事を示しているが,膨大な対外資産の保有が国債暴落の歯止めになっているのだろう。国家間の紛争が激化し,戦争直前になると敵国資産を凍結(没収)する。日中と日米間の資産保有をみれば,戦争状態になると圧倒的に日本が不利だ。特に,中国の統治に乱れが生じてくると,てっとり早いのは日本と戦争を始め,国論を統一し,日本の資産を没収できる事だ。

対独戦では不撓不屈の精神を発揮したチャーチルでさえ,インド独立は英国に立ち直れない打撃を与えると考えていた。インドは英本土に殆ど,資産を保有していなかったのであろう。日中および日米の経済摩擦を少なくし,日本の国家リスクを軽減するには,中国と合衆国から投資してもらわなければならない。残念ながら,ともに片務的にならざるを得ないだろう。中国と合衆国の投資家が日本に魅力を感じる投資案件がどれだけあるだろうか。TPP は日本の在合衆国資産を保全するためにも有効だろう。また,IMF 専務理事は通商の自由化が日本の成長エンジンになるとも言及している。

食糧もエネルギもないと,日本は成り立たない。合衆国はシェールガスの産出により,戦前のようにエネルギ輸出国に転じる。あのゴールデンエイジが再来するのだ。中国への投資は,かつての失敗と同様の結果を招くだろう。それでも,日本は対中リスクを取るようだ。私有財産権の概念がない中国政府と華僑の使い分けによほど,注意しないと近衛政権(日本軍国主義)が蒋介石相手に翻弄されたようになるだろう。

参考
Reinvigorate Trade to Boost Global Economic Growth
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