2015/06/08

CRT 分解とドライバ見積もり回答

17インチディスプレイの背面から上下左右の4本のタッピングネジを取り外すと,カバーが外れる。穴あき金属シャーシが全体を覆っている。シャーシは長期の使用にも関わらず,ほこりの堆積が少ない。M3x6 ネジを取り外すと,CRTの全体が見えるようになる。CRT ドライバが収納されている基板 Assy の分解方法がわからず,悩む。CRT の根元首を締め付けているネジを緩め,動かしているうちに外れた。昔の真空管ソケットのような構造だった。CRT は真空管のお化けと考えれば,電極構造も同じか。電極接合に関心させられる。なんとゴム系接着材だ。真空にも耐えるのか。

基板上部の 2/3 程をヒートシンク兼 CRT ホルダの構造になっていて,搭載部品がよく見えない。肝心の CRT ドライバの型名は LM2405T だった。データシートの参考回路をみたら,ドライバの出力に 80V と 120V を印加するようになっている。この入力電圧が変動低下している可能性もある。ヒートシンクを外したいが,シンクは基板にタブを介して半田付け固定されている。シンクの板厚は2mm もある。

ドライバチェックのためにプローブとかリード線を出すには,ヒートシンクの半田除去と,半田付けを繰り返す必要がある。私のはんだこては熱容量が小さく,この種のシンクの分解組立は面倒だ。半田付けせず,組立実験したらどうなるか。それでも,プローブを当てられないから,ドライバ周辺の電圧のチェックはできない。

メイン基板をみると,液漏れとか劣化していそうな電解コンデンサはないが,電源部のポリエステルフィルムコンデンサは全て変色している。恐らく,発熱のため劣化しているのかもしれない。フライバックトランスを駆動する FET のスナバキャパシタが変色している。サージ電圧に耐えられなかったのか。この種のキャパシタは劣化すると,電流損失が大きくなり,発熱しさらにまた損失が増大する悪循環に入る。表面が焦げかけて,定格容量がわからない。形状寸法より類推して交換してもいいけど,サージ電圧の測定が必要だろう。私の所有している DSO のプローブの定格電圧では不十分だ。

画面に現れた症状と分解して基板上の部品劣化の症状が一致していない。修理するとしたら,どちらを優先するか。やはり画面の症状だろう。くだんのドライバは検索すると,内国の販売事業者から入手できるようなので,いくらくらいになるのか問い合わせている。7ns の高速ドライバだ。大きなGB積を考えたら,発熱するのは当たり前だな。ドライバといっても,高速アンプだ。丁度,筐体の外装に手を当てたら,熱を感じる部分だ。CRT 本体が熱を発する分けじゃないと思う。実際,CRT のソケットは熱にさらされた痕がない。昔の真空管ラジオをつい,連想して球は熱いとカン違いしていた。消費電力は 130W もある。

つきつめれば,CRT モニタ回路とは ビデオカードからの RGB 微弱信号を CRT 表示するために増幅しているだけか。さらに,電源および CRT 駆動周辺回路が必要になる。症状と原因が 1:1 の対応にあれば,物事は簡単なのだが,トライアンドエラーをするには,凝った設計になり過ぎている。民生品だから仕方がない。CRT のキャッチアップ(改良開発)は日本お得意で,トリニトロンは殿堂入りした。日本のテレビとビデオデッキは世界を制覇したが,この製品を分解すると往時の名残かと思う。

メイン基板に堆積した蚊のミイラとかをピンセットで取り除いた。CRT 本体をティッシュペーパで擦ると,透明ガラスで黒色だと思っていたのは埃が炭化した物だった。CRTは,ほれぼれするような複雑な設計になっている。三菱の製品だ。日本海軍三沢基地上空の一式陸攻が NHK の開発により PPI レーダスクリーンによる地形表示に成功したのは終戦直前の1週間前 (1945 年)だった。一方,米海軍研究所 NRL とGEがこの種の開発をしたのは 1941 年だった。 日本海軍研究所と米海軍研究所がレーダの研究を開始した時期にさほどの差はない。ただ,マグネトロンの研究に傾注した日本海軍と応用に重点においた米海軍の違いがあった。米海軍は英国のマグネトロン技術を導入し,日本海軍はドイツの信号処理技術を取得する関心がないようにみえる。これに似たような話が,日本の大企業にも見え隠れするなと思ってしまう。シャープはポケットコンピュータ,電子手帳およびザウルスを開発しながら活かし切れなかった。大企業の経営は難しいものだと思う。日本の組織は軍隊の中隊規模が最適なのかと,最近思うようになった。

LM2405T の見積もり回答があった。@3,100 だ。半日もしないうちの回答だ。いい時代になった。電源部故障の可能性,高圧プローブのない状態および現在流通している高精細デジタルビデオ信号入力ディスプレイの市場価格を勘案すると,修理は取り止めだ。ただ,高速 7ns で 100V スイングするアンプの選択肢として CRT ドライバを応用も考えられるという設計おもちゃ箱が増えたのは収穫だ。1日,楽しく遊ばせてもらった。

分解写真等は後日,サイトの方にアップします。
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