廃炉と米中原子力協定
合衆国は日本に原発技術を提供したように,中国にも供与を更新する。新型炉は 2017 年に稼動するそうだ。新型炉は60-70 年の稼動期間を考えているようだ。放射線はありとあらゆる材料を劣化させる。しかもその材料は高温に曝されている。
日本の原発は後だしの新規制により,既存の原発再稼動にメリットはなくなった。金子のいうように不良資産になっている。廃炉は4兆円とか10兆円という額を提示しているが,その根拠は示されていない。算出額が低いように感じられる。脱原発に踏み切ったスイスベルン州の廃炉費用は以下の通り(単位は億フラン)
解体 21
最終処分場 13
除染 8
計 42
邦貨に換算すると,5166 億円になる。欧州が脱原発に踏み切れるのは,安価な天然ガスとフランス東欧からの買電がある。日本は欧州の倍から3倍近い価格の LNG を燃やして電気を産み出している。そのため,毎年数兆円の国富を蕩尽している。原発を再稼動させて,廃炉費用を捻出させたらどうだろうか。
原発事故が起きた時の対策として,緊急時の道路(橋、トンネルも含む)を最優先しているレポートがある。日本の原発周辺は陸の孤島が多いから,納得だ。滋賀も湖西に住んでいると,避難は困難だ。新幹線とか高速道路にはカネをかけるけど,バイパスとか渋滞対策は二の次だ。多分,軍道の歴史がないせいだろう。江戸幕府は街道を整備したけど,馬車を通らせる事は全く考えなかった。車のなかったインカ文明とかに近かった。
今,中国経済の減速のためエネルギ価格が低下する一方だ。合衆国の石油業界は利益を上げられなくなってきている。高値で購入してくれる日本の電力業界はいいお得意さんだ。日本には LNG を売り,中国には原発技術を売るつもりだ。合衆国はしたたかだ。
日本は最終処分場を決められないから,原発立地場所が核廃棄物保管場になる。中国はどうするつもりなのだろうか。核実験場のある新疆か。利益を受けた者が負担するという原則に立てば,東京都内に東電の廃棄物保管所を設置しなければならないが,不可能に近いだろう。やはり,廃炉負担も含め先送りが順当だろう。2040 年の日本は原発の廃炉もままならなくなっているだろう。
世界初の商用原子力圧力容器の写真を見ながら,厚みはいかほどかと思った。内張りはステンレス,配管は SUS316L だ。格納容器の厚みは 38mm から 45mm になるそうだ。PWR だと設計温度は 132℃だそうだ。
フクシマ原発 Mark-I の格納容器内の圧力抑制室とのシールはゴム製だ。Mark-II はステンレス製ベローズに変更された。PWR には圧力抑制室がない。なぜ,東電が BWR を採用したのだろうか。PWR の弱点は蒸気発生器だ。蒸気発生器には熱交換のためのU字管が用いられる。管内は高圧水が流れ,管外は低温の水が接触して沸騰する。高温蒸気は活性が高く材料を腐食させるし,泡界面では衝撃波も発生する。NRC の調査によれば,三菱重工の蒸気発生器の自動設計プログラムに不備があったようだ。多額の賠償は免れないだろう。今後,三菱重工の蒸気発生器を新規採用する海外の電力会社があるのだろうか。アレバとかウェスティングハウス製 PWR が商戦に優位になるのかな。それとも,設計プログラムを修正して信頼性を回復できるかもしれない。PWR は米原潜と原子力空母に採用されて,炉の暴走事故もなくそれなりの信頼性があると思う。
トラブルが発生すると,重大な損失につながる商品を取り扱う分野ほど,これから日本は注力すべきだろう。例えば,設計製造ノウハウが必要な民間航空機用エンジンはGE,P&Wおよびロールスロイス3社の寡占だ。設備を購入すれば製造できる電子部品,頭脳が必要な計算機科学とかは日本には不向きかもしれない。材料科学は大切だ。合衆国の調査によれば,エクセレントとランク付けされた日本の研究機関は東北大の金研と理研しかない。医学だと合衆国の NIH,フランスのパスツールがある。日本では,なぜ医学と計算機科学は西欧に追いつけないのだろうか。
スイスにチューリッヒ連邦工科大学がある。正式の大学ではない。私の在籍していた教授が盛んに,テーハーと呼んでいた。技術高等学校のドイツ語の略称だった。後に,ノーベル賞受賞者を輩出していると知った。学問には人口の多寡と予算が余り関係がない分野もあるようだ。学問が紳士の余技から始まった英国だと,ビンと缶があれば研究できるという考えがある。イギリス人は暇を持て余している。国会の議論の応酬も議員も国民も楽しんでいるお国柄だ。
規制が強化される一方の原発を維持するのも困難だろう。とにかく回せば,廃炉費用の足しにできるのだが。スイスのように廃炉は決定したけど,稼動は続ける意思決定をなぜ日本はできなかったのだろうか。菅首相の決定を覆せない空気があったのだろう。対米戦を決意した東條首相も空気を読んだのだろうか。それにしても,何故中部電力は浜岡原発に Mark-I を採用したのだろうか。ある意味,自業自得かもしれないが,普通の人にとり PWR と BWR の信頼性の違いは区別がつかないだろうから,関電とか北電は迷惑だ。そこの住民が不利益を被る。東電と東北電力をオミットできればいいが,東電の規模は関電の倍あるからそうもいかないのだろう。何につけ,既得権を優遇する制度は何とかならないのだろうか。
おそらく日本人は議論を避けて協議が好きなのだろう。和の精神が悲劇をもたらす事もある。平等の精神に反している憲法違反状態の国会が憲法違反と主張している。変な論理だ。会議と協議は違う。日本の至る所,会議と称して協議をしている。
経済規模の小さな北海道では,泊原発の不良資産で北電はじきJR北海道と同じ状況に追い込まれる可能性もあるのではないか。まあ,道民は国の支援を当たり前に思っているだろうけど。全国が国の支援補助をあてにしていたら,補助金漬けだったイタリアと同じか。電力会社に国税を注入しなければならないのか。日本は落ちぶれたというか,統制経済を好む日本では当たり前か。
参考
原発とコスト
スイスのミューレベルク原発、解体計画発表
日本の原発の安全水準
原子炉格納容器用鋼板の材質特性と溶接性
我が国最初の改良標準型原子炉格納容器の開発
PWR 原子力発電プラントの特徴―東京電力(株)福島第一原子力発電所事故の観点から
蒸気発生器伝熱管耐食性に関する研究
米国サザンカリフォルニアエジソン社、サンオノフレの蒸気発生器の欠陥について 三菱重工を相手に仲裁申立て
ジョージ・ワシントン
日本の原発は後だしの新規制により,既存の原発再稼動にメリットはなくなった。金子のいうように不良資産になっている。廃炉は4兆円とか10兆円という額を提示しているが,その根拠は示されていない。算出額が低いように感じられる。脱原発に踏み切ったスイスベルン州の廃炉費用は以下の通り(単位は億フラン)
解体 21
最終処分場 13
除染 8
計 42
邦貨に換算すると,5166 億円になる。欧州が脱原発に踏み切れるのは,安価な天然ガスとフランス東欧からの買電がある。日本は欧州の倍から3倍近い価格の LNG を燃やして電気を産み出している。そのため,毎年数兆円の国富を蕩尽している。原発を再稼動させて,廃炉費用を捻出させたらどうだろうか。
原発事故が起きた時の対策として,緊急時の道路(橋、トンネルも含む)を最優先しているレポートがある。日本の原発周辺は陸の孤島が多いから,納得だ。滋賀も湖西に住んでいると,避難は困難だ。新幹線とか高速道路にはカネをかけるけど,バイパスとか渋滞対策は二の次だ。多分,軍道の歴史がないせいだろう。江戸幕府は街道を整備したけど,馬車を通らせる事は全く考えなかった。車のなかったインカ文明とかに近かった。
今,中国経済の減速のためエネルギ価格が低下する一方だ。合衆国の石油業界は利益を上げられなくなってきている。高値で購入してくれる日本の電力業界はいいお得意さんだ。日本には LNG を売り,中国には原発技術を売るつもりだ。合衆国はしたたかだ。
日本は最終処分場を決められないから,原発立地場所が核廃棄物保管場になる。中国はどうするつもりなのだろうか。核実験場のある新疆か。利益を受けた者が負担するという原則に立てば,東京都内に東電の廃棄物保管所を設置しなければならないが,不可能に近いだろう。やはり,廃炉負担も含め先送りが順当だろう。2040 年の日本は原発の廃炉もままならなくなっているだろう。
世界初の商用原子力圧力容器の写真を見ながら,厚みはいかほどかと思った。内張りはステンレス,配管は SUS316L だ。格納容器の厚みは 38mm から 45mm になるそうだ。PWR だと設計温度は 132℃だそうだ。
フクシマ原発 Mark-I の格納容器内の圧力抑制室とのシールはゴム製だ。Mark-II はステンレス製ベローズに変更された。PWR には圧力抑制室がない。なぜ,東電が BWR を採用したのだろうか。PWR の弱点は蒸気発生器だ。蒸気発生器には熱交換のためのU字管が用いられる。管内は高圧水が流れ,管外は低温の水が接触して沸騰する。高温蒸気は活性が高く材料を腐食させるし,泡界面では衝撃波も発生する。NRC の調査によれば,三菱重工の蒸気発生器の自動設計プログラムに不備があったようだ。多額の賠償は免れないだろう。今後,三菱重工の蒸気発生器を新規採用する海外の電力会社があるのだろうか。アレバとかウェスティングハウス製 PWR が商戦に優位になるのかな。それとも,設計プログラムを修正して信頼性を回復できるかもしれない。PWR は米原潜と原子力空母に採用されて,炉の暴走事故もなくそれなりの信頼性があると思う。
トラブルが発生すると,重大な損失につながる商品を取り扱う分野ほど,これから日本は注力すべきだろう。例えば,設計製造ノウハウが必要な民間航空機用エンジンはGE,P&Wおよびロールスロイス3社の寡占だ。設備を購入すれば製造できる電子部品,頭脳が必要な計算機科学とかは日本には不向きかもしれない。材料科学は大切だ。合衆国の調査によれば,エクセレントとランク付けされた日本の研究機関は東北大の金研と理研しかない。医学だと合衆国の NIH,フランスのパスツールがある。日本では,なぜ医学と計算機科学は西欧に追いつけないのだろうか。
スイスにチューリッヒ連邦工科大学がある。正式の大学ではない。私の在籍していた教授が盛んに,テーハーと呼んでいた。技術高等学校のドイツ語の略称だった。後に,ノーベル賞受賞者を輩出していると知った。学問には人口の多寡と予算が余り関係がない分野もあるようだ。学問が紳士の余技から始まった英国だと,ビンと缶があれば研究できるという考えがある。イギリス人は暇を持て余している。国会の議論の応酬も議員も国民も楽しんでいるお国柄だ。
規制が強化される一方の原発を維持するのも困難だろう。とにかく回せば,廃炉費用の足しにできるのだが。スイスのように廃炉は決定したけど,稼動は続ける意思決定をなぜ日本はできなかったのだろうか。菅首相の決定を覆せない空気があったのだろう。対米戦を決意した東條首相も空気を読んだのだろうか。それにしても,何故中部電力は浜岡原発に Mark-I を採用したのだろうか。ある意味,自業自得かもしれないが,普通の人にとり PWR と BWR の信頼性の違いは区別がつかないだろうから,関電とか北電は迷惑だ。そこの住民が不利益を被る。東電と東北電力をオミットできればいいが,東電の規模は関電の倍あるからそうもいかないのだろう。何につけ,既得権を優遇する制度は何とかならないのだろうか。
おそらく日本人は議論を避けて協議が好きなのだろう。和の精神が悲劇をもたらす事もある。平等の精神に反している憲法違反状態の国会が憲法違反と主張している。変な論理だ。会議と協議は違う。日本の至る所,会議と称して協議をしている。
経済規模の小さな北海道では,泊原発の不良資産で北電はじきJR北海道と同じ状況に追い込まれる可能性もあるのではないか。まあ,道民は国の支援を当たり前に思っているだろうけど。全国が国の支援補助をあてにしていたら,補助金漬けだったイタリアと同じか。電力会社に国税を注入しなければならないのか。日本は落ちぶれたというか,統制経済を好む日本では当たり前か。
参考
原発とコスト
スイスのミューレベルク原発、解体計画発表
日本の原発の安全水準
原子炉格納容器用鋼板の材質特性と溶接性
我が国最初の改良標準型原子炉格納容器の開発
PWR 原子力発電プラントの特徴―東京電力(株)福島第一原子力発電所事故の観点から
蒸気発生器伝熱管耐食性に関する研究
米国サザンカリフォルニアエジソン社、サンオノフレの蒸気発生器の欠陥について 三菱重工を相手に仲裁申立て
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