2015/12/24

議場のブーツ

ドイツ連邦議会 Bundestag の様子を見ていたら,長靴を履いた女性が演説した。最初は国防大臣の派兵演説の様子を見るつもりだった。国防大臣の演説は力強い。画像のキャプションは Bundeswehreinsatz gegen die Terroorganisation IS とある。高校生らしき若者と外国人(通訳ヘッドホン?)が傍聴している。議場内に掲げられたドイツの国章である巨大な鷲を映し出してから,カメラを引いて長靴姿が登壇する。パンツを穿いているので,どうみても乗馬姿だ。さまになっている。演説を聴いている男性議員もネクタイをしていない方が多い。質問も答弁も女性だ。どちらも,メモだけで延々演説する。棒読みをする日中韓の政治家とは大違いだな。プロンプタはない。お洒落なマフラを首に巻いた議員もいる。日本ではマフラをして議長に注意された議員がいた。袴姿なら草履を履いて演説するのはOKなのだろう。

日本帝国議会では陸軍高級将校が長靴を穿いて演説した。長靴は陸軍将校と憲兵のステータスだった。実際の行軍,戦場では師団長であれ,全ての将兵は地下足袋であった。現ドイツ連邦軍兵士は戦前のような長靴を履かず,米軍スタイルの編み上げブーツに変わった。イラク戦争のとき,親日とされる海兵出身の元国防副長官に日本はブーツオングラウンドと言われて工兵を派兵した。日本の工兵は西欧の戦闘工兵と異なり,戦闘能力がないのにもかかわらず,派遣された陸自隊長は英豪軍の支援に駆けつけると言いのけた(集団的自衛権に相当)。訓練もしないのに,銃火器を持たせたら,戦闘行動を取れると考える国民はどうかしている。平和ボケだろう。現代の歩兵は無線を駆使して,数人がユニットになって複雑な攻撃防御行動を行う。そして工兵は全く重火器を操作できない。

連邦議会の演説を聴いていると,Deutchland と Kampf の言葉が聞き取れるけど,Reich がない。ドイツの極右である NPD の街頭演説を聴いても聞こえない。家人にその話をしたら,死語というか現在のドイツでは避けるようだ。ごく普通の言葉と思っていたが,国と訳すのは戦前日本の用法だった。現代日本では,右翼でも帝国とか皇国と呼称しないのと同じか。

ちなみに英国首相のキャメロンは Our Country と呼ぶ。Nation は使えない。英国本土にはアイルランド,スコットランド,ウェールズそしてイングランドの4つの Nations があるからだ。英国議会の視聴は面白い。野党党首がメンタルヘルスケアについて問いただすと,英首相は金を借りまくって(Borrowing の連呼)とか Printing Money とも言っている。Tax の言葉も多い。社会保障と財政そして課税は西側諸国の国会では永遠の議題だ。娘の Nacy の名前を出して議場の笑いをとっている。議場のブーイングが多い。BBC は意図的に議場の音声を拾う。その点,ドイツは静かだ。登壇者に水を給仕する担当者が燕尾服とは驚いた。帝国議会の名残だろうか。

首に布切れを巻きつけるのは,欧州のどこかで始まり,それがフランスに取り入れられ貴族の習慣になった。日本の南蛮屏風をみると,南蛮人の巨大化したマフラを見る事ができる。ネクタイがOKでマフラがNGの日本国会は微妙だな。国会の服装すら脱亜入欧ができない。日本の左翼は軍靴の音が聞こえると表現するが,実際の日本兵は地下足袋で無音だったし,先の女性連邦議員の所属は野党の左翼だ。ドイツの極右 NPD はナチス式敬礼をしないが,日本の高校球児はナチス式宣誓だ。ナチス式といっても元来はローマ帝国の習慣だった。日本のスポーツ界が古代ローマを踏襲するのも可笑しい気がするが,もう日本の慣習だろうか。

WBC の日米戦の開始前の国歌演奏のとき,合衆国選手は全員,野球帽を胸に手を当てている。日本人選手はバラバラだった。合衆国の幼稚園児は国旗と国歌を敬意を表する習慣として,先の動作をしつけられる。日本は君が代斉唱の際,起立するようになった。手をどうするかまでは余裕がないのであろう。自衛隊はどうしているのだろうか。私が子供の頃,自宅も含め祝日になると近所一帯が国旗を掲揚していたが,いつの間にか普通の民家は掲げなくなった。全国高校野球選手権には優勝旗がある。

学生運動が盛んな頃,街頭デモとかキャンパス内では何故か,旗が林立していた。機動隊の掲げる旗は小さかった気がする。米陸軍は行軍の際,小さな三角形の旗を先頭に歩く。私のこどもが通った学校には校旗がなかった。朝日新聞社は社用車に社旗を掲げなくなったようだが,腕章をいまだにしているとは驚いた。
Asahi.jpg

私も子供の頃,○○委員とかになると腕章をさせられいい思い出がなく,就職してからはストライキ期間中,労組の腕章をさせられて実に嫌な思い出がある。ナチスは腕章を多用した。強制収容所内でもカポに腕章をつけさせた。「権力」の象徴だろうと思う。今でも,機動隊員は付けて出動する。治安を司る機動隊員に現代版,憲兵の誇りを持たせる効果も期待しての事だろうか。元来は,赤十字の腕章のようにそんなメッセージはなかったのだが,独日中韓が変質させた。文革当時,ニュース映像をみると,紅衛兵の腕章がやたらと目に付いた。そういえば,ギャグ漫画「こち亀」の婦警達も腕章を付けていたと思い出した。腕章を検索していたら,英国女児達のナースエプロン姿のお人形さんごっこの写真が出て来た。当時は,英国もプロパガンダが盛んだったと思わせる写真だ。女児に担架で負傷者を運ばせる。。。赤十字の精神だけでなく,キリスト教とか十字軍の暗喩も感じられる。

参考
Bundestag: Debatte zum Bundeswehreinsatz gegen den IS am 02.12.2015
スポーツ大会の選手宣誓のポーズはベルリン五輪由来?
朝日新聞とTBSが取材に来ていた!
ナース【装備】
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