2016/04/10

3.11 と主給水制御弁の思い出

DOL のレポートを読むと,
簡単に言うと、原発には、大事故の際に大量の水を入れて燃料棒を強制的に冷やす「緊急炉心冷却装置(ECCS)」という強力な設備があり、まずそれを動かすことが世界のルールになっています。ところが、福島第一原発事故では、なぜか控えという位置付けで、ECCSの約10分の1の能力しかない「非常用復水器」(IC)と「原子炉隔離時冷却系装置」(RCIC)が動いた。しかも、津波の影響で全交流電源を失ってからは、今度は主力のECCSを動かすことができませんでした。この辺の事情は、本でも時系列で詳細に書いています。

とある。若い頃,APWR の主給水制御弁を空気圧で駆動する大容量制御弁を開発設計した事があった。試作した制御弁を顧客先での主給水弁との組み合わせ試験を実施すると,度肝をぬかれた。制御対象の主給水弁はヒトの背丈を倍ほどもある大きなものだ。自社内では固定容量タンクでの圧力制御しかしていなかったので,いろいろ課題点が噴出した。

とてつもない大きい給水弁なのでサイズイングの力も半端なじゃない。排気ポート径は確か 6mm で設計したと思うけど,サイズイングのせいで排気チョーク音が広大な実験所に鳴り響き,給水弁が遮断する時の巨大は音響は今でも耳に焼き付いている。ウェスチングハウスの PWR 緊急炉心冷却装置は2重系になっていて,三菱は4重系で設計していたように思う。応答が遅い空気圧駆動を捨てないのは電源断になっても蓄圧タンクのおかげで出力保持ができるからだ。発電所は停電が一番怖い。日立東芝の ABWR の制御棒制御は電気駆動に変った。さらに,フクシマ第一の Mark I は格納容器内と外部とのシールは耐熱性に劣るしかも劣化が速いゴム製だった。スイスは Mark I を住民投票により廃炉にする決定したけれども,廃炉にする費用を捻出するため運転継続を認めた。

日本は電力各社の原発があたかも東電と東北電力と同じように危ないとみなして,全て止めてしまった。例えば北米で殺傷の可能性ある自動車安全バッグはタカタ製が問題なのであって,他社製を合衆国政府は危険とみなさない。日本の原発も全てが東芝製のように安全裕度が毀損されているわけでもなかろう。現に東芝自体が BWR の将来を考えたのか, PWR のウェスチングハウスを買収したのではないか。東電の政治力は大きいというか,経産省の利権になっている。関電は東電の半分の売り上げしかない。経営体力のない北電とか九電が BWR ではなく PWR を採用したのはそれなりの理由があると考えていいのではないか。東電に追随した東北電力がアホなだけだ。なぜこの両者を政府が救済しなければならないのか。安価で良質の電力を地方電力会社が供給できれば,関東東北の製造業を誘致できるかもしれない。逆に,東電を助けるために原発を止めて全国の電力料金を押し上げているのが実態だろう。合衆国は大都市の電力料金は高く,データセンタは田舎州に設置されている。今のままだと,冷涼な北海道でも不利でデータセンタとサーバは北米に流出する一方だろう。

上記のレポートに「総務省と環境省が横の調整をしていないために現場は動けない」とあった。当然だろう。それに避難となると,防衛省と警察庁が絡むからさらに話はややこしくなる。警察庁は総務省とは別組織と考えた方がいいだろう。合衆国は州知事が非常事態を宣言すると軍を指揮する。法律上は知事の権限なのだが,何故か日本はそうならない。フクシマ知事の行動言動をみればわかる。法律では知事が率先するはずなのだがそうならない。これは沖縄戦における県知事の存在感でも納得できる。実際,いまでも県民は知事をリーダ(軍事指導者)とは思っていないだろう。知事自身もリーダとは思っていないのだろう。いざとなれば,各個人が避難の手はずを考えなければならない。

関電とか北電が東電東北電力を買収する事は永久にないのだろう。電力自由化は経産省と東電のまやかしだろう。3.11 震災の際,避難民が寒さで震えている時,陸自が燃料の野積み(デポ)をしようとしたら,消防庁が法令違反で待ったを掛けた。日本は不幸せな国家だと思う。非常事態を想定しなくて済むいい社会と思うべきか。

国民も自由競争が嫌いで,江戸幕府のような統治と経済社会が居心地がいいのだろう。江戸期同様,人口と経済が停滞するはずだ。電力とかエネルギは経済の根幹に関わる。ここが統制経済だと中国と同じだ。中国の電力利権は李鵬一族が握っている。今,話題のパナマペーパを曝露したサイトに一族のオフショアが描かれている。日本の場合,構造汚職と言った。これはもう死語かな。やはり利権といった方がいいだろうか。昔の官僚は満州に巨大利権があったけど,今は国内だけになってしまった。マイナス成長だと,利権はシボムから,いろいろ考えているのだろう。ところでムネオハウスに代表される外務省の ODA 利権はどうなったのだろう。

沖縄と北海道は口を開けていれば,予算が降りてくる。大阪も交付団体になった。日本中が沖縄北海道化するのだろう。国債の金利はいつか上がりだす。いつかは誰にもわからないとするが,欧米のファンドは冷徹に見定めているのではなかろうか。多分,やじろうべいのような均衡状態なのだろう。復原力が利かなくなるクリティカルポイントがある。

フクシマ原発のメルトダウンは悪条件が重なって起きた。能天気な予算執行をみると,戦前のそれいけドンドンと大した変わりがない。明治政府は藩庁予算をカットして不平士族の反乱を招いたが,強行して官営八幡製鉄所とか北海道開拓とかの新事業に巨額投資をした。ほとんどの政府投資は失敗した。やがて政府は帝国主義を模倣し海外出兵を重ねるようになった。シベリア出兵の頃から損得を考えず,派兵するようになった。

日本の官僚が東アジアの官僚のようになったのは,100年ほど前だ。その前は奈良平安初期しかない。国家財政が破綻して地方に分配できる交付金も尽きれば,分国制度が復活するかもしれない。その頃,北海道と沖縄はどうしているだろうか。北海道の人口は 500万人を超える。沖縄くらいなら何とかなるかもしれないが,北海道への交付金負担は大きい。北海道は旧東独のようになぜ自立できないのだろうか。樺太からガスパイプラインを引き込めば,優位になれるのに不思議だ。北洋の漁業権が障害だろうけど,それほど巨額とは思えないのだが,これも既得権がらみの利権か。

横一列に並ぶか,縦に並ぶか。日本は連合が苦手なのだろうか。その反面,United Nations と United States がお好きのようだ。横一列も縦一列も,ともに民主主義とはなじまない概念だろう。関西広域連合も上手く回らないな。

参考
なぜ津波到達までに緊急炉心冷却装置は起動されなかったのか(上)
なぜ津波到達までに緊急炉心冷却装置は起動されなかったのか(下)
BWRの構造的欠陥
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