増税と成長するには
今回の参院選では増税賛成の党が主要政党のなかでは一つもない。
人々は不安を解消してくれるなら,20年先の危機は目をつむる。古代ギリシャでは官僚制を整備したペルシャ帝国の侵略に立ち向かうためにデロス同盟を結成し,アテナイを盟主とし,軍資金をアテナイに預けた。ペルシャ戦役後,アテナイはその基金を元に壮大なパルテノン神殿とか港から市内まで長城(壁)を築いた。ペルシャを撃退すると民主制は栄え市民は余暇(アレテー)を楽しむようになった。哲学(愛知学)も栄えた。しかし,ギリシャ内での覇権争いが起きると,アテナイの繁栄はつかの間だった。
我々が知っているアテナイの民主制絶頂期は3世代も続かなかった。歴史から学べるとしたら,民主制の繁栄は短期間に終焉となる事だ。英米における国を二分するような政争論争が激しくなってきているようにみえるのは明らかではなかろうか。米英が国内の政争が激しくなれば,国際問題への関心は薄れる一方だろう。
東大は大学ランキングがアジア1位から一気に7位に後退した。一人当たり GDP がシンガポールに抜かれたのは 2008 年だった。日本は政治を二分する論争もなく,静かに衰退していくのかもしれない。戦争とかの突然死よりは自然死の方がましかなと思う。参院選挙は投票すべき党も地元の候補者も見当たらないので棄権するつもりだ。
ちなみにアテナイは人口過多を黒海沿岸エジプトの小麦でまかない,海洋交易で栄えた。そして本土には銀山があった。富は永続するようで災危に遭ったりすると,簡単に底が尽く。一部の識者が国家が赤字でも国民資産があるから大丈夫だという。本当だろうか。国家がいい加減なら,個人が知恵を絞る必要があるのではないだろうか。
IMF と政府との折衝で消費税は年率1ないし1.5%上げないと,国家財政が立ち行かなくなると IMF は勧告している。別に世界政府があるわけでもないので,どの国も無視するのだけれども国家破綻の経緯は統計がしっかりしていれば,マクロ経済が当てはまる。これは資本主義が芽生えたルネサンス期のイタリア諸都市の経済史にも当てはまるそうだ。お金のもつ普遍性だろう。
政治は変らなくとも,経済はどんどん変っていく。はたして首都圏の住宅規制の容積率アップと相続税の減税で日本経済が上向くのだろうか。しかし実際は東京の自動車普及度は全国の半分しかない。江戸同様,庶民は貧しいのだ。日本の富裕層の大半は東京在住だろうけど,野口の言うように勤労者の実質賃金低下の影響の方が大きいのではないのか。
所得税を上げられないとしたら,やはり消費税を上げるしかないだろう。国民がサラ金地獄を選択するのも戦前の大陸進出同様,避けられないのだろう。
経済史とか経済理論が当てはまらないのは閉ざされた空間だ。アステカとかインカ文明だ。両者はまともな文字も車も馬も知らなかった。しかし官僚制(神官)はあった。貨幣経済もなかった。中国は古来,馬耕が盛んな馬社会だった。日本より速やかに車社会移行するだろうし,その車を輸出するようになる。朝鮮戦争では人民解放軍 PLA はロバを補給に多用した。太平洋戦争では南方では日本軍は人力で補給しようとした。その悲劇がニューギニアとフィリッピンだ。日本は確か 1925 年に普通選挙を導入している。日本は民主制なのに危機対処を誤るのは何故か。議論 Debate と多様性を好まないからだろう。何につけて政治的には二項対立がある英米の政治が羨ましいけど,国民性からみると2大政党制は適わない夢か。翼賛体制が合っているのか。
日本の輜重兵は日本兵に欠かせない米を背負って,山岳を踏破した。軍参謀は官僚だから,補給しろと命令するだけだった。内地からの輸送船は米潜により沈められ,揚陸できたとしても内陸へ運ぶ手立てがまた杜撰だった。中国とかローマ軍は牛馬道路を建設しながら進軍した。現代のロシア軍もそうだ。30年かけて鉄道道路を建設するような国家に未来はないような気がする。リニア新幹線ができるころは日本経済は行き絶え絶えの可能性が大だ。人口が半減するのに何と馬鹿げた計画だ。
これと似たような事が太平洋の孤島イースータ島で起きた。人々は人口過多と食料生産減少による不安と対立を鎮めるためにひたすらモアイを建設し続けた。ある臨界点を超えるとプッツリその伝統が途絶えた。日本の場合,不安を鎮めるのは天皇と公共事業しかない。遷都,遷宮は意味があるのだ。そろそろ遷都を意識し始めている。
インカ帝国は馬を知らなかったので,皇帝の命令を伝令が山岳を駆けた。江戸の文書輸送も馬ではなく飛脚だった。歴史に進化はないだろうけど,過去に遡ればいつ頃だろうか。天皇が騎乗しなくなった期日を確定すればいい。天皇がまた騎乗するのは大正天皇後だろうけど,付け焼刃であった。
日本人はヒトの移動には関心が高いが,物流に対して関心を示さない。馬社会を経験しなかったせいだろうか。古代ギリシャは意外と馬車が愛好されていた。古代オリンピックの最も人気のあった競技は競馬(戦車)競争だった。東アジアのなかで,馬車を常用しなかったのは朝鮮と日本だ。中国皇帝の移動は馬車であったが,日本の天皇は人力による輿であった。欧米に追いつけそうで追いつけないのはこんなところに遠因があるのかもしれない。
参考
- 関連記事
-
- 皇室王室の乗物と公用車
- 増税と成長するには
- 住友の農業投資と共和党アンケートとアジア成長率
コメント