2016/10/26

過労死と深夜執務禁止

電通の社員が過労死して,電通は22時以降の照灯を禁止した。以前,欧州には過労死はないと書いた。労働者は奴隷ではないので,死ぬ前に会社を辞めるのがごく普通である。日本ではそうならない。自立していないからである。精神的に束縛状態にあったのであろう。

京都には世界的に著名な企業がいくつかあるけど,ブラック企業が目に付く。大抵は過労死に至る前に退社する。9時から17時まで働いては,世界の競争には勝てない。中国とか合衆国の大企業はその点,まともで人海戦術だ。実験研究の仕事総量を計算してから,設備人員を手配する。日本でも有名なエジソンにしても,研究助手(スタッフ)を大量に抱えていたと思う。日本でもそれに近いのが製薬の研究開発だ。研究開発費の総額(過半は人件費)が利益に見合わないと判断されたら,開発を中断する。シーズ(知的所有権)はベンチャから買う。ベンチャは資本と製薬に関するノウハウがないから,どんな素晴らしいシーズがあっても薬は到底できない。

日本軍は兵を酷使したが,死に至るまでの訓練とか全滅作戦(師団は1/3を損失すると壊滅とみなされる)はやらなかった。それがノモンハン事変からおかしくなった。その究極が特攻だった。兵舎へ押し込み,洗脳により滅私奉公を遂行させた。個人を精神的に追い込み,極限まで忍従奉仕させる形態は,戦後の会社,体育界に広がった。私も,小学校から高校まで先生に服従する教育訓練を受けてきた。自分の頭で考えられるようになったのは大学に入ってからだった。ちなみに小泉純一郎は特攻精神を称揚している。特攻と靖国参拝は表裏の関係にある。

大前研一がサムスンの研究所を見学して,研究員を評して奴隷のようだと述べている。Wikipedia によると,
2012年度WHOによる世界の人口10万人あたり自殺者率の報告によると、上位10か国は、ガイアナ(44.2)、北朝鮮(38.5)、韓国(28.9)、スリランカ(28.8)、リトアニア(28.2)スリナム(27.8)、モザンビーク(27.4)、ネパール(24.9)、タンザニア(24.9)、カザフスタン(23.8)であり、日本は(18.5)
やはり,北朝鮮韓国は異常に高い自殺率だ。韓国は OECD 加盟の先進国だが,日本以上に自殺率が高い。別のデータによると,韓国,中国および日本の自殺率ランキングは3,9および12位だ。3箇国とも東アジアにあり,祖先崇拝,忠孝を重んじる儒教国家である。韓国のキリスト教は統一教会をみればわかるように,異端に近いというか,異端だろう。

日本の明治維新は儒教封建精神の土台に,西欧の国家制度を接木した。その結果が日本の神風精神だった。中国の自殺率は市場経済(資本主義)化が進むほど,日本韓国のように増えるだろうか。それとも濃厚な家族関係,宗族を想うとそうでもないかなとも思う。しかし家人の話だと合衆国の悪意のあるアニメをみると,アップル製品の中国工場は自殺防止のスーサイドネットが張られている想定になっているそうだ。実際,家族から切り離されてた若い出稼ぎ労働者が飛び降りするらしい。私の住んでいた独身寮でも屋上から飛び降りた新卒男子がいた。学生の頃,日立の自殺が噂になっていて就職を希望するのが私の専攻科では長らく皆無になっていた。その後,半導体の研究者と知り合いになり,どうもその話は半導体に関する限りどうも本当のようだった。日立は半導体をルネサスとして分離した。労働集約で研究の丸投げが困難な半導体事業は日立の体質に合わなかったのだろう。私も半導体研究を半年やらされたけど,それは体力的にきつかった。疲労困憊の先輩は拡散炉の脇で横臥するほどだった。ちなみに社則で横臥と飲酒は禁止されていた。こんな労働に耐えられるのは朝鮮人と日本人くらいだろう。先輩に日曜の自主出勤を求められたが,断った。私はいい助手になれなかった。

日本は農耕社会のせいか,とにかく手間をかければ収量はあがると考えがちだ。実際,私が仕えた上司の多くは部下を管理(コントーロル)していなかった。上司はクリーンルーム作業をした事がなくても,研究を管理できると勘違いしていた。飛行機を操縦できない日本海軍空母の艦長と同じ構図だ。野球をした経験のない野球部監督と同じだが,それをおかしいと思わないのが日本型組織だ。牧畜社会だと,手間暇かけたからといって,家畜が多く産むわけでもない。計画的に群れをコントロールする。それが経営の始まりだ。

太平洋戦争中フィリッピン戦線では日本の輸送船が米潜に攻撃され軍馬を揚陸できなかった砲兵は,参謀から人力牽引を命じられた。疲労困憊して目的地に着いたものの,米軍の攻勢の前に敗走(逆走)が常だった。揚陸地点の確保,物資の確保は2の次だった。兵士をすり潰すのは参謀と師団の徴兵出身地が何の関係もないせいもあった。実現不可能な命令を平気で出す文化は,郷土愛から切り離された昭和参謀本部からだろう。

電通では社員にアシスタントはいなかったのだろうか。三菱重工とかトヨタだとアシスタントがおり,設計とか実験の実務をこなす。私のいた職場では予算がなくそんな文化もなかったので,アシスタントがいなかったけれど,中研では研究員の間でアシスタントの取り合いになっていた。商社だと,各自の給与一部をプールして会社がアシスタントを雇うそうだ。商社員がもういらないと言えば,解雇となる。これは欧米風だと思う。日本商社は意外と西欧的経営だ。そうじゃないと,個に頼っていたんでは競争に勝てないのだろう。

日米開戦直後,仕事量が増えた米陸海軍省庁舎の照明は深夜まで消えなかったのに,帰国した駐在武官は日本海軍省の照明が消えるの見て驚いている。軍官僚の任期は2年だから,3年先の軍備計画とか半年先の実務はしなかったのかとも思う。多忙なのは予算編成期だけだろうか。日本海軍は戦争中でも,平時と同じように人事を行っていた。役人が戦争を計画立案していた。その役人が組織的特攻を計画し実行するのだから,役人組織は恐ろしい。特攻の建前は自発的行為とされる。何となく過労死と似ていないか。

過労した電通社員の SNS がアップされているそうだ。これから,日本の会社とか組織は社員の SNS を監視しなければならない。ITシステムのメンテナンスと合わせて,社員の SNS 監視も必要だろう。そんな監視業務を請け負うビジネスもいいかなと思う。組織の恥部を曝す行為は職務規定に反するだろう。かの電通社員は解雇通知を待ち望んでアップしていたのだろうか。IBM なら監視されていて,即解雇だっただろうに。そうすれば過労死ではなくなる筈だ。

電通は他社との競争が酷くなかったから,酷い労務管理だったのかもしれない。ある意味日本軍を連想させた。日本陸軍は弱い中国軍を相手に劣化していった。無理な作戦,無理な運用が当たり前になっていった。その破局がガダルカナル,ニューギニアそしてインパールだった。

合衆国はシンクタンクを中心とした民間機関が戦争計画を立て,その諮問委員会は大統領直属である。委員長も民間人である。日本の戦争計画は防衛省の役人が立案する。今の戦備とかをみると,真剣に中国軍と向き合っているとも思えない。日中の武力衝突で戦死者がたくさんでるのは海自だろう。どこの国家であれ,戦争計画に基づいて防衛力を整備する。日本は未来永劫,役人国家なのだろうか。そういえば,江戸期の庄屋は村役人となっていた。身分制が残っているというか,主人と奴隷の関係ではない身分の違いが過労死を生む素地かな。差別意識が当たり前だから,部下の酷使も道義的に気にならない。部下は組織(上長)に滅私奉公しなければならない。

聖書は他人を虐げてはならないとある。ドグマだらけの経典の宗教だが,この点は中国インド等の宗教にはない特質だ。人権思想はキリスト教から生まれたと言っていいだろう。東條らは人道に対する罪で断罪された。過労死と小泉の靖国称賛からは何も日本人は変わっていないと見るべきだろう。現首相の言うように「美しい日本」かもしれないが,そこに住む日本人およびその社会は私個人も含めて恐ろしい。私は家人の友人から切ったら緑色の液体が出で来きそうと言われていた。思うにその友人には,私を Human とは見えなかったのだろうか。

合衆国は特攻を人権侵害とは思わなかったし,在日合衆国大使館の日本の人権侵害状況告知を見る限り,今の合衆国政府は過労死をそうとはみなさないようだ。過労死と特攻を西欧人に説明するのは至難だ。韓国にも過労死があると知った。自動車とか液晶などの半導体部品産業の労働力は北朝鮮が最適だろう。北朝鮮の良質労働力を何処が握るだろうか。

聖書によれば,過酷な使役に耐えかねたユダヤ族はエクソダスとなったそうだ。西欧とりわけ合衆国はエミグレの精神が残っている。東アジア儒教的価値観の日韓はその対極だな。中華には日韓にない「革命」思想がある。私のブログ内を「過労死」と検索したら,12件もあった。悟りには程遠いな。賢人になれそうもない。

福岡の国政選挙で世襲候補が当選した。儒教を範とした封建遺制はいつまで続くのだろうか。お隣の韓国は世襲政治ではないそうだ。日中が世襲制を維持し続けるのは面白い。世襲と民主主義は両立できるけれども,世襲は封建制である。封建制とは血筋により特権を享受する制度だ。我々のようなノマドな子息には外国語を習得させ,エミグレを考えるべきか。家人の知人が子供を連れオーストラリアに移住したけど,「日本人は年間約600人。全体の約0.6%」に過ぎないそうだ。競合する移民は同胞者ではなく中国人となりそうだ。これもまた厳しい競争だ。

農地所有を禁じられていた東欧系ユダヤ人(アシュケナジム)は,ポーランド王の農奴ユダヤ解放にともない農民になった。しかし,ホロコーストは止まず結局,ガリチアのユダヤ人は大挙してパレスチナに移住して,アラブ系パレスチナ人の農地を奪った。フランドルおよびイングランドのピューリタンも北米に集団移住(エミグレ)した。肥沃な農地は先住民族から奪った。エミグレするにもやはり,指導者が必要だ。オーストラリアの農地取得はカナダと比較すると厳しい。季節が日本と逆な豪州での和風作物の栽培ビジネスは土地取得がネックか。中国が国策の一環として外国の農地を買い漁るのも何となくわかるようになった。

日本人が所有していた朝鮮台湾の農地は日本と同じように小作農に配分されたのだろうか。ちなみに英語が公用語なのに近代化が進まないフィリッピンは大地主による小作制のせいという説がある。中国の農地は国家に帰属し,農民は耕作権だけである。これは封建制度そのものである。支配層は士大夫と呼称され地主が貴族官僚となった。建前として地主はいなくなったので,中国には国家農奴ばかりがいるのか。古代の均田制と似たようなものか。ちなみに中国の「田」は田んぼではなく農地である。

家人から「スタンフォード監獄実験」を知った。キリスト教は隣人愛を説くが,アメリカ人が最も怖いのも隣人らしい。銃規制が進まないのはこのためだろう。イングランド王がまた攻めてくるかもしれない,日本が,ロシアが,中国がというのは建前だろう。

参考
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