2016/12/22

チューリッヒ移転と職種給与

タケダが和光純薬を富士フィルムに売却する。資金が豊富と言われてたのに意外だ。数年前大阪の研究部門を閉鎖して湘南とつくばに集約したとき,関西の地盤沈下を感じていたが,これからの研究拠点は日本,チューリッヒとボストンだそうだ。

何故そうなるか。ある研究者によると,日本人の創薬研究者は最先端の研究機器を使いこなせないそうだ。機器を操作したり,新機軸の実験系を提案するのは苦手だそうだ。私も高校時代,化学物理とも何の実験もせずに履修した。そんな高校教育と関係があるような気がする。どれだけ観察能力があるかだろう。熟慮して実験系を構築し,考え判断しながら注意深く実験をする。チューリッヒとボストンだと手も頭も両方働かせられるドクターがゴロゴロいるのだろうと思う。日本の湘南研究所は名前だけになる可能性もある。

実験に習熟していないと,当然ながら実験計画が立てられない。日本の官製国家プロジェクト(核燃料再処理プラント,人工知能)が失敗する原因はここにあるのかもしれない。大脳の事務処理能力とはほとんど関係がない。

四半世紀前に,東芝が英国と合衆国に数学等の基礎研究所を創設したのを思い出す。つい最近,Google の英国研究部門が囲碁の世界トッププロを破るAIの研究成果を披露した。創薬研究にもAIが使われるご時世だ。つくばも寂びれる一方なのかな。横浜にはかつて Kodak の研究所があったけど,本体そのものがなくなった。武田の湘南研究所もそんな感じなのかな。日本人レベルの研究者だと,グローバル展開ではマッチしないのだろうか。というか,チューリッヒとボストンが最も効率的なだけのような気もする。日本は効率が悪い。日本農業みてもそんな感じがする。日本人の体にしみ込んでいるのだろう。

何か嫌な予感がする。結局のところ,西欧に追いつけなくて中韓と同じ土俵で競争する羽目になる。何か間違えたのだろう。日本の大学の世界ランキングは下がる一方だ。予算ばかりの問題ではないと思う。みなつながっている気がする。日教組教条主義教育と文部省の画一教育が何がしかの影響を与えているのではないか。

せめて英語教育くらいまともにしたらどうか。といっても英語の話せない中高英語教師を解雇できないので,先生を入れ換えるのに 30年要する。教師の採用を決定するのは教育委員会だが,世襲化縁故採用である。見通しがくらい。既得権が大きくなり過ぎたのだろうか。給与を合衆国並みに下げてみても,当たり前になるとも思えない。教条主義画一教育は変わらないだろう。絶望的だ。

日本社会自体が最新創造的ビジネスにマッチしなくなった。例えばスイスは人口が少ないけれど,創薬関連とか優れた機器を産み出す。しかもその企業規模は驚くほど,小さい。個人の能力の違いと言えば,それまでだが。そんな深夜まで開発に勤しんでいる感じは全くない。ただ,スイスの料理は酷く不味い。スイスほど吝嗇ではなく,イタリアは美食でそんな勤勉でもないが,暮らしぶりは日本よりいい。つまり日本より効率的な経済システムだ。

つくばは酒場がないので研究に適さない説がある。日本人はスイス人のようにはなれないのだろう。スイス人は安息日に何をしているのだろうか。美食もせす,大酒も飲まない。基本的に何もしないのか。まさに安息日だ。仕事は Mission 天職なのだろう。安息日のために効率的に仕事するのか。。。昔のスイスは日曜日に町へ出かけても閉店だったのを思い出す。各州により,祭日が異なる。まさに連邦なのね。考えてみれば,祭日を国家が定めるのもおかしな話だ。

頭脳の機能は全人類同じだから,効率性(労働生産性)の日本と西欧の違いは風土歴史,言語,社会構造の違いだろうか。サッカーの本田が言うように,「個の力」が影響しているのだろう。過度の協調性というか同調性が良くないのかもしれない。

スイスは小国だけれども,26もの州があり,それぞれ祭日が違う。こんなところに独創性の秘密が隠されているような気がする。チューリッヒは世界有数の高物価都市だ。

面白いデータがあった。日米の職種による給与違いを比較すると,予想通りだった。

     合衆国              日本
新聞記者:3万6,360ドル          824万円
コンピュータープログラマー:7万9,530ドル 男性419万円、女性361万円

職業観の違い,文化の違いをまざまざと見せつけられた。かつて深夜番組激生で司会者が日本人の自称ベンチャキャピタリストに,なぜ日本に Microsoft,Google のような会社が生まれないのか問いただしたけれど,しどろもどろになっていた。日本は西欧に引き離される一方だ。知識産業におけるイノベーションの差かなと思っていたけれど,知識革命が日本にでも起こらない限り,ダメだな。つまり既存の経済構造の破壊が必要だ。しかしその可能性は皆無だ。明治維新は尊王攘夷を換骨奪胎した下級武士と豪農が推進したけど,現代日本には変革を担うような階層がない。

かつてのイングランドのピューリタン,フランスのユグノーのように子供に実用教育を施してエミグレを目指すべきだろうか。その流れは今でも続いている。その担い手はロシア,中国そしてインドになっている。家人によれば,在米有名大学卒でも中国人だと就労ビザの取得は困難になっているそうだ。グローバリズムの時代は終わったんだろう。信教の自由を求めて大西洋を渡った西欧のプロテスタントは家族単位で移民した。彼らは農民あるいは商工業者でスキルがあった。後に続いたアイルランドとかイタリアの移民はスキルがなく,単身の出稼ぎが多かったようだ。

武田の選択はどうだったか。ドイツの大手製薬が合衆国の企業に変貌したように,合衆国企業に変わらないとメガファーマとして生き残れないような気もする。武田の医療用医薬品売上収益は国内が対前年比 -3.3% だったのに対し,合衆国は +25.4% だった。合衆国の収益が国内を上回るのは時間の問題だ。パナソニックがヘルスケア部門を売却したのは正解だったか。東芝もメディカルをキャノンに売却したし,診断装置とか薬品は国内市場だけでは開発コストを回収できないのかと思う。TPP がなくなったから,製薬会社,医療機器会社はさらに国内から合衆国へ移転することになりそうだ。オリンパスとキャノンの医療部門はどうなるのだろう。


国内産業はスカスカになりそうだ。今の株高は先行き長期見通しを考えたら官製バブルかもしれない。国有企業の多い欧州市場は公的機関の保有率は 6% に対して,日本は 7% になった。政府支援の結果,国家が企業の大株主になる。これって国家社会主義,今の中国のようになるわけだ。確かに両国とも官僚国家だ。合衆国とは疎遠になる一方か。でもどちらも独裁国家だった独ソは壮絶な戦争を続けたから,官僚国家同士だから友好的とは限らない。中国もデフレになれば,日中間で東南アジア市場を巡り争いが起きる可能性もある。


参考
関連記事

コメント

非公開コメント