指導者不在の先制攻撃論
マスコミが北朝鮮のミサイル危機を煽り,先制攻撃論が出てきた。まず,PAC3 は射程内に落下してきても殆ど当たらない。湾岸戦争時,イラクはアラブの大義を前面に出すべくイスラエルを挑発してスカッドミサイルを打ち込んだ。弾道ミサイルは高速で飛来するため,従来の航空機では迎撃できない。時のラムズフェルド国防長官は命中率は10%台と口を滑らした。
時速 60km の車が自分に向かって走って突進して来るときに,はじめて人は車への体当たりが可能になる。少し車の突進方向がずれると,人間の脚では追いつくのは不可能である。旧式のスカッドでもそれなりの速度である。ドイツがロンドンめがけて打ち出したV2号ロケットの迎撃を英空軍は諦め,ランチャーおよび工場設備の破壊を目標にした。工場はスパイ活動により,それなりに把握していた。ドイツは製造を秘匿するため,地下工場に強制徴用したユダヤ人などに製造させていた。北朝鮮も地上で組み立て製造しているとは思えない。ドイツは終戦直前になっても防空戦闘機の地下工場生産台数はさほど低下しなかったが,日本の戦闘機工場は中島,三菱,川崎,川西ら全て米海軍艦載機の空襲により壊滅した。なにか変な日本の総動員体制であった。何を何から守るのか明確に意識していなかった証左であろう。これは今も変わらないのではないか。データセンタも地上だろう。
防衛省は北朝鮮の弾道ミサイル製造能力を把握していると思う。まずは諜報機関を整備し,秘匿情報の収集だろう。イスラエルは何故,イラクの挑発に激発しなかったか。それなりの情報を知っていたのだろうと思う。
日本が北朝鮮のミサイル基地を叩いたとしても,中国ロシアの反発の除けば,さして国際批判は起きないだろう。H2ロケットに 20t を超える弾薬を搭載できる。しかし,問題なのは韓国だ。極度に反日が悪化すると,同胞への許しがたい攻撃とみなし,韓国は報復として潜水艦発射型の巡航ミサイルを保有しているので攻撃するかもしれない。韓国なら平気で合衆国とのリンク装置を解除するだろう。北朝鮮先制攻撃は日本にとり,最悪の悪夢である朝鮮半島統一が出来する可能性がある。それは避けたい。
現状では,韓国が対馬に侵攻しても日本に防ぐ有効な手立てがない。高価な海自のイージスはクソにも役に立たない。あれは米空母を守るために存在するからだ。そして対馬上空の制空権はとれそうもない。長大な日本海沿岸は特殊部隊の特攻を受けてもがら空きである。戦後,小沢治三郎は魚雷艇を整備しておくべきだったと述懐している。PAC3 もいいけど,「いずも」とか何かずれている。何を何から守るのか考えているのだろうか。素人からみても変だ。戦前の世論が海軍軍縮離脱を歓迎したのと相通ずるものを感じる。
現状の反日国を考えてみよう。リトマス試験紙は従軍慰安婦像である。最大の反日は韓国と北朝鮮,中国もそれに準ずる。合衆国ドイツも反日だ。これら全てを敵に回すのは愚である。これら国々が嫌がる国と友誼を深めるのが外交だ。日本の場合,ロシアが浮上する。結果的に安倍外交は王道を進んでいる。文春によれば,にわかに信じ難いが日本の外務次官が合衆国でロシア外務省高官と会って日本の譲歩はないと通告したそうな。現在,日露外交を主導しているのは外務省ではなく経産省のようだ。日本外務省はいつから合衆国と中国のポチになったのだろう。
戦前の対中,対米外交の失敗を鑑みれば外務省のポチ政策は妥当な判断ともみなせるかもしれない。しかし,外交にタダはない。日本が取引できる案件といえば経済取引しかない。米中相手にどこまで経済譲歩できるか。それでも,両国に譲歩してその代償に北朝鮮と韓国の暴発と統一を阻止できれば良いではないか。そして,巡航ミサイルを保有する韓国は弾道ミサイル技術をロシアから導入してじき日本全土が韓国ミサイルの脅威にもさらされる。これはもうお手上げだ。
家人が韓国映画をレンタルしてきた。韓国と北朝鮮の女美人スパイが日本で暗躍し対立する。両陣営の諜報機関トップが互いに祖国を裏切り,相手の最高トップに通じている。祖国統一のためだ。北に通じている韓国大統領を抹殺しようとする勢力から,互いの女美人スパイは協力してその企みを阻止する。その勢力とは親日勢力を意味するらしく,黒幕は日本内閣情報部である。ばかばかしいプロットだが,心底笑えない。
北朝鮮の弾道ロケットに恐怖を煽るマスコミと戦間期の戦艦長門陸奥に対する過剰なまでの期待というか信仰が妙に交錯する。国民をリードして何をしたいのか。単なる憲法改正のためでもないような気がする。ワッショイの祭り状態になれば,何かと都合がいいのだろう。誰が主導しているのでもなく,「空気」が動いていく。戦前の米中同時戦争やがて特攻,しまいには本土決戦を目指した。
戦前の大きな間違いは米軍の侵攻を前提とした国防計画を立案しなかった事にある。だから仏印の油田を確保しても,輸送が途絶える発想はなかった。日本海軍は海上護衛の不備を指摘した海軍大臣を神経衰弱として,辞めさせた。日本は危機に際して,まともな指導者が擁立されず,この事例のように引きずり下ろす事さえする。
フクシマ危機の際,不眠不休で頑張っている現場で,応接の差が出た。フクシマ第二は本社購買を通さず,直接電力ケーブルを入手し重機で牽引布設し,高圧交流電源を確保した。これら作業は全て下請け業者である。東電社員にそんなスキルはない。ちなみに,そんなケーブルは電材屋にいっても売っていない,数人がかりでも取り廻せない代物だ。
安易な先制攻撃によるのではなく,相手が手を出したらあっと驚くような策を考えておくべきだろう。かつて,日本が米英と開戦する直前,両国は大西洋憲章を発表した。
米英が世界戦争を戦うために戦争の理念を強調し無条件降伏要求を掲げたことに、自存自衛のために地域戦争を戦っていた日本は、やや鈍感であったと言うべきなのかもしれない。
北朝鮮問題を打開するには,前韓国大統領のように新大統領にも「告げ口」外交をしてもらい,とにかく世界に認知してもらい,合衆国がこの問題に足抜きをできないようにするのが長い目でみると効果的だろうと思う。
合衆国のポップカルチャで描かれる仮想ミッドウェー海戦ではドイツの提督が日本空母に座乗指揮,ゼロ戦ではなくメッサーシュミットジェット戦闘機が赤城から発艦して米海軍をぼろ敗けさせるゲームがおたくの間でちょっとした話題になっているそうだ。東芝,シャープそれから菅元首相を連想した。戦史を眺めると,日本の提督はイタリアの提督にも見劣りする。それはなぜか,視野狭窄と官僚臭さが鼻につくからだ。韓国とか中国の提督はどうなのだろうか。案外,日本と似ているかもしれない。
日本の取った戦略的誤りについて,合衆国の歴史学者が,
ウッドは、日本が第1段作戦終了後、ほぼ絶対国防圏の線で戦略的守勢をとり、アメリカとの消耗戦に陥らずに持久を図り、1946 年まで持ちこたえることができれば、米ソ間の対立が深刻となってアメリカも対日妥協に傾き、無条件降伏ではない、より有利な講和をかちとることができただろう、と論じている。もちろん、この可能性が実現するためには、いくつかの条件が満たされなければならない、とウッドはいう。例えば、日本は早期に海上護衛戦の重要性を理解して護送船団のシステムを採用し、兵員や武器を南方戦場に安全に送り込むだけでなく、南方の資源を日本に還流させて軍需生産能力を長期に維持しなければならない。敵の海上輸送に対して潜水艦による攻撃を反覆し、その反攻を遅らせなければならない。戦略的守勢のための国防圏を構築し防衛拠点を強化して、基地航空戦力を効果的に運用しなければならない。海軍力と海上航空戦力の消耗を避けて温存を図り、アメリカ艦隊が日本の国防圏内に入ってきたときに大打撃を与える。航空機による特攻を早期に採用し、これを大規模かつ統合的に実施して、敵の上陸作戦に大きなダメージを与え、失敗に追い込む。陸軍を中部太平洋に重点的に配備し戦略的拠点を強化して、アメリカの反攻スケジュールを遅らせ、日本本土への戦略爆撃も遅らせる。
戦争をしらない我々には,そうなんだと思わせるが,子供の頃,一介の水兵にすぎなかった父もこんな事を言っていたと思い出した。日本の駆逐艦は清水が不足して,重油ボイラーを焚いて水を確保していたと聞かされ,少年雑誌の記事とのあまりの違いに父の話はウソだろうと,当時思っていた。日本の生命線は東シナ海の門司シンガポール航路であった。駆逐艦不足に悩まされた海軍は行く先々で輸送船から空母戦艦まで護衛させている。戦艦は特に潜水艦がこわいので大和武蔵が移動すると,3隻の駆逐艦をお供に要した。もうこれだけで作戦が破綻している。戦艦は外泊ではなく,内地に係留しておくべきだったのだ。ではなぜ,戦闘行動のとれない大和がトラックに進出したか。搭乗員の加給手当が目的だった。滑稽さを通り越して悲しい。
北朝鮮への先制攻撃論もそんな視点も必要だろう。実際に先制攻撃しなくても,給与が増えるならそれに越したことはない。誰も異議を唱えないだろう。当たらない無用の PAC3 が展開するだけで隊員の加給がなされている。民間生命保険の加入が拒否される自衛隊員は小泉首相の死亡3億円を約束されて海自は海賊パトロールに同意した。米英はケチで戦死しても確か300万円以下である。その代わり,遺族にメダルが出る。自衛隊員は軍人ではないので戦死してもメダルはない。どちらがいいか。日本式がいいと思う。実際に戦争となると,ちんけなパトロールの3億円が倍にならないと出動を拒むだろう。さて,有事のさいの民間徴用をどうするか。ロイヤルネイビーのような強制徴募をするのだろうか。戦争中,輸送船に徴用された船員の死亡率は海軍兵のおよそ3倍ないし4倍であった。
靖国賛美もいいけど,軍人の崇高な戦いに臨むためにどれだけ民間が犠牲になったか。歴史学者ウッドの指摘である戦略爆機 B29 の開発製造は日本の民間雑誌航空朝日が取り上げたくらいオープンであったが,日本の指導者が真剣に検討したとは思われなかった。この論拠の難点は原爆の存在だろう。日本が善戦し続けると,寛大な対日占領政策もパーになって,京都への原爆投下さらにフィリッピンのような苛烈な植民地政策に近いものに変わったかもしれない。当然,天皇は廃位だ。吉田茂が負け方が大切だと言っている。
米英の凄いのは大西洋憲章を発表して,その理念を中ソとの冷戦が始まっても堅持した事だ。ごはんを食べ神を拝む民とパンを食べ経典を規範とする民との違いだろうか。米英に過労死も特攻もない。終戦時の鈴木内閣で文部大臣と司法大臣は終戦(ポツダム宣言受諾)に反対していた。イタリアのように徹底抗戦派と受諾派に分かれて,数百年前の南北朝の対立が現出した方が良かったのかもしれない。
一撃講和,本土決戦を主張していた陸軍は軍政を望んでいなかったようだ。合衆国は内戦状態を想定もしくは外敵を想定し,知事が非常事態を宣言する。軍政トップは知事である。沖縄戦では悲劇が起きた。島田知事も牛島軍司令官も天皇に対する責任を名目に県民保護を最優先しなかったようだ。比島戦でのマニラ無防備宣言すらできなかったのだから那覇は到底,無理だったのだろう。皇軍には皇民を守る義務はなかったようなのだ。文部大臣と司法大臣が終戦に反対したのは天皇官僚制の存続を危惧したからだろうと思う。
牛島司令官がドイツ人の将軍だったらどうなるだろう。ドイツの軍司令官はソ連の苛烈な捕虜扱いは承知していた。でもソ連軍重囲にあったパウルス司令官は自軍兵士の命を優先し,総統の徹底抗戦を拒否して降伏した。皇軍だと俺たちは玉砕だ。お前らは適当に避難しろ。あるいは合衆国の戦争ドラマに頻出するように日本軍は住民を盾にするのかもしれない。ソ連兵の粗暴さはそれは酷く,民間ドイツ人に対する扱いをアメリカ人からよく聞かされた。合衆国に占領された日本人は言外に感謝しろの意味だろうと思う。それでも,沖縄は惨状になった。どんな兵士でも長い戦争になると,精神を病み軍紀は弛緩する。まともな軍靴を支給されない日本兵は捕虜となった米兵から靴を略奪し,素足で行軍させた。日本軍将校は座視した。日本の右翼は本間将軍の処刑を非難するが,米兵の靴を剥ぎ取るのはどうかと思う。
はたして自衛隊将校は戦場で隊員を統率できるのか。市民迫害を目にしたらどうするのか。自衛隊に軍法はない。また,基地設営は徴用に拠ったが,チョウヨウと朝鮮人とはほぼ同義であり,その扱いも海軍は特に酷かった。米軍は日本捕虜を将校,下卒および朝鮮人に分けて収容した。沖縄戦では,沖縄人と本土人を分けるつもりだったようだが,玉砕したのでその必要性はなかったようだ。沖縄のほぼ全裸状態の少女が震えながら米兵から缶詰をもらう実写フィルムが残されている。飢え怯えた犬のようだ。米軍は民間人収容施設資材と食糧を準備して侵攻してきた。沖縄の米軍を疲弊させたのは玉砕ではなく日本軍火力だった。本土の大砲弾充足率は10%だった。四国配備急増師団の火砲は皆無に近かった。沖縄での善戦が本土でも再現される見込みはほぼ皆無だっただろう。弾がない。コメもない。食糧危機の北朝鮮への先制攻撃は中露の北朝鮮支援を招致するだけではないか。何より,反日の韓国民が激昂するだろう。
降伏する自由のない日本が先制攻撃していいのだろうか。しかし,毎日新聞が北朝鮮先制攻撃に言及するとは思わなかった。時代だな。日本のマスコミは報道しないけど,外信によれば,国連が組織したアフリカの PKO 部隊の蛮行が限度を超えているらしい。国連の役人に現地部隊を処罰する権限は何もないのだろうと思う。
指導者の頭の中
対馬に侵攻する韓国軍兵士がどんな行為に至るか,ベトナムに参戦した韓国軍を連想すれば想像がつく。対馬島民の避難担当は長崎県である。紙だけの避難計画はあるかもしれないが,自衛隊に対馬島民保護作戦計画があるとも思えない。そんな計画を立案しても昇進の妨げになるだけか。沖縄防衛戦では,避難どころか防御施設建設および補給道建設に動員しただけで,避難所建設計画とあるが鼻からやる気はなかったのではと思う。本来なら,県民にシェルタ建設を優先させても良かった。酷い牛島将軍だ。島田知事は兵庫出身,牛島は鹿児島だ。自衛隊と皇軍には共通点がある。ともに官兵だ。官兵に県民保護を望むのは場違いというものだ。県民シェルタを断念した言い訳に,建設資材の不足があった。宮崎作戦部長は輸送船到達の見込み薄から,補給を止めさせた。参謀の恐怖心からか,やっと陣地構築の目途がたったかと思ったら,移動となり別の場所で建設だ。まあ,どこに陣地を構築したらいいか指示のできないダメ将軍であった。参謀長と高級参謀がいがみ合っていた。ドイツ国防軍元帥は陣地構築場所を命令する。昭和の日本もリーダ不在,平成以降の新日本も戦争は無理ではないか。北朝鮮と韓国は想定外の奇手を繰り出すかもしれない。両国も日本も官兵である程度,発想は予想がつくが指導者となるとわからない。
戦後,沖縄大和特攻に同意した提督は叙勲となった。牛島島田も叙勲となるのだろうか。中部太平洋に籠り,緒戦から特攻を実施していれば 1946 年まで持ちこたえられたという説は右翼に魅力だろう。反日国のミサイルよりマインドコントロールの方がこわい。逆パールハーバの可能性もあるか。先の宮崎部長は事実上九州放棄も決定した。西部管区に補給なしの自存自衛を命じた。この意味は九州は沖縄戦をやれというのと同義であった。何を何から守るために軍隊があるのか,日本軍はおかしくなっていた。戦争目的も開戦時の自存自衛が末期の国体護持に変更して,大して疑義を持たなかったようだ。官僚とはそういうものだろう。世論も流れに抗う事はなかった。
韓国に最大の利権を有するのは合衆国である。日本海に2隻空母を派遣したからといって,金の卵である韓国経済為替を崩壊させるような愚を起こさないだろう。ただ,米軍地上部隊を北朝鮮の砲兵射程距離より遠ざけたのは少し気にはなる。ソウルは長距離砲の射程内である。スパイがいるから着弾も恐らく正確だろう。青瓦台の瓦礫映像が世界に配信されれば,ウオンは大暴落だ。こんな選択をトランプがするとも思えないが,ヒトラー 2.0 と称される彼だ。もしかしたらやるかもしれないと思わせての交渉か。
しかし,なんで韓国は北朝鮮の重砲の射程内に首都と置いたのだろうか。ドイツは冷戦期,オランダ国境沿いのボンに首都を移転した。しかしドイツは地図で確認すると狭い国だな。周囲が小国だらけで,大国にみえるだけか。ロンドンモスクワの直線距離はインドの東西より短い。日本のインパール,ガダルカナルおよび中国のばかげた長大な大東亜戦争における戦線は何の戦略目的で拡大したのだろうか。昭和天皇はインパールとニューギニア侵攻を提案していた。侵略指向という視点からするとヒトラーも昭和天皇もさして違いはない。アメリカのアニメをみていたら,ニクソン元大統領が地獄殿堂(額縁の肖像)入りしていた。その他にヒトラーと昭和天皇もいた。
インドが日米豪の共同海軍演習参加を断った。タイは中国製潜水艦の購入と中タイ鉄道建設に同意した。南アジアと ASEAN は合衆国ではなく中国が主役になりつつある。合衆国が中国ほどこの地域に投資しないのだから,当たり前だ。自由とドルの魅力は褪せたのか。合衆国は到底,南アジアまで手が回らないというか,この地域の市場に関心を失ったのだろう。しかし,日本にとり ASEAN はドル箱だ。シンガポール,香港と台湾の一人当たり GDP が日本を凌駕し,韓国も日本に追いつく段階になった。これらの国々は日本より高付加価値の労働をしている事を意味している。金融サービスとか半導体産業は鉄鋼とか自動車を生産するより高い価値を産み出すのだろう。日本は産業の高度化に合衆国どころかアジアの国々に劣っている状態になってしまった。
経済環境の激変を起こすのが戦争だ。ソウル市民の一人当たりシェルタ面積は 2.3 m2 だそうだ。本土空襲時,満杯の防空壕は直撃を受けた一方,逃げ遅れて地下防空壕に入り損ねた勤労動員女学生が助かったという話がある。日本本土はこれまで,散発的な艦砲射撃を除いて一般市民が砲撃を受けた事がない。北朝鮮の長距離自走砲の射撃様子をみた。凄まじい爆風が生じる。西欧の長距離砲は移動と寿命を勘案して射程は 20km 程度が多い。北朝鮮の砲身寿命は短いかもしれない。ナポレオンの時代から砲兵最大の敵は砲兵である。韓国の K9 は安価なようでフィンランド,トルコおよびインドに輸出の運びになった。価格は日本製の半額である。同じ予算で倍の門数が整備できる。かつてアジアで大砲を製造できる国は日本くらいしかなかった。冶金と加工がネックとなった。かつて劣悪な武具を支給されていた朝鮮官兵が分裂して南北朝鮮が競争すると,兵器が発達するのがよくわかる。
ガダルカナル高台先制
ガダルカナル陸戦は高台の占拠合戦だった。日本が最初に大砲設置のための高所を占拠しても,砲を運搬設置できなかった。撤退すると替わりに米海兵砲兵が進出して渡河が不可能になり,迂回して砲を人力で牽引,山道を開削した。本を読むと司令官が決めたのではなく,参謀が指導して決まった。ガダルカナルの戦いは戦略の誤りだけでなく,戦術レベルでも素人がみても無理な意思決定がなされている。迂回して攻撃発起点に到達した段階でヘトヘトだ。攻撃延期を要望した旅団長は解任された。この山道を輜重隊は背負子で山谷を越えて運ばなければならない。将校は食糧砲弾を運ばないから,その労苦はわからない。
一木支隊の残存部隊は輜重兵となり,撤収は一番最後だったという。しんがりは補充の新部隊との私の記憶とずいぶん違う。連隊旗を喪失したみせしめらしい。アホな連隊長に巡り合った兵卒はえらい迷惑を被る。そんなに大切な連隊旗なら後方の部隊と残置したらどうだったのか。「奉焼」とある。陸自も奉焼するのだろうか。奇襲夜襲に際して,連隊旗に何の意味があるのか。現代の散兵戦術では戦旗は皆無だ。。。隊長旗が遠望しただけで砲撃対象になる。命がかかる実際の戦闘ではそんな馬鹿げた事はいくらなんでもしないだろう。戦記は半分盛られているのだろう。
調べてみようかなと思ったけど,時間の浪費かな。常識を越えた記述はマユツバと思って読めばいいか。しかし,玉砕特攻に至る前でも事実の隠ぺい,改変が酷いな。いっそ戦史など読まず,知らない方がいいのかもしれない。
日本軍高級将校の兵卒に対する冷酷さと自身の天皇への忠誠奉仕と無関係のはずだが,そうでもないようだ。同胞愛が欠けているのだろう。どうして軍官僚は非情なモンスタになってしまったのか。昭和天皇独白録によれば,無理筋のスタンレー山脈越えとアラカン山系越えの作戦を示唆した昭和天皇も非情ではある。兵卒の人力体力の限界がわからない愚昧な人だったのだろうと思う。兵卒を率いて行軍した事がなかったのだろう。軍の指揮官に向いていなかった。ロマノフ王朝最後の皇帝ニコライも戦線が膠着化するとペテルブルグに籠り,戦争指導を放棄している。作戦を示唆した侍従とか身近の者がいたのかもしれない。天皇は最高指揮官なのに作戦に関してスタッフはゼロであった。建前上は参謀総長と軍令部総長がスタッフではあったが,ロボットなので下問はあっても議論する事はなかったようだ。確か奏上と言っていた。まあ,本来神像のような現人神がしゃべるのは不自然なのはもっともだ。長く苦しい戦いをどう継続し乗り越えるか。危機意識があっても,孝明天皇とか昭和天皇のような現人神が出てくるのは避けられない。指導者を選抜できない不幸なシステムを内包している日本に外戦は不向きだろう。
参考
- 関連記事
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- 征服王ウィリアムの頃の馬挽数と海洋交易
- 指導者不在の先制攻撃論
- 太鼓のお囃子と渡来人
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