2017/10/16

イノベーションとドラマ Outcast

資本主義がキリスト教社会から勃興したのは否定しようがない。なかでもプロテスタント倫理に着目したのがウェーバだった。EUは明示されないが西欧キリスト教諸国の連合体である。しかしEU内でもPIGSと称されるラテン諸国は低成長と高い失業率に喘いでいるから,一見妥当性がありそうだ。

アメリカ合衆国は極度の格差社会である。平等を主張するとコミニストと非難されるお国柄である。合衆国の宗教社会は人種別である。白黒同一教会は稀である。黒人教会は圧倒的にプロテスタントである。実際,合衆国から日本へ布教にやって来る若いモルモン教徒に黒人を見たことがない。黒人教会は海外布教する資金余裕はないのだろう。トランプは民主党の地盤であった中西部錆州の支持を得て大統領になった。一般に民主党=堕胎OK,共和党=堕胎NG の関係がある。草の根運動や進化論を否定する原理主義者は一般的に共和色の白人である。

家人が Outcast と題されたオカルトTVドラマをみていて,私も4本ほどみた。合衆国のコミュニティのあり方が映像化されていて興味深かった。小さなタウンが舞台である。町の住人に邪悪な何かがとりつく。牧師はそれを町民に訴えるが,教会幹事会が牧師を解任する。日本の神社では神主が氏子会議で解任されるのはあり得ないなと思いながら見る。牧師館も含め教会の資産は牧師に所有権はない。幹事会が「連合」に新しい牧師を依頼したとあるから,合衆国プロテスタントの主流派とわかる。これまで,エクソシストとかオーメンはカソリックの悪魔祓いだったから,Outcast はポーとかキングのホラーに近いのでより合衆国民に受けるのであろうか。プロテスタント教会なのでイエスの磔刑像はない。

町の警官が過剰暴力で失職する。妻は妊娠したが,支払いのあれこれを挙げて自分一人の収入では無理と堕胎を決意する。彼女の職業は小学校教師である。いかに合衆国教師の収入が低いかわかる。夫は警備の職の当てがあると妻を慰める。早速,車を売り替えて現金を得てくる。主人公がどうやって生計を立てているのか,途中から見たせいもあるが不明である。主人公の住まいは廃屋に近い。

牧師は悪は善人が愛着するものにとりつくと主人公に説明する。なるほどと思う。イエスが全人類の罪を背負ってハリツケになっても,悪が蔓延るのは何故か。主人公は愛する者を守るために邪悪なものに立ち向かう。悪には指導者がいて,悪業へと導く。Matrix は主人公の覚醒が物語だった。Outcast は主人公自らの不可思議な力が愛する者に禍をもたらし苦しむ。

おまけにあったオーメンの新作第1話をみた。主人公はすごいイケメンである。30歳独身の設定だ。出てくるエリート層のソサイエティとか大学をみると,シカゴ大を思い出す。シカゴ大は合衆国自由主義経済学の総本山である。シカゴ大キャンパスをみると,合衆国の富はとてつもないと実感する。そんな雰囲気で南部陽一郎は研究していた。経済学は経済分析を通じて,富の配分と最適化の提案はできるが,新しい富の創出は無理なようだ。シカゴのスラム問題と黒人は同じである。アフリカ系政治家,軍人,経営者が輩出しているのに,IT分野では皆無である。不思議な現象だ。

日本でも世界を牽引するようなIT分野の独創的な会社は任天堂を除いて皆無である。任天堂とかソニーエンタテインメントはアミューズメントだから,Google よりは Disney に近い存在だ。といっても,所詮ゲームだから主体はプログラムである。

プログラムはヒトの知的産物である。これに価値を認め,高給を支払う合衆国と低給に喘ぐ日本のプログラマ。シカゴの黒人女性の賃金はほぼ白人と同等まで上昇したが,黒人男性は低いままだ。これは黒人女性が教師とかソーシャルワーカに進出したせいだろうか。今では司書,教師および介護職といえば黒人女性の定番なのだろうと思う。

不思議なのは黒人農夫が少ないのはどうみたらいいか。日本の新規就農者が不利なように農地取得に制限があるのか。かつて西欧ではユダヤ人は農耕に従事できなくて,ゲットを形成した。それでも信仰を捨てなかった。ユダヤ人が移動の自由を得るのは,帝国主義が隆盛になるオーストリアおよびドイツ帝国下である。ユダヤ農民が増えたのはどうもポーランドくらいだけで,移動の自由を得ても農地の取得は困難だったようだ。第一次世界大戦後のボルシェビキ指導者はレーニンスターリンを除けば,ユダヤ系が目立つのもユダヤ農民が少なかった証左になるだろうか。ロシア革命はユダヤ革命になる筈が,スターリンの党指導は解放に程遠いものであった。統制社会では交易市場貨幣はさして意味をなさず,例えば価格とは統計上のものであった。

アフリカ系合衆国民と日本国民がイノベーションに不得意な理由は何だろう。言語でもなければ宗教でもない。共通項は農民指向が弱い事だろうか。日本の農民は土地所有を維持するために農民を自称している一面がある。かつての武士みたいなものだ。同じプロテスタントでも黒人教会と白人教会では職業倫理感が異なるのだろうか。見えない障壁バリアがあると考える方が妥当か。日本が低成長に喘ぎ,貧困化進行している。これを打破するにはイノベーション(構造改革)するしかないだろうが,総選挙の論点を見る限りその意識は皆無である。政治を民意の妥協の産物とみなせば当たり前か
とも思う。

資本家が何に投資するか。明治の鉄道に投資したのは維新政府ではなく,各藩の豪農富農であった。農林中金の投資対象は国内新規産業とか就農者ではなく海外である。それほど内国産業は労働生産性が低いのだろう。どうも合衆国農務省も黒人農民に余り優遇して融資しないようだ。優遇とは我が国の言葉でいえば「補助金」だろう。

市場経済が崩壊したカオスの今,政府に処方箋はないだろう。経産省官僚が四国の獣医学部新設を国家戦略と呼ぶ程,劣化している。実際問題として,彼らはお手本がないとどうしようもない。社会を変革できるか。オバマの8年は Change と言いながら,現状維持であった。糞オバマケアですら,給付対象になり得ない貧困層は投票に行く事はない。日本の無関心層と称される貧困層も同様だろう。

地方で一旦,壮年の男が定職から離れてしまうと再就職はなかなか困難である。合衆国のアフリカ系男性とだぶる。ローマ帝国は市民が遊民化して衰退した。中華王朝は遊民が暴徒化して農民反乱となり滅亡するのが常だった。

高度先進国ではグローバル化のなか,成年男子が担っていた製造産業が自国内で消失した。貨幣資本は安価な労働力を求めて,移動するのは当然だが,移動の自由があると言ってもヒトはそうもいかない。古代の市場交易に際し,異邦人と貨幣は双対だったのが,現代中国人民政府は合衆国連邦50年債を買い増しする。その中国の富が合衆国に還流する。これがメインストリームとしたら,合衆国アフリカ系男性と日本男性のワーカの位置づけが見事に重なるとわかる。何故我々はイノベーションから取り残されるのか。イノベーションを生み出せないのかと言い換えてもいいだろう。

冷涼な鎌倉期に日本の農耕は畜耕に移行しつつあった関東にあって,室町期にもなると貨幣経済,足軽鉄砲による軍事革命がありながら,兵農分離とともに江戸期に人力農耕へと回帰したのは何故か。現代イノベーションの阻害する要因は人力耕起に遠因するのではないか。

さらに高度な灌漑畜力農業を行っていた古代エジプトがギリシアローマに屈したのは何故か。征服者のローマ農業は原始的天水農法であった。日本の灌漑稲作も実に高度な農業である。コミュニティの語源はラテン語のコムニーである。以前,農地面積単位の違いについて述べた。古代ローマでは牛一頭が一日に耕せる面積が単位である。米英のエーカもそれに準ずる。他方の日本は米の石高が基準となる面積である。古代アメリカ文明のように適応過多が進歩を阻害するのであろうか。

合衆国アフリカ系男子も日本の男子も新しい職能を志すチャレンジ精神が少ないようだ。米軍に志願して大学奨学金を取得するのもアフリカ系ではなくヒスパニック系が多いようだ。日本農業は世襲ばかりで新規就農者が少ないのと日本に求められるイノベーションが関係がないようでつながっているのではないか。どちらも個人の裁量が求められ,しかも農業は孤立してできるものでもない。コミュニティと市場へのアクセスが欠かせない。それは新事業でも同じだ。

合衆国白人男性もしくは中国台湾を中心とするデジタルソフト産業が日本を含め世界を呑み込む。一見,日本人の職業倫理観もイノベーションに対応できるのかと思ったが,日本の電子立国は幻だった。模倣と新技術新市場創出は別物であったか。台湾人には見える世界市場が日本人には国内しか見えない事実はどう考えたらいいのか。日米比較論よりは日台比較の方が先か。

参考

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