2017/11/13

大中華圏流通コスト

中国が現代版海と陸のシルクロード構想を打ち出している。
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欧州とASEAN市場がターゲットだ。ロンドンからコンテナ列車が中国浙江省義烏市に着いた。

ウイスキーや赤ちゃん用ミルク、医薬品、機械類が積まれた列車はロンドンを今月10日に出発し、フランス、ベルギー、ドイツ、ポーランド、ベラルーシ、ロシア、カザフスタンを経て、20日間かけて義烏に到着した。義烏は消費財の卸売りの中心地だ。この新ルートはロシアの有名なシベリア鉄道(Trans-Siberian Railway)より長いが、2014年に開通した中国とスペイン・マドリード(Madrid)を結ぶ世界最長路線よりは約1000キロ短い。ロンドンは中国の国有鉄道会社、中国鉄路総公司(China Railway)の新貨物網で結ばれた15番目の都市。同社によれば、空輸より安く、海運より速いという。   浙江省政府によれば、船で輸送するより30日短縮できるはずだが、今回の試験運行では予定していた18日間より2日多くかかった。義烏当局によると、「東風号」と名付けられたこの列車が一度に運べるコンテナは88個。コンテナを1万~2万個積載できる貨物船に比べてはるかに少ない。

旧ソ連圏は欧州標準軌道ではないので台車を2度交換しなければならない。欧州北米ではもう新線を建設する事のない貨物鉄道輸送路だが,トラックに比べると大量に運べる。トヨタとマツダはウラジオストクからシベリア鉄道でロシア市場に乗用車輸出をしたが,流通コストがかさみトヨタは止めた。欧州の高級車ベンツ BMW が中国内陸部に鉄道で輸出されるようになるのだろうか。一帯一路にはイラン/トルコ ルートがある。WSJ の図だと建設予定になっている。
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しかし実際はテヘランイスタンブール間に列車が運行されている。パキスタンは標準軌道に変更する決定をしたらしい。中国最奥部/パキスタン 回廊が建設されている。イランは既に韓国と同等の自動車販売市場だ。パキスタンはノルウェーと同じ程度だが,人口が大きく伸びは大きいかもしれない。

華南で生産される建築鋼材,電子機器および電子部品に,もう日本は太刀打ちできない。中国は産業高度化を目指している。機械自動車の輸出である。工作機械は中国の後塵を拝するようになった。発電プラントは韓国そして中国に勝てなくなった。鉄道車両の輸出もじきだめになるだろう。日立東芝のインフラ事業の未来はそんなに明るくない。特に東芝は国内最強だったメディカル部門を手放したから成長分野がなくなった。

中国の自動車製造拠点は満州と重慶である。重慶は長江沿いに面していて,1万トンの船が遡行できる。日本のマツダが内航海運を利用するのと同じで重機械工業のハンディにならなかった。蒋介石の時代には兵器工場,毛沢東の時代には軍用機生産が始まった。今は建設機械と自動車製造である。

満州の自動車産業は国内市場が飽和すると,輸出しなければならない。しかし隣接するロシアの市場規模は小さい。ロシア沿海州に中国内と同じ標準軌道を敷設する計画のあるザルビノ港がある。水深が浅く,1万トン位の船しか荷を積載できない。それでも,上海からロサンゼルスへ向かうより早い。ザルビノから津軽海峡を抜けシアトルバンクーバに向かう。そんな時代が来るかもしれない。日本の北米自動車輸出は工場が海岸に立地していてドイツ車に比べ物流コストが優位だったからだろうか。

オホーツク海は冬季の間,流氷に覆われ航行船舶への損傷が生じる。2016 年の日露交易の前年増減比は以下の通り。ロシアからの輸入は 22.2 % 減少し,輸出は 2.0 % の増加だった。輸出の伸びはオーストラリアが最大で,輸入の減少は最も少なかったのはドイツだった。

             Import Export [%]
World     -10.2   -3.5
Russia    -22.2   +2.0
China     -10.5   -1.3
Australia           +7.2
Germany -1.0

沿海州の地勢も開発するには不適なのかもしれない。ロシアから日本へのガスパイプライン敷設計画も塩漬け状態にあり,ロシアからの輸入により日本海が活況を呈する事はないだろう。日本の輸出市場として,額は小さいもののプラスの伸びである。ロシアの国土も広いし,従来の内燃機関による自動車市場は期待できる。ロシアでは大都市を除いて全く,EVは売れないだろう。

日産のマーチは国産製の販売はない。全てタイ産である。タイ日産工場と積出港は 100km 未満である。ザルビノ港より遥に優位だ。ザルビノ港は中国国境まで 100 km である。ASEAN での自動車市場を中国が日本を凌駕するのは容易ではないだろう。だが中タイ回廊がなくとも,日本製白物家電,重電,建設機械,工作機械はもうだめだろう。日産は回廊を利用して中国内部から部品を調達するかもしれないと,思いきや,中国雲南からシンガポールに至る回廊の鉄道建設にタイは熱心ではないようだ。タイ国鉄のゲージは 1000 mm と中国の採用している標準軌道とは異なる。タイはロシア沿海州のように後背地は山で森林資源くらいしかないのか。タイの軍事政権は中国製潜水艦導入を決定し,中国との結びつきは強まっているが,民間は中国の技術および資本にあまり関心がないのかもしれない。

一帯一路構想は江戸期,ロシアの南下政策を思わせる。英露は対立したが,2次世界大戦ではイランからの合衆国レンドリースが激戦だったスターリングラード攻防に間に合った。トラック,航空機用滑油,そして戦闘機だった。合衆国の潤滑油は世界最優秀だった。日本軍は潤滑油品質の重要性がわからず,スタンダードオイル社の潤滑油は満州に送り,本土防空は低品質の国内産だった。戦闘機疾風の稼働率は満州の方が良かった。本土初空襲した B-25 や航法を誤ってウラジオストックに着陸した B-29 の搭乗員はシベリアアラスカルートではなくペルシャで連合軍に引き渡された。

シベリアの鉛鉱山から脱走したドイツ兵は西へ向かい,テヘランに脱出した。脱走する前,地図を入手していた。大学時代,哲学の先生がカイロ大に留学していた頃のエピソードを思い出す。砂漠の真ん中にある遺跡を訪れた時,一人の若いドイツ人がコンパスと地図だけでやって来て驚いたと話してくれた。草原とかオアシスの道はどんなんなのだろうか。イランが親米だった頃,イランは対ソ諜報の起点だった。ドラマホームランドのソールもイランからソビエト中国へと侵入した。

オスマンを破ったチムールはサマルカンドから中国遠征の途上に死んだ。チムールの末裔がインドのムガール帝国を創建した。大航海時代前の草原の道はけっこう早かった。特に遊牧民は女子供,家畜を連れても移動がはやい。旧約にあるモーセ一行のカナン侵攻前,3箇月たってもシナイの荒野だった。食糧はどうしたか。宿営の周りに露が降り,パンとなった。彼らはマナと呼んだ。せんべいの味とある。英訳だと,

The people of Israel called the bread manna. It was white like coriander seed and tasted like wafers made with honey.

多分,乾燥地帯の食べ物であるクレープに違いないとエチオピアで検索すると,それなりの物がありました。蒸留酒製造器がウイスキー蒸留釜と同じ形状で,凄い。ちなみに聖書にはコーヒは出てこない。私の知っているユダヤ系アメリカ人はコーヒ,コーラを口にしなかった。

出エジプトのユダヤ人は40年,放浪してマナを食べた。神話なのに飽食の記述はない。まだアダムとイブのように神の祝福が感じられる。定着すると,ヒトは汗水流して耕さなければならなくなる。

カスピ海を南北に走るカスピ海回廊鉄道の記事がほとんどない。ドイツ帝国の3B政策が霧消したのと同じなのだろうか。ロシアCISの鉄道のゲージが欧州標準と異なり,使いでが悪い。独ソ戦が始まると,ドイツはソ連の線路のゲージを変更工事しながら,内陸に侵攻していった。

ロバートカプランの地政学的大中華圏だと,ウスリー川以南さらに樺太のオホーツク文化圏を含む。朝鮮を含み,琉球列島は含まない。南シナ海は中国の内海になっている。ASEAN さらにインドも含み,西の境界はイランである。
GreaterChina.jpg インドとチベットの間にはヒマラヤマ山脈の障壁がある。アーリア人およびムスリムが侵攻したように陸路だと西回りのヒンズークシだろう。英国のように海から圧倒できるだろうか。南シナ海およびインドネシアを勢力下におければ豪州への進出は可能だろう。中国内部の鉄道路線分布をみると,インド侵攻よりは,はるかに朝鮮日本の制圧は容易だろう。インドは核保有国だが,日韓は核兵器を保有していない。しかし,朝鮮と日本を支配して何のメリットがあるのか。いくら中国人が感染症に対する免疫が強いといっても,地球温暖化にともなうマラリア等の熱帯病猖獗地域への植民はうまくいくのかな。それより,満族の故地である満州以北のウスリー流域の方が進出しやすいだろう。ロシア極東地域の人口減少と温暖化による大穀倉地帯になる可能性から,ウスリー流域への植民開発が先なのではなかろうか。北米との交易も近くなる。


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参考

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