2018/01/05

EU離脱と英国鉄鋼ランキング20位

アイスランドの地政学
ノーベル文学賞受賞のイシグロがストックホルムでスピーチした。ノーベル兄弟はロシアのバクー油田の利権により財をなした。スラブ族が覚醒するはるか昔,北方ゲルマン諸語族の一派がノブゴロドに都市を築いた。ルーシ(ロシア起源)の始まりだ。レバントで開始された麦作は西へと伝播し,北方のスウェーデンには 10世紀である。北方は寒冷なので当然だろう。当時ヨーロッパ最大の文明地域はビザンチン帝国である。北方諸族は交易を求めて河沿いに移動してコンスタンチノープルを目指した。交易品は毛皮,金そして奴隷である。黒海周辺は西欧世界によく知られていた。古代ギリシャが栄えた頃には,ギリシャの胃袋を支えた穀倉地帯だった。彼らにとり川と陸路が海路より容易だったのだろう。ノルマン人がシチリアに王国を築くのが11世紀である。
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西欧はフランク王国が分裂すると,王家が乱立して絶えず争った。ソ連が崩壊して,やっと西欧各国の軍備削減が始まった。オランダ陸軍は戦車を廃止してトルコに売却した。ソ連が台頭する以前の脅威といえば,イスタンブールが首都のオスマントルコだった。国家が争うとしたら,大抵は隣国である。ピョートル大帝がバルト海に面したペテルベルグに遷都した頃の仮想敵はスウェーデンだった。スウェーデン,ロシアおよびプロイセンは三すくみ状態だった。

イングランドは北海沿岸のアングルサクソン族が移住後,デンマーク周辺のデーン人が襲いイングランドを支配したかと思えば,イングランド王ハロルドはノルマン公に過ぎないウィリアムに破れた。その後,英仏は百年戦争を経て,ドイツが台頭するまで延々とナポレオンまでの時代まで争った。イタリアに至っては都市単位で争っていた。日本の戦国期が西欧の平常状態だった。西欧王家は政略結婚を常とした。ハプスブルグ家に至っては婚姻で欧州の覇者になった。ドイツが領邦国家に分裂していた頃,イングランドとロシアの皇后供給地であった。

古代ローマから税は貨幣であった。日本の租税が金納にかわるのは明治維新である。各国は貨幣を鋳造したけど,金利を忌避したカソリック教義により,宮廷ユダヤ人とバチカンが金融を担った。ノーベルの石油事業に投資したのはイングランドの資本家だった。終戦直後何故湯川が受賞し,戦前の北里とか山極が受賞に至らなかった事由に何がしかのイングランドとユダヤ系資本の影響があるとするのはうがった見方だろうか。

かつての覇権国であったスウェーデンとオーストリアはその後,中立政策をとった。黒海,地中海,ビスケー湾,北海そしてバルト海は海路でつながっている。ストックホルム国際平和研究所の会費はユーロではなくポンドである。ロシア,ドイツとも距離をとりたければユーロではなくポンドなのか。しかし,実際はユーロが流通している。古代フェニキア人が錫を求めてイングランドまで到達していた。錫は青銅器の材料である。ナチスが台頭した頃,印欧族の原初地は黒海のステップ地方とみなされていた。今ではアナトリア説が有力になっている。実際,ヒッタイトは鉄器によりレバントを襲い,エジプトと覇権を争った。ドラマオーメンでは両大国が戦ったカデシュから出土した剣のみがアンチキリストを滅ぼせる設定となっていた。聖書記載の宿敵ペリシテ人は今のパレスチナの語源だけれども,セム系ではなく印欧族(海の民)である。

イングランドがEUを離脱し,スコットランドが残留を希望している。オランダ,デンマークおよびスウェーデンはドイツ語の方言に近いが,政治的にはドイツを距離を取ろうとし,イングランドに接近する。陸路ではなく海路による交流である。グリーンランドはデンマーク領である。スコットランドとグリーンランドとの間にアイスランドがある。上図の地図はアイスランドの重要性がわかる。2次大戦に参戦した合衆国はいちはやく,アイスランドとグリーンランドに進駐した。ドイツ潜水艦対策である。英国はまさかの同盟国フランスの脱落により,大西洋につきでている軍港ブレストがUボートの出撃基地になり,作戦海域までの日数の大幅短縮になり,少数の潜水艦でも戦果が飛躍的に上がった。劣勢のドイツ水上艦は単独で濃霧にまぎれてグリーンランドとアイスランド海峡を突破するしかなかった。絶えず,レーダ搭載英重巡がピケット艦になっていた。一方,日本海軍は広い北太平洋をかつおまぐろ漁船を目視による哨戒艇にしていた。

その後,レーダは航空機に搭載されるようになり,夜間浮上航行中の潜水艦を探知できるようになった。独潜水艦の運用効率は下がった。米海軍は中立国のアゾレス諸島にも哨戒機リベレータ海軍版 B-24 を配備した。2次大戦は空の戦いになった。戦後,米ソによる東西冷戦が始まった。ソ連海軍は潜水艦を整備したものの半ば諦めていた。東西ドイツが最前線となった。圧倒的に優位にあるワルシャワ条約地上軍に対して,NATO は空軍と核兵器により対抗する計画であった。ドイツには戦術核が持ち込まれた。巡航ミサイルにも核が搭載された。その運用は在独米軍ではなくドイツ連邦陸軍であった。ワルシャワ軍の前衛は東独である。同一民族に対して核を行使する計画だった。米軍は ICBM を空軍の管掌にしているけど,V2 兵器がドイツ陸軍の所管だったように弾道兵器は砲兵の延長という考えが大陸では主流だ。核弾道兵器は海軍空軍を無力化する。軍事大国の合衆国大統領ケネディが悩んだのがキューバミサイル危機だった。安倍のように北の脅威を単に朝鮮有事と捉えるのはいかがなものか。もう少し,軍事史軍事科学的に捉えたらどうかと思う。

イングランドとマンダリン
敵国の立場に立って考え,対策方策を練る。毛沢東はかつてソ連および合衆国の核兵器を張り子の虎と呼んだ。自力で核ミサイル戦力を配備すると,貧しいけど国連安全保障常任理事国になった。北朝鮮は中国と旧日本をお手本にしている。ドイツは核武装の選択を止めた。天然ガスを仮想敵から輸入し,ソ連との融和を図った。東西ドイツが統合しようとも,ロシアはもうドイツは脅威にならないと悟った。不安になるのがポーランドだ。ポーランドは NATO に加盟して安堵した。ドイツの武器は経済力である。マルクを独仏共通のユーロとして,英仏を離間させた。EUの内実は独仏枢軸である。そのEUが日本と再来年 EPA を発効する。日独仏の枢軸なのか。イングランドの戦略は非ユーロ圏との連携である。そのひとつがノーベル財団のあるスウェーデンだ。三脚が安定しないように,とにかく3箇国は安定しない。イングランドが目をつけたのは中国だ。英露,英印協商はあり得ないからだ。情報宣伝がたくみでネームバリューのある英国だが,文化大国としての側面が強い。金融を除けばパッとしない。でも19世紀に清朝マンダリン(官僚)に食い入った歴史と実績から勝算はあるのだろう。

衰退した英国鉄鋼産業
韓国電力公社が英国原発事業を買収した。イングランドは売れるものなら何でも売るかつての中国みたいなものだ。サッカーのプレミアリーグをロシアとサウジが保有している。大衆紙ミラーが英軍艦(Royal Navy)の鉄鋼材料は自国製でないと,政府を批判している。政府は外国製鋼材はスウェーデンと韓国製で国益に合致していると釈明している。スウェーデンは中立国で英国と同盟関係ではないものの深い関係にある。韓国もスウェーデンに準ずる関係とは知らなかった。そのうち王立海軍は中国製鋼材に置き換わるだろう。自動車ローバは中国ブランドだ。ミラーは Financial Times とは視点が異なる。日本にもこんな大衆紙が欲しい。日本のスポーツ紙は大新聞社系列だから二番煎じだ。週刊誌は発行部数が落ちて文春以外もうだめだ。

英国の核戦力の中心は原潜だ。原潜は自国で建造するものの弾道ミサイルは合衆国製である。造船所はイングランドではなくスコットランドにある。ソ連の軍艦がウクライナの黒海クリミアで建造されたのと同じようなものか。ウクライナがロシア CIS から離脱するとクリミアを回収した。スコットランドが独立すると,軍港と造船所はイングランドの飛び地になるのか。

戦後体制は黒海沿岸のヤルタ,地中海のカイロで会談が行われた。冷戦の終りは 1989 年の地中海のレーガンゴルバチョフのマルタ会談だった。これらも上図の地図にある。

日本はソ連を除いた世界 3% の鉄鋼シェアで米英に立ち向かった。酷い鉄鋼不足だった。もうドイツですら,2次大戦型の総力戦を戦えない。現代中国は世界を相手にできるほどの生産高シェアだ。統一朝鮮はどうなるだろうか。じきインドの鉄鋼生産は日本を追い越す。イングランドのランキングは20位である。英国人の感情はいまだにインドとオーストラリアは植民地である。英国にハンドリングされるのではなく,適度な距離感が必要だろう。産官による過度の英国投資は疑問だ。中国人とかインドのような人口を抱えていない限り,衰退を始めた民族が再興する事はない。日本も例外ではない。

参考
貧国強兵 p25
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