2018/01/22

悲しい戦時下の鉄鋼生産

日本が総動員体制に移行した 1938 年以降の普通鋼の生産高推移をグラフにしてみると,太平洋戦争以前から生産が低下している。これは驚きだ。開戦後は米潜に輸送船を沈められ,粘結炭および鉄鉱石の輸入が減少したせいと考えていたが異なる。鉄鋼産業部門への投資を怠ったせいのようだ。1944 年度には半減した。
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中国との戦争下でも,産業は疲弊していた。戦前の陸軍の普通鋼割り当てが多い。普通鋼とは圧延鋼材および構造鋼材である。S10C は軟鋼だけど,機械構造用軟鋼は特殊鋼に含まれるようだ。鉄鋼産業は鉄鋼を必要とする。制海制空権を失った後,陸海軍への割り当てを減らしてでも造船に注力しているのが悲しい。合衆国のように,開戦前に工期の短い輸送船を大量建造すべきであった。蘭印の資源(石油,ボーキサイト)を確保しても,運ぶ船がなかった!

1940 年の粗鋼生産シェアは米(43),独(13),英(9)及び日(3)であった。ソ連は不明?米英 vs 日独は 52:16 であった。ドイツは 2500万トンから3500万トンに増加した。合衆国が大恐慌時,日産 40t の鋼塊生産量に落ち込んだ。200 thousand ton に戻るのが 1940 年だ。戦争が終わるまで 240  thousand ton の生産を維持している。戦後も微増していくから民需がそれだけあった!何と,合衆国は民需を圧迫せずに軍需を賄ったのか。以下のチャートは月次の日産量である。
WarSteelUS.png FRB が提供しているデータだ。日本だと経産省所管データである。合衆国は連銀が経済を制御し,日本は経産省だ。四国の獣医学部新設を国家戦略として策定したのも経産省であった。

以下に示すように日本が 1937 年度の生産に戻るのが 1955 年頃である。18 年要している。いかにシナとの戦争と満州への投資が日本経済の脚をひっぱっていたか。鉄鋼を含めた民需部門に投資できなかった。
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石原がシナとの戦争に深入りするなと東條と争ったが,排除された。そして喉から手が出るほど欲しい石油が満州にあった。後の大慶勝利油田である。ハルビンから 200 km 足らずのところだ。軍事官僚や満鉄を含めた革新官僚に山師の感性を求めるのは酷だ。満鉄にハリマン商会が入っていれば,アメリカ人が見つけたかもしれない。英国の縄張りだったサウジに油田を発見したのはアメリカ人で 1938 年だった。油がダブついて暴落していても,山師に投資するようなのがアメリカ人気質である。

サウジの利権を英国に認めさせ,ドイツソ連の中東影響力阻止が合衆国の国家戦略だったのかもしれない。香港と長崎に米船が寄港する時代から,一貫して日本より中国交易の方がうまみが大きかった。トランプ一族は中国富裕層(官僚)相手のビジネスに力を入れている。TPPがこけた今,対米通商交渉は韓国が苦慮するように対日経済制裁がらみになるのは避けられないだろう。

マネーファースト=中国ファースト

が米英の海洋基本戦略だろう。対中包囲網を築こうとしている安倍外交は猿回しのようにも見える。北がミサイルを撃つほど,安倍外交と内政は上手くいく。「暴支膺懲」の近衛東條の時代とさして違いはないのか。一度,朝鮮に派兵したら泥沼だろう。この基本構造は畿内に存在した大王の時代から変わりようがないのかもしれない。誰が首相になっても,朝鮮出兵か。原発も回せない,石炭火力を建設できない。また,政府は国民に倹約,我慢辛抱を呼びかけるのだろう。これが性に合っているのかもしれない。坊ちゃんだった小泉と細川にとやかく言われる筋合いはないと考えるのが妥当だと思わないか。マスコミの貴種世襲指向はどうにかならないのか。

日本のアメリカファーストは国是として,やむを得ないのだろうけど TPP 参加国のメキシコを少し再考したらどうか。列強との不平等条約改正のできなかった明治政府,メキシコは日本と平等条約を結んだ最初の共和国だった。合衆国と大変だねの意味合いもあったのかな。カナダが離脱しても,それなりにメキシコを遇するのが日本とり,国の品格を示す機会ではないか。メキシコを大切にすれば,中南米諸国の日本を見る目が変わるだろう。合衆国,中国とも異なる大国が極東にあるのだと。

参考
貧国強兵 p25 p102


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