2018/10/12

ハクソー・リッジと少年船員

プロパガンダ映画
家人に良い映画だからと勧められ,ハクソー リッジの DVD を観た。ありきたりのキリスト教および合衆国のプロパガンダ映画だったが,それなりに考えさせられた。

銃も持つことを拒否した実在の衛生兵が主人公である。狙撃されるから,赤十字の鉄兜を被るのを止めろと忠告される。日本軍が特に衛生兵を狙えと命令した話を聞かない。このエピソードは日本人は文明人でないと示唆している合衆国定番の演出である。戦争に野蛮と文明の違いは何か。戦争していてもそれなりにルールがある。西欧の長い戦争の歴史の中で培かわれた。当時だと国際法,具体的には陸戦規定である。西欧文明の背景はローマ法,ゲルマン慣習法そしてキリスト教である。赤十字社精神はそのさいたるものである。

主人公がブートキャンプでの命令拒否を理由に,懲罰房に入れられる。日本軍の営倉(懲罰房)と異なり待遇が良い。さらに抗命し続け,不名誉除隊の軍法裁判にかけられる。そこへ1次大戦の軍服を身に着けた父が軍高官の紹介状を持って駆けつける。昔の合衆国の徴兵は州単位だった。Wiki によれば,主人公は77師団に配属されている。77師はニューヨークを根拠とした師団だった。2次大戦では州単位の愛国精神でなくとも,星条旗の下に無数の師団が編成されたのか。日本の徴兵が地方役場の兵事課を通じた郷土師団とは大きな違いだ。そう言えば,他の映画でも出身はどこだと聞かれ,州名(国名)を答えるから,徴兵業務は州とかカウンティの業務ではなかったのだろう。ニューヨーク出身の祖父が77師で比島沖縄と転戦した知人がいる。孫に地獄だったと回顧している。彼の母はスイス人と結婚し,スイス在住である。

戦闘シーンは派手で実にハリウッド的である。主人公は負傷兵に鎮痛剤をうつ。恐らくモルヒネだろう。失血性ショックを緩和する血液製剤の輸血シーンがない。米軍衛生兵の背嚢には缶入りの輸血キットがあった。戦争ドラマコンバットとか担架に乗せらた兵士が輸血されている映像が多く残されている。この血液製剤製造法は当時,国家機密だった。米軍だけがこの輸血を実施できた。後に負傷兵は肝炎に苦しむ事になる。

盛ったエピソードにしろ,こんな衛生兵がいるようでは日本は勝てない。戦前の旧制高校東大の教育を受けた私の指導教授は「軟弱な野球なんかやらんよ」と言っていた。彼の専門は造兵学(火器)だった。この歳になって,アメリカの真の強さとは何かがぼんやりと見えてきた。薬物に汚染され,分断されつつあるアメリカ社会ではあるが,真の強さは目に見えず,父らが言っていた物量とかに定量化できないものだろう。社会を結ぶ紐帯はもう無意識のレベルになっているホスピタリティの精神だ。

軍属身分の従軍記者と徴用少年船員
B-29 の構想ロールアウトをオープンにし,原爆血液製剤製造を秘匿した合衆国。戦艦大和を秘匿し,中島飛行機工場および海軍暗号の防諜はなきに等しかった日本。戦闘機工場の秘匿に成功した英国。戦闘機工場を地下に建設したドイツ。来年,憲法改正を発議して,自衛隊を明記するという。何を何から守るのか,あいまいにしてどれほどの意味があるのだろうか。

自衛隊には軍法がないから,反省部屋が用意されているのだろうか。日露戦争およびドイツとの戦争では日本の国際法遵守が称賛されたが,シベリア出兵シナ事変を境に国際法を無視する。国境なき医師団がシリアでの病院空爆をしきりに非難している。空爆を指揮しているのは CIA である。UAV の運用は米軍が担当している。CIA は軍服を着用せず陸戦規定による軍隊ではない。家人によると,ゲリラが病院を偽装していると言う。それでは国境なき医師団はゲリラのシンパか。

近未来の戦争は近代のような国家同士の正規戦ではなく,ゲリラ戦が主になるのだろう。ゲリラとはスペイン語でナポレオン軍がスペインに侵攻した際の農民とか山賊の類による抵抗だった。

貿易問題では合衆国と反目しているドイツだが,英国とともに陸上兵力をアフガンに増派した。合衆国の同盟国の一員としてどんな軍事的貢献をアフガンにおいて日本政府はするのだろうか。とりあえずは戦費の負担だろうか。

ドイツ基本法は,「侵略戦争の準備や平和攪乱を,国家機関のみならず,個人および法人に対しても禁止している」状況を鑑みると,日本は異質である。そしてドイツ連邦軍は戦術核を運用する。カンボジアとかルワンダの虐殺をみると少年兵は悪とか罪の意識なく殺戮を実行したようだ。未開な日本というよりナイーブ(無知)というべきか。
「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。  あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。  あなたはいかなる像も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。 あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。わたしは主、あなたの神。わたしは熱情の神である。わたしを否む者には、父祖の罪を子孫に三代、四代までも問うが、  わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも及ぶ慈しみを与える。  あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない。  安息日を守ってこれを聖別せよ。あなたの神、主が命じられたとおりに。  六日の間働いて、何であれあなたの仕事をし、  七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、牛、ろばなどすべての家畜も、あなたの町の門の中に寄留する人々も同様である。そうすれば、あなたの男女の奴隷もあなたと同じように休むことができる。あなたはかつてエジプトの国で奴隷であったが、あなたの神、主が力ある御手と御腕を伸ばしてあなたを導き出されたことを思い起こさねばならない。そのために、あなたの神、主は安息日を守るよう命じられたのである。  あなたの父母を敬え。あなたの神、主が命じられたとおりに。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生き、幸いを得る。  殺してはならない。  姦淫してはならない。  盗んではならない。  隣人に関して偽証してはならない。あなたの隣人の妻を欲してはならない。隣人の家、畑、男女の奴隷、牛、ろばなど、隣人のものを一切欲しがってはならない。」
以上は古代ユダヤ族の掟であった。異教徒は奴隷以下で神の祝福はなかった。人道主義および反戦主義が芽生えたのは高々1次大戦後である。哲学者ハイデガーは人道主義に対してシニカルだった。それでもEUは統合し,それなりに平和を享受している。その辺縁地域が地獄の様相を呈している。

日本が再軍備を宣言するにしても,大義が必要だ。国際法に認められた自衛権と主張しても,列強に侵略されるのは枚挙に事欠かない。現代のアフガン,ベトナム,フィンランド,ポーランド,中国などがある。日本にオーストリアのような中立は韓国のような隣国があるようでは叶わない。韓国の従軍慰安婦および徴用工のネガティブキャンペーンは合衆国,とりわけ福音派および女の熱心なキリスト教徒の共感を呼び起こすのは明白だ。原爆は日本人に対する神の懲罰とみなす輩というか,普通の主婦はそうだ。国際法違反とは毛頭思わない。そんな彼らが日本唯一の同盟国である状態をどう現状認識すればいいか。韓国,カナダおよびメキシコ等が二の足を踏むような米軍との共同作戦しか評価してもらえないだろう。在米日系人が自国民として認められたのは,欧州戦線に参戦したからだった。撤退したがっている米軍基地負担を増やしても,効果はないだろう。普通の主婦が横須賀とか沖縄に何の関心もない。

有事になったら,公務員教員を除く我々は徴用対象である。朝鮮人徴用工,日本人未成年徴用少年船員が太平洋戦争では強制使役となった。軍属にもなれなかった。かつて南方軍司令官 寺内 閣下は芸者を軍属に任命して,飛行機で赴任した。従軍記者は恵まれた軍属だった。この辺りは全て曖昧にしての国軍復活である。
第76条第1項の規定により自衛隊か出動を命ぜられた場合においては、当該自衛隊の行動に係る地域以外の地域においても、都道府県知事は、長官又は政令で定める者の要請に基づき、自衛隊の任務遂行上特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣が告示して定めた地域内に限り、施設の管理、土地等の使用若しくは物資の収用を行い、又は取扱物資の保管命令を発し、また、当該地域内にある医務、土木建築工事又は輸送を業とする者に対して、当該地域内においてこれらの者が現に従事している医療、土木建築工事又は輸送の業務と同種の業務で長官又は政令で定める者が指定したものに従事することを命ずることができる。
戦前の徴用令は勅令により,公布施行された。国会の議決なしに強制徴用動員が可能だった。近未来の有事では政令で施行される。しかしながら現代の若者には,そんな危機感がないようだ。西欧ではこんな状態を農奴,奴隷と呼称していた。

石破が安倍の改憲案を現状と同じなら改憲する必要がないじゃないかと皮肉った。所詮,憲法は紙切れであり,政令が勅令のごとく公布施行される。歴代征夷大将軍および秀吉は律令制の体裁を取りながら,律令を無視して式目とか惣無事令を公布施行していた。近未来の有事の検断権は戦前同様,官僚とはそら怖ろしい。これは日本の歴史そのものだから,どうしようもない。

内閣総理大臣が軍事動員大権をどう思っているか。合衆国だと,議会の同意が欠かせないのだが。日本の有力国会議員は世襲である。これでいいのかな。

合衆国は有事のタンカおよび輸送船の船員を軍属としている。せめて日本も軍属扱いにできないのか。防衛官僚はどうしてこうも冷酷なのだろうか。昭和の総動員体制の名残か。その中心は東大と防大出身とする軍事官僚だろう。沖縄戦における中学生も含む民間人徴用と何が違うのか。同じなのだろう。東條内閣は懲罰徴用徴兵を行い恐怖政治を敷いたのを思い起こすのも必要だろう。役場の兵事課がその任に当たった。そのための戸籍制度だった。戸籍は全国一律にシステムが統一されている。防衛省の補任課とか動員課と総務省のシステムを接続すれば,即徴用可能だろう。接続は既に済んでいるだろう。防衛省は各種名簿を整備している筈だ。ナチスドイツ以上の迅速な動員徴用ができるだろう。しかし韓国の動員はもっと速い。我が政府の情けないのはその種の動員計画を一切,明かにしない事だ。

国民皆兵のスイスは平時 34,000 の兵力が有事 48H 後,396,300 人を動員する。今年,スウェーデンは40年振りに予備役を 22000 人動員した。Wiki によれば,フィンランドは 11,600 の国境警備隊を動員してゲリラ戦を行う。民兵みたいなものだろう。常備兵力33千人が有事に28万人動員となる。自衛隊の常備兵力は15万人である。日本国の有事にどれだけ徴用が必要になるか想像がつくだろう。人力田起していた貧農国家の日本は日露戦争後,大国病に罹った。それを支えたのは文部省による皇民教育だった。教育勅語の精神は今でも健在だ。集団主義は恐ろしい。

それでも,1944 年になって徴用船員は軍属となった。
「報酬なしの上、支払いが遅れる。戦死公報も遅い」農林省の対応は評判が悪かった。各地の漁業組合は「待遇改善」を軍に働き掛け、昭和19年3月からは軍属扱いとして月140円の手当が出ることになった。
官は民が要求しなければ,民を使役するだけである。あるヒゲの殿下は我々を民草と呼んだ。草を無価値とみる瑞穂の国と草の根民主主義を標榜する合衆国。BSがヤンキースとレッドソックスのポストシーズンを LIVE で放送していた。フィールドは草で覆われている。選手はのびのびプレーし,3人の黒人少女が回の合間に観客席で踊り出す。周りは誰も気に留めない。自由だな。いい国だ。

フランス官僚は18歳徴兵を企図している。人口減少の日本の軍事官僚も考える事は一緒だろう。徴用少年船員,少年兵が活躍動員されるのは日本海軍アニメだけではない。現実になるのかもしれない。嫌な時代だ。18歳選挙権付与の目的はここにある。ドイツにはヒトラーユーゲントの反省がまだ残っている。靖国神社が新天皇へプレッシャをかけた。天皇はバランサなので圧力により,どちらにも傾き 1500 年続いてきた。靖国精神を合衆国が利用して日本は合衆国の先兵になる。その先例は義和団事件そしてシベリア出兵がある。致し方ないか。

参考

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