2018/11/07

ソフトバンクへの融資元と民族主義

ソフトバンクの融資元シンジケート団からバンクオブアメリカ BofA が外れた。合衆国の金利は上がり出したし,ソフトバンクの投資ファンドであるビジョンファンドへの大口投資元のサウジアラビアの政治情勢が怪しくなったリスクと重なってしまったのか,それとも提示された条件が良くなかったのか。

 

これまでお付き合いさせていただいたベンチャの経営者達は融資元を選ばないといけないと強調していたのが思い出される。お金にもきれいなお金とドブに流れるようなお金があり,上流の金融機関を選べという話だった。最近の金融不祥事だと商工中金とスルガ銀行がある。ベンチャへ投資するのに証券会社を中心とした投資組合がある。

 

日本には欧米のような投資銀行はない。融資だけである。三菱銀行であれ,町金と融資態度は同じで基準が違うだけである。信用保証が設定されても担保と連帯保証人がないと貸さない。そして借りるのに預金しなければならない不思議な不文律がある。なかばタコ部屋と同じである。

 

ソフトバンクの幹事行に三菱も含まれていない。日銭の入るソフトバンク通信事業は既に担保が設定されていて,新規に子会社の IPO をせねばビジョンファンドの資金がショートするのだろう。サウジアラビア情勢と合衆国長期金利上げと重なってしまった。株券を持ち込んで融資を受けるのは町金だけではないようだ。ソフトバンクの凄いのはまだ存在しない会社の IPO を担保に融資を取り付けた事だ。不思議な世界だ。孫正義だから可能だったのだろう。

 

日露戦争前,日本帝国は高橋是清を米英に派遣して戦債をユダヤ資本を幹事会社として起債,さばいてもらった。担保は日本の生糸である。ビジョンファンドの原資はソフトバンクの新規携帯電話会社となる通信料金である。官房長官は日本の通信料金は高すぎると言っている。通信料金が下がったら担保価値が下がるじゃないか。ビジョンファンド潰しの大きなスキームが動き出したのであろうか。

 

戦前日本の大恐慌は製糖事業で得た原資を元にした台湾銀行の鈴木商店への過大融資が焦げ付き,発端となった。別に,鈴木商店が米を買い占めていたわけでもないのにそんな風評が立った。日露戦争の戦債を償還し終わったのは,太平洋戦争後の高度成長期である。一方,ロシアの起債を引き受けたフランス資本は紙くずとなった。債券も中央銀行券も本質は同じである。ソフトバンクへのシンジケート団は名だたる世界の金融機関だが,その起債は円ではなく米ドルである。こんなところにも為替リスクが顔を出す。


仮に円が1ドル 200円に暴落したらと想定すると,ソフトバンクのファンドの破綻リスクが高まる。あの 3.11 でも円の暴落はなかった。現代日本の経済力は大したものだ。戦前は経済力がなかったから,軍事に傾注したのだ。金持ち喧嘩せずだ。安倍らは戦前を美化して,悲しい事に円の価値を下げる円安が良い事だと信じている。困ったものだ。国家のホコリを最大関心事とする民族主義者とはそういうものかもしれない。たたいて落ちるようなホコリより,手と頭を働かす日々の生活が肝心だ。

 

Bloomberg の GPS 解説ビデオはわかりやすく秀逸だ。


参考

ソフトバンクに90億ドル融資へ、IPO主幹事5社が合意

ソフトバンク、アリババ持ち分を担保に80億ドル借り入れ

ソフトバンクがビューに投資-サウジ記者殺害事件後で初の大型案件

 米ソ冷戦が生んだGPS技術の歴史

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