2019/11/02

日立の車部品投資と日本電産の電池自動車投資

日立に買収されるホンダ系の部品会社 ケーヒン,ショーワ, 日信工業の買収発表翌日の株価をみた。見事に買い付け価格に張り付いた。
コード銘柄翌日始値発表日増減 [%]TOB
7251ケーヒン2,5972,29813.011314192600
7274ショーワ2,2982,2064.1704442432300
7230日信工業2,2432,1932.279981762250

何故,ホンダは部品会社を手放し,日立は自動車部品に注力するのか。日立 AMS の利益率が低いからだろう。自動運転が主流になったら,足回り,エンジン制御の部品を取り込みメーカへのシステム提案が容易になる。

ホンダの利益率をみたら,驚くほど低かった。価格競争で疲弊しつつある。栄光は過去のものだ。利益率%の低いメーカをリストアップすると,
1)長安汽車    1.0
2)ヒュンダイ 1.6
3)マツダ       1.8
4)起亜          2.1
5)BYD          2.3
5)フォード    2.3
7)日産          2.8
8)FCA          3.3
9)ホンダ       3.8
9)PSA          3.8

利益率を上げるには生産台数を増やし量産効果を高めるか,顧客満足度の高い車を設計し単価を上げるかだろう。ホンダの利益率が PSA と同じとは意外である。ホンダの利益はそんなポジションにある。年間 8200 億円の研究開発費が空回りしているような感じだ。

車は人と荷物を運んで移動するヘンリフォードのコンセプトは今でも活きている。環境にやさしい高価な電池自動車は労働者階級にとりクソだろう。価格を下げなければならない。リチウムイオン電池のサイクル寿命に関して,トヨタをはじめ明らかにしない。よほど悪いのではないか。

数年前,ホンダとかヤマハ発動機はモータ設計技術者を募集したが,今はなくなった。毎日,通勤通学に使用する車なのに,いつも充電を気にしなければならない。外気は -20℃ に下がる。当然充電池の性能は下がる。しかし南カリフォルニアなら事情は別だ。

自動車メーカは環境州グループ(フォード,ホンダ,BMW,VW) と連邦グループ(GM,トヨタ,FCA, マツダ,日産,スバル,ヒュンダイ,起亜)に二分されたようだ。ホンダはカリフォルニアの排ガス規制をクリアしたエンジンを武器に北米市場に参入したので省エネ車にも思い入れがあるのかもしれない。電池自動車の普及に関して富士経済の予測がある。チャートにすると,信じ難い普及が中国,欧州および北米で起きる。何故か日本,台湾および韓国ではEVは売れない予測になっている。
EV.png
この種の怪しいデータを購入する組織がある。日米開戦前の経済諸表,予測と同じ類だ。結論が先にありデータを操作する。しかし,実際の中国では省エネ車は補助金が打ち切られ,マイナスに転じた。この情報が正だろう。戦前の日本陸軍情報部は冬が来る前にソ連勝利と独ソ戦の審決を出していた。陸軍作戦部,東條一派と海軍が合衆国と戦争したかっただけだ。北米環境州,欧州および中国が炭素税でも導入しない限り,こんな成長はないだろう。

フランスではマクロン政権がガソリン税を上げようとしたら,暴動が起きて取り下げられた。車がないと生活のできない貧困層が多くいるからだ。これは北米でも同じである。電池価格破壊と固体電池が来年にできるのか。それはないだろう。

ホンダは負担となっている部品会社を日立に売り,商品化に専念できる。電気部品は日立とか日本電産から買えばいい。自動車の iPhone 化が始まっている。いかに顧客にアピールする商品を開発できるか。もしくは昔の馬車替わりになる車だ。アメリカではボーイが高校生になると,車がないとデートもままならない。中国の中古車市場の急成長は車本来のニーズを明らかに示している。

電池飛行機が実用化されない限り,電池自動車が広大な中国および北米で普及するとは思えない。つまりボトルネックはモータではなく電池なのだ。日本電産の CEO はこの認識がないのか,それとも意識的に無視しているのかだろう。時価総額ランキングが22位ともなれば,本音は語れないのか。
中国の2カ所にメキシコ、ポーランドを加えた4つの工場を新設・増設することで、生産能力を年間1200万台へと引き上げるという。だが同社は、その野心的な拡張が完了しても、EV市場が順調に拡大すれば供給能力はその2倍でも足りないと見ている。
最大のリスクは、EVの市場拡大に予想以上に時間が掛かるとの公算が大きいことだ。EV普及のネックであるバッテリーは「素材の供給不足などのため依然として価格が高く、補助金などで生み出された需要を除けば、限られた市場」(日系完成車メーカー幹部)。EVは、中国政府の電動化目標や米国政府の環境政策に左右される“官製商材”である。
若い頃,上長が指数関数的な数量の伸びを示す信じられない予測チャートを作成していた。当人はぼやく事もなく,実際そうなると断言する事もなかった。おそらく責任者の意を汲んでの資料だったと思う。誰もがあり得ないと思いつつ,若い部外者だけが笑いながらコメントしたのを思い出す。

当時の責任者の現役時代は高度経済成長期だった。別のマネジャは当時は何を造っても売れたと言う。人は過去の体験を物差しにして,物事をついつい推し量る。成功していれば,なおさらだ。日本電産と日立の経営者の生年は以下の通り。

永守重信          1944 年生
東原敏昭          1955 年生
馬 化騰            1971 年生
ラリー・ペイジ 1973 年生

人脈とか経験を重視するなら老いている方が有利だが,足元をすくうような技術ビジネスが生まれる状況に適応できるかどうか。自動車産業の情報化に関して,日立はホンダのババを引いたのかもしれないし,日本電産は電池自動車に前のめり過ぎたかもしれない。東芝とか日本郵政のように企業買収案件の評価は難しい。日本電産は枯れた工場買収と熟練労働者を活かして事業再生で成功を重ねてきた。大したものだ。車載モータも従来の買収方式でも十分だと思うが,どうだろうか。

車の情報化に関して,先頭を走りそうなITのトップは 1970 年代生まれである。ラリー・ペイジの大学時代,彼の研究テーマにファンドを提供していた会社の一つが日立だった。日本では,プリウスの電池泥棒が発生しているそうだ。電池自動車の最重要部品はモータではなく電池だ。中国人が中古電池自動車を乗り回すようになってこそ,本物だろう。充電池の劣化,液漏れを思うと電池の価格がネックだ。環境にやかましい北米東西両海岸州の女を除いたら,中国が支配する電池車にアメリカ人が好んで乗るとも思えない。しかし,禁酒法を通過させた国だ。罪悪感の余り,環境規制が連邦法となる可能性がないわけでもない。福音派が電池車を好むかどうか。連邦規制法が通過したら,車がないと生活できないプアホワイトは高価な中古電池車を呪うだろう。

曙ブレーキが北米生産設備を縮小し,日産が車種の整理を予定している。北米市場は設備過剰なのではないか。ホンダは国内工場を集約する。テレビ同様,自動車も垂直統合から水平分業に生産形態が変わる。ホンダの選択はこれに合わせているのだろう。

日立の部品事業は開発スピードとコストが課題だろう。国内工場を抱えて,多分だめだろう。日本電産の選択は電池の性能向上と環境規制にかかっている。中国市場では政府助成のおかげで成功するかもしれないが,貧困移民層の多いフランス以南と東欧ではいくら安いモータでも高価な電池ではどうしようもない。ここでも馬車の代替が基本だ。富士経済の不思議なデータをみると,馬車文化のない日本が太平洋戦争の兵站に失敗した机上の空論を思い起こさせるのは思い過ごしだろうか。

我々の父祖は軍馬代わりとなって,大砲を人力牽引したのだ。米軍はトラックおよびトラクタ牽引だった。

参考
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