2020/04/15

2.26 の「農村困窮」とカント自由論

2.26 事件は昭和11年,昭和8年は大豊作だったそうだ。
昭和八年、米は大豊作だった。農林省の荷見安米穀部長は、米価の暴落を防ぐために、必死で米を買いあげた。
反乱を起こした青年将校は農民兵の心情を利用しただけだった可能性もある。「一君万民」思想はどちらかと言うと,後の毛沢東主義,当時のスターリン主義に近いのではないか。当時の日本は男子普通選挙制が実施されており,軍人は政治への関与を禁じられていた。2.26 事件は日本ファシズム翼賛体制のスタートとなった。

戦前の,海軍軍政家だった富岡が 2.26 事件綴りを廃棄せず保管して明らかになった。それによると,2.26 以前,憲兵隊が海軍次官を訪問して反乱将校名を告げたと言う。これは何を意味するか,2.26 事件は陸海軍共同謀議と言えるものである。陸海軍首脳が「決起」を黙認していた可能性がある。まさにファッショだ。渡辺教育総監は機銃兵により,数十発の弾丸を受けハチの巣になった。兵士に憎悪が感じられる。ここまで兵士を洗脳した青年将校は大したものだ。決起兵は「尊皇斬奸」を掲げていた。この時流に軍部と革新官僚は乗った。男子普通選挙による議会制民主主義が吹っ飛んだ。貧困に喘ぐ平民覚醒が昭和維新による天皇親政とは恐ろしい。当時,左派勢力は全く伸長しなかった。

翼賛体制の背景として,中島が親鸞の「他力」にあると言い出した。宣長の漢心を捨てろと同じ根につながるらしい。これが日本人の心性とすれば,「自由」を希求する現憲法は何の意味も持たないのかもしれない。30年以上も前に読んだカントの「道徳形而上学原論」を再読した。「自由の概念を分析しさえすればそれから道徳ならびに道徳の原理が出てくるわけである」p104 とある。このセクションのタイトルは「自由の概念は意志の自律を解明する鍵である。p103

カントが職を得ていた当時のプロイセンは厳しい農奴制と軍国主義の王国であった。自由論を提唱し始め出していた英仏では,交易による富がジェントリと呼ばれる新興階層が勃興し始めていた。カントが固くなまでにイギリス経験論とフランスのエスプリを否定して,無骨な自由論を説きだした。「幸福は理性の理想ではなく想像力の理想であり,この想像力の理想はまったく経験的根拠にのみ基づくものである」 p59 これが,西洋に感化された教育を受けた日本の若者に受けたのだろう。遅れた資本主義国にファッショが生まれた。

一君万民の「国体」運動は独伊のファッショ以前の状態かもしれない。日本の皇国思想は,中国版皇帝専制国家と何が違うのだろうか。江戸の幕藩体制下の方が雄藩は藩校を整備して,儒教的価値観に基づき「政道」を説いていた。

「自由」も「革命」も生煮えの状態で,日本は現代に至っている。国連の幸福度ランキングによれば,我が国は低い。そうであれば悪夢の翼賛体制が復活する可能性は皆無ではないかもしれない。

ヒトの生活に衣食住は不可欠だ。ある不動産事業者のコメントがなるほどと思う。
リーマンショックの時に、他社が赤字に転落したのに対して、当社は20~30%の減益で済みました。それも、中古マンションに特化していたからです。5億円のマンションは2億円まですぐに下がりますが、3000万円のマンションが2000万円になることはありません。だからこそ、当社は令和の今も中古マンションだけを扱っているわけです。
破産して家を追い出された恐慌は過去の話か。昔の映画を見ると,税務署の役人は差押の札を貼っていた。
ただし、売買に有利となる時期は長くてもコロナ禍収束の数か月後までだと考えられます。 その後はハイパーインフレ下で実体経済が悪化する可能性が有り、不動産は売買が縮小してしまうかもしれないのです。
ハイパーインフレになると,不動産市場は冷え込むのか。インフレだから,「物」に投資した方がいいと思うのだが。

参考
道徳形而上学原論 篠田英雄訳
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