2021/03/26

菅首相最低賃金引き上げ表明と日独労働生産性比較

底辺層の定義は年収 200 万円以下である。我が首相は最低賃金を 1000円 にする予定である。英断である。労働者の実質賃金は低下する一方だから,底辺層増大の歯止めになるかもしれない。最低賃金が上がれば,構造改革に適応できない最低賃金労働に依存する外国人を使役する下請け中小企業,農業法人は淘汰されていく。

北欧諸国は中国企業と競争するのではなく,産業を高度化して発展途上国の低賃金労働者と棲み分けを図る。労働基本権もない中国人労働者と競合する日本は馬鹿げているが仕方がない。戦前の中国台頭と同じ経済状況に嵌った。

これからは西欧北米が中国製の電池自動車を購入する時代が来る。合衆国北部諸州,カナダ,北欧を除いた温暖な地域は電池自動車に置き換わるかもしれない。ボルボ,エリクソン,ノキアの北欧企業はさっさと売れるうちに自動車,携帯通信端末事業を中国に売却した。

バイデン政権の公約最低賃金 15ドルは難しい情勢だ。自動車産業を捨てきれないのだろうか。スウェーデンがボルボを身売りできたのは何故だろう。Wiki によれば,スウェーデンに最低賃金はない。日本と同じ自動車生産国のドイツの最低時給 PPP は 11.35ドル。他方,日本は 7.95 ドルと低い。それに日本人はドイツ人より年間 300 時間余計に働いている。日本はドイツに比べると,おそろしく労働生産性が低い。下請けの二重構造のせいだろう。

日本の自動車組立工は中腰に屈んで重量物を取り付けねばならないが,ドイツは自動車自体が治具により回転して自動車工の姿勢に合わせる。日独の生産技術が余りにも違い過ぎる。日本の自動車組み立て治具設計製作は殆ど下請外注である。在米日本車工場の組立工の担い手はどんな人達だろう。

野口によれば,日本の労賃が競合する中国人賃金と平衡するまで,実質賃金が低下する。将来の次期知識産業でも下請け外注プログラマ酷使事情は変わらないのではないか。日本人は江戸期,馬耕を止めて人力耕起に回帰した。要するに小作労賃は馬の飼養コストより安価だった。底辺が就労する3K労働はヒト余りが続く限りなくならない。底辺層は選挙に関心がないので投票に行かない。3K の労働条件改善は残念ながら,票につながらない。菅の後継は河野,進次郎だとすると,小泉安倍政権と同じ路線(派遣請負労働自由化)に戻り,ゾンビ産業が温存されるだろう。その典型が NHK と東電だろうか。

木こりが大統領になった歴史を有する合衆国は対中政策を激変させるかもしれない。基本的人権問題,政府による通商介入と,その予兆はある。かつての日本と同じような政策をしている。

つまるところ,東アジアに政治的自由があるのは大統領と総統を選べる台湾と韓国だけである。日中のブラック労働条件は解消されない可能性が高い。尖閣を報道しても, NHK らは中国のウイグルの強制収容所を積極的に取り上げない。何故か。日中ともに報道の自由がないからだ。しかも,受信機の有無に関わらず,総務省は視聴料徴収を認可すると言う。合衆国ではあり得ない国家の放送事業介入である。

終戦直後の民主改革は未完に終わった。まあ,本来の儒教(門地出自)に根ざした統治制度に回帰していくだけなのだが。合衆国の民主制度に多くを学んだのが,日本と中国の属国植民地だった韓国と台湾とは皮肉である。

参考
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