母子家庭崩壊テロリストと海自
中島岳志が安倍テロの先行例として,1921年の安田善治郎殺害事件を挙げている。「個人的な怒りと要人テロ」とのサブ見出しになっている。
それから半世紀以上がたった90年代、就職氷河期世代が登場した。彼ら以降の世代は、非正規労働者が急増した。中年になっても安定した仕事や家庭、人間関係などを得られず、精神的に追い詰められる人もいる。個人の努力で越えられない壁の前で傷つき、憤る人が増えている点は、戦前と同じだ。
2000年以上前,古代イスラエルでは過激なシカリ派と呼称されるテロ集団があった。ゼロテ派が蜂起して独立を図るが,ローマに鎮圧された。ローマに順応した穏健な守旧派であるファリサイ派サドカイ派は後世,影響を残さなかった。守旧派を糾弾していたイエスの弟子にはゼロテ派もいたらしい。
旧約の精神は「虐げてはならない」がモットーである。残念ながら,東アジア文化圏に属する日本ではそんな人権精神 Human Rights は根付かない。そしてテロに走る前に,自死する割合が圧倒的だろう。
近代以前,欧州では大規模な農民戦争が起きた。専制体制のロシアでもプガチョフの乱があった。ユダヤ人のマルクスは共産主義革命のヒントを福音書から得た。大した力のない集団指導者のイエスを何故,磔刑に処したのか。それでも現代イスラエルは,その教訓からか死刑を廃止した。イエスは実在していたのか,どうか歴史的に確認できない。墳墓のないダビデ王ですら,怪しかった。エルサレムの古い古い水道遺構からダビデの名前が発掘され確かになった。聖書の記述からすると,2000年前まではダビデの墓があったらしいが今はどこにも見つからない。一方シナと日本では古代皇帝天皇の陵墓が今でも存在している。
今回のテロでは母との関係がうかくいかなったようだ。西欧の王家は長らく王族から后を選んでいた。たまに実力で征服王ウィリアムのように母は革屋の娘だったりするが。自死した三島由紀夫は祖母に育てられた。公家では男子であろうと妻の出身家で養育された。武家はこれを嫌い,臣下の家で養育させた。カトリックとプロテスタントの違いは聖母マリア信仰にある。20世紀になり,教皇はマリアの神の花嫁宣言をした。
江戸の多くの町民は結婚できず死んでいった。40歳になっても家庭を持てない。支那都市のクーリ(苦力)と似たような境遇だろうか。流民が増えて官兵では鎮圧できなくなると,王朝交代が起きたが,日本ではシナ的革命は起きなかった。低い身分非世襲ながら指導者になったのは秀吉と田中角栄だけである。
合衆国大統領クリントンは母子家庭出身である。母は看護織であった。妻は裕福な中産階級出身。オバマにしても有産世襲ではない。ともにハーバード出身の民主党所属だった。東大出の母子家庭出身者が政治家になり日本の首相になれるだろうか。シナなら盗賊の首領でも王朝を開けた。この違いは何だろう。
新約聖書(使徒言行録)は家族を捨て,全財産を寄進して帰依しなければならないとしている。ドグマと呼称されている。安倍晋三は祖父の代から統一教会を支持していたらしい。岸信介は政治のためならドグマの利用は当然と見なしていた。戦前は国家神道(国体本義),東條内閣の倒閣に寄与し先物買いして戦後は左翼から出馬を検討した。CIAのエージェントとなり首相に上り詰めた。この頃,統一教会と関係を持ったのだろう。教祖は日本の新興宗教大本同様,世襲である。宗教にマインドコントロールは不可欠である。心の闇を20世紀のフロイトは病として捉え,ヒステリーの原因を親子関係に求めた。これを社会民族まで普遍化したのがユングであった。
蜂起に失敗した古代イスラエルは奴隷として帝国内に分散していった。だが,信仰は失わなかった。ユダヤ教から派生したキリスト教が帝国の国教になった。大日本帝国の末期,極右と軍部が一体となって特攻玉砕を称揚していた。浄土真宗の高僧が出征する信徒に死んでご奉公しろと説諭していた。宗教はあの世の話だから,ヒステリー状態の日本をさらに酷くしたのだろう。
狂気の時代をどう考えるか。粛清の恐ろしさを体得しているが故のロシア人と中国人を考えなければならない。翻って,諸国民は日本をどう思っているのか。韓国人の恐怖心は半端ではないだろう。まあ,日本は歴史的に大陸に介入すると失敗し続けてきた国である。それにしても,テロ実行犯が元海自隊員とは,歴史の呪縛から逃れられないのかもしれない。ちなみに防大生は靖国集団参拝する。イスラエル国防軍士官候補生はマサダを訪れる。防大生が沖縄戦を歴史の教訓として集団で訪れる事は今後もないだろうと思う。日本の国粋化がどこまで進むか。とりあえず防衛予算が倍増になるらしい。教育勅語も復活するだろうか。選挙による国民の選択だから仕方がない。民族性は変えられない。どこまでも従順な日本人だ。
本土決戦を叫んでいた軍部,本土とはどの範囲なのか。サイパン沖縄は含まれていなかった。北海道も含まれていなかったか。本土決戦計画を立てていた当時の陸軍作戦部長は九州を所管する西部軍管区に補給はないと告げたから九州も含まれなかった。大本営を松代に移転予定だったから,関東も放棄予定か。航空特攻を始めた海軍が皮肉にも反対したから,終戦になった。陸軍大臣の阿南は「米内を斬れ」と口走った。頭にあったのは 2.26 の再来だろう。実際,クデターが起動した。2.26は玉を確保せず失敗した。宮城クデターは玉を確保しようと皇居を封鎖したが,意外にも陸軍参謀総長梅津の同意が得られず失敗した。何故,陸軍上層部を拘束しなかったのか不思議である。その直前,陸軍次官が国内の軍司令官を招集して天皇の命に従うよう,異例の「念書」を取った。
陸海軍次官がともに終戦派だったのか。海軍軍令部総長は継戦派だった。戦後,海自の会合に豊田の出席を知り,当時の海軍次官だった井上は「恥を知れ」と言ったらしい。連合軍は開戦当時の陸軍軍務局長武藤を死刑に処した。日本は権力の中枢が見えない。あるフランス人は日本の中枢は空白と言った。「空気」が支配していた。今で言う「同調圧力」である。戦争の結果,勝者が敗者を裁くようになったのは2次大戦以降である。
中露両国の指導者は役人出身である。選挙により選出されたウクライナ大統領が指導する戦争がロシアと善戦している。危機にどんな指導者を擁立出来るか。英国保守党の代表選抜方法が実に興味深い。日本はどうだ。日本の学校教育は実に息苦しい。この事情は私立のミッション系でも同様である。初等教育は戦前と同じ画一である。自民党は教育勅語の精神だけでなく,復活させるつもりである。小学校の先生を見れば,その国の精神がわかる。教育勅語があれば,教条的先生は楽になる。これもドグマである。
参考
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- 終戦が遅れた要因 ー 東條人事修復
- 母子家庭崩壊テロリストと海自
- 開戦当時の暗黒日記
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