2013/05/28

みの虫クリップ

温度センサを購入したついでに,みの虫クリップも併せて買った。DSO に付属のプローブ端子は高耐圧安全性を考えて大きくて頑丈だが,電圧数ボルトの信号を測るには不便である。そこでみの虫クリップの延長線を使う。私はみの虫クリップの他端はICクリップの物を自製多用している。GND は黒色のみの虫クリップである。机上がケーブルだらけになると,DSO のCH1 とCH2 のプローブの色分けを瞬時にしたくなった。ちなみに DSO のプローブは黒とグレーを併用している。そこでみの虫クリップとICクリップの色を共通にする事にした。今回購入したのは,以前の物と比べ歯幅は若干大きいが,歯のかみ合わせ,歯の開き具合が良くなっている。以前の物も同じところから購入したと思うのだが,メーカがミヤマからテイシンに変っている。テイシンのかしめピンの頭の厚みがほとんどない。テイシンの技術者はかしめ機のジグを工夫したのであろう。歯面の全体にわたりかみ合わせを確保するのは設計はできても製造が難しい。普通は先端だけは良好なかみ合わせを得ようと設計するのだろうと思う。スリーブの口も大きくクリップを引き出すのもテイシンの方が簡単だ。

Tektronix DSO のプローブのわに口(みの虫)クリップもついでに比較してみた。型名は同じだけど購入時期と色が異なる。やはり新しい方が断然かみ合わせが良い。地味なところで改良している。ただ,新しい方はメッキが良くなく錆が浮いてきているし,プローブのモールド分割線が明瞭に出ている。要するにクリップのメッキ工程もしくは下地の材料が良くないのか。モールドが良くないのは多分,型の精度が良くないのだろう。使用するには分割線は気にならない。最近,もっぱら黒色ばかり使うのは分析してみるとそんな違いがあった。

日本には岩通とかオシロスコープメーカがあったけど,今ではパッとしない。円高もその一因だが,プローブのモールドは光沢仕上げの上等な金型なのだが,クリップの先は針金を曲げただけで個人的には今ひとつ好感をもてなかった。90度に折り曲げただけの細い針金では昔のみの虫クリップをガッチリ引っ掛ける事はできない。ほとんど日本の会社はプローブには関心がなく OEM 供給を受けていた。いくら電気的仕様がすばらしくても,数値に表しようもない要素も長期のビジネスをするには大切なのかもしれない。

私の技術者仲間に電子実験を熱心にやる同僚がいた。上司にもうけがよく,普段は研究実験用の器材に金を支出するのはいかにも勿体無いと考える上司と交渉してボロボロになったプローブの替りに数本の新品を購入して貰えた。しかしながら本体は製造部の資産で技術部員が岩通製の輝線が水平に表示されないオンボロ品を借り出すのだった。暫くして,半分のプローブが姿を消した。老獪な練達の技術者が私物化するのである。会社の備品である椅子でも名前を書いておかないと1週間程出張しているとその社員は新人の新しい椅子とすり替えてしまう。管理職は見ても見ぬふりをする。旧日本軍の備品と同じ状態が現出していた。後に,旧弊から抜け出せなかったその由緒ある部門は解体されてしまった。

会社の研究部門とか大学の研究所でも仕事をしたけど,実に簡単な回路の実験に使うだけなのに当時は垂涎の横河製のデジタルオシロが備えてあったりして驚いた。技術担当の副社長が叩き上げで,OPアンプに一家言があって説明を聴いて感心させられた。そのとき,良くも悪くも会社の性格は経営者によって染められるのだなと悟った。当該の開発部門の生え抜き部員は高級な測定器を当然だと思っていた。町工場でも各工作機械の担当が何となく決まっている。その機械を日頃操作していると,機械のクセを熟知し状態を音を聴いて診断できるようになる。

技術部員がオシロの修理を製造部に依頼すると,製造部から点検が終わったとの通知が来る。使用してみると修理されていない。要するにオシロの必要性の感じない設備担当が上司の意向を忖度して経費の発生する伝票を切らない。私はオシロをクリティカルな条件で使用するような実験をする必要がなかったので,さほではなかったけどシビアな開発の担当者には切実だったのではないかと思う。その部門は良質の測定器を保有する他部門と併合してこの問題は解消されたようだった。そこまで当時の所属長が読み切っていたとすれば,ある意味凄いか。
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