2016/06/03

英国原発を巡る東芝日立 vs 中仏競合

東芝日立連合が英国原発受注を目指している。その方式は BWR 沸騰水型だ。一方,英中政府が合意した原発はフランスアレバと中国原子力企業が建設予定している。これは PWR 加圧水型だ。

タービン建屋に汚染蒸気が循環する BWR は配管の耐震性,テロ対策を考えるともう採用するのは各国の政治判断くらいしかないだろうと思う。PWR に関しては東芝と三菱重工が 受注をできるけど,日本の原発運用は負荷一定の実に使いずらいやり方だ。これからは風力太陽光と出力が不安定な電源が増える一方なので負荷変動対応が一層求められる。日本式固定負荷の原発運転は先進国では不利だろうと思うが,マスメディアはそんな報道は伝えない。これら大会社は広告主だからだろう。日立東芝三菱重工は原発部門を抱え,海外受注期待感から株価への誘導を図ろうとの事だろうけど,中韓原発の優位性を冷静に見直してはどうだろうか。

韓国の原発が負荷変動に対処できるのに日本はそうせず,その分無駄な火力発電設備を日本は抱えている。そのベース電源の原発すら再稼動がままならない。

最近,原油先物価格は上がる一方だ。原発燃料価格変動は少なく,中東とかシナ海リスクにも強い。英国は北海油田と炭田の枯渇から原発を選択したのだろう。

危機になったら,合衆国がシェールガスを売ってくれるだろうとの過度の期待はすべきではないだろう。親密な米英関係でもエネルギ政策とか AIIB をみればわかるようにある意味ドライだ。日本は何故かリスク分散が下手なようだ。 東電で立証された日本の全くプアなダメコン原発運転技術を買うのは,経済関係が深く独裁傾向の強い東南アジア諸国くらいではなかろうか。どうも,戦前からの親日国であるタイは新幹線と原発は中国から導入するようだ。タイは外交が巧みでタイの外交をウオッチングしていれば,日中がらみの世界情勢がわかる。

鉄道とか原発のような古い技術を中国と価格競争して打ち勝つ良策はないと思う。中国フランス連合の原発が街中から高速道路まで走る安全な汎用トラックなら,東芝日立開発の BWR は狭い街路を走れない大型排気ガス浄化器を取り付けた大型トレーラだろうか。

主要紙の経済記事は政府大企業のヨイショが増えているような気がする。大企業の出稿が減っているのと政治経済外交環境が1920-30 年代にプレイバックしているからだろうと思う。戦前の日米対立は中国民族資本による繊維産業台頭に危機感を覚えた日本が上海へ侵攻し,日米の中国における権益争いに拡大した。日本の識者は日米関係の深化(同盟)が前提と言うが,台頭する中国と競争競合する政策は戦前の日中経済戦争を省みれば得策ではない。次期合衆国大統領がヒラリー,トランプのどちらになるにしても TPP の暗礁は明白だ。日本も AIIB に投資参加して日中の緊張緩和を図るオプションを考えてもいいのではないか。

中国が高齢化して成長が減速するのは目に見えているから,日本はその間に産業構造を変革すればいいのだが保護と規制でどうにもならないか。じき中国の自動車産業は輸出に向かう事になる。日本は自動車産業の先を目指さなければならないのだが,見通しは暗いな。 

以下は古い原稿だ。
以前,非常用電源ケーブルの不統一から原発のダメコン不備そしてシステム設計の欠如が旧日本海軍と同様のパラダイムに陥っているのではないかと書いた。海軍は陸軍に比べ機器の操作に習熟せねばならないため,徴兵期間も3年と陸軍より長かった。太平洋戦争で艦の運用で最も難しかったのは航空機を兵装とする空母だった。マリアナ沖海戦の最大敗因は熟練搭乗員の不足とされたが,日本海軍空母の設計運用に無理があったようだ。些事に拘り余裕がない。空母の乗組員の1機あたりの航空要員が分解整備の容易な米機でも米海軍が日本海軍の数割増しだったらしい

英海軍も日本海軍と同様な格納庫とし,運用効率は良くなかったようだ。日本の機動部隊に複葉の攻撃機で戦いを挑んだ搭乗員の心情はどうだったのか。英国の原子炉にしても日本にはなじみのないガス炉を採用している。自国の原潜は自国製 PWR だ。今回,商用炉建設は日立に委託する事になった。人馬一体となるようなシステムの設計運用は米日英の順にあるようだ。

原発再稼動に関して,「優先して審査するのは泊3号機と四国電力伊方3号機(愛媛県)、九州電力川内1、2号機(鹿児島県)」だそうだ。 

参考 
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