2017/03/20

iPWR もう一つの原子力ルネサンス

東芝の原発案件の赤字が気になり,GoogleMap でジョージア州 Plant Vogtle の衛星写真をみたら,不自然な切土のない地勢に沿った美しい設計だった。付随する写真を繰ると,東芝製と思われる巨大蒸気タービンが建屋に仮置きされていた。防錆塗料の可能性もあるので断定はできないけれど,シャフトは錆色であった。軍用機とか軍艦のモスボールの技術があるのに,樹脂フィルムとかシートによる養生すらないのも驚きだった。ウェスティンハウスは PWR の老舗であった。土木設計とかマスタープランは優れているが,機器の設置工事とかメンテナンスは不得意というか,係争のあった工事業者と上手くいかなかったのだろうか。本来なら,東芝の仕掛かり品が債務物件となってしまった。

そうかとおもえば,合衆国原子力規制委員会 NRC はアイダホ国立研究所の敷地に SMR (Small Modular Reactor) と称される iPWR の設計審査中だ。日本では実施されそうもない方式だ。北見工大の先生が設計し,先生が設立した会社が経産省 NEDO の助成金により研究開発し,経産省の青森の国研に商業炉を建設する。運営主体は茨城県の役所。電力は関東に至る公営電力会社まで送電して,風力発電の出力変動を補償する。こんな感じだろうか。5-50MWe の出力変動できるとされる。実にすばらしい。日本だと天然ガスの生だきガスタービンと石炭重油火力を減らせる。

WindNukeFollowing.jpg 
NuScale will build the SMR, UAMPS will own the SMR, Energy Northwest will operate the SMR and DOE will provide the site for the SMR on the grounds of its Idaho National Laboratory. UAMPS, an agency of the state of Utah, develops and operates power generation facilities to supply wholesale electricity to community-owned municipal power providers in Utah, Arizona, California, Idaho, Nevada, New Mexico, Oregon and Wyoming.
この炉の燃料集合体は 17x17 と従来の PWR と同じだが長さが短い。電源が落ちても自然冷温停止になる。炉は12個もある。三菱重工は大型化,安全を確保するためループ数を増やした。負荷変動対応はしない。日本海軍が空母信濃を建造し,米海軍が無数のジープ護衛空母を建造したのと少し似ているかな。
     日本       合衆国
炉型式      PWR       iPWR
推進官庁 経産省      DOE エネルギー省
設計建設 三菱重工     NuScale
所有   北電関電九電四電 UAMPS
運営   同上       Energy Northwest

日本の原発は定期検査期間が長くコスト高だ。iPWR は12個も炉があるのでメンテナンスコストはどうなのだろうか。先頭文字 i は Integral の頭文字だ。日本は1年毎の定検時に燃料棒の配置替えと交換する。本方式は2年毎だそうだから,毎年6基の燃料棒交換になるのかな。

NuScale 社は石炭火力の代替を目論んでいる。トランプ政権の環境政策はクソ扱いで,環境庁 EPA 予算の 30% 削減を提案している。旧来の錆州の石炭産業を保護するだろうから政府の優遇措置は望めないかもしれない。

結局のところ,Utah, Arizona, California, Idaho, Nevada, New Mexico, Oregon and Wyoming 諸州の電力公社と州民が決めるのだろう。経産省,三菱および電力会社主導の APWR 政策事業と合衆国地方自治体が参画する iPWR は同じ軽水炉ながら,発想とビジネスモデルが随分と異なり考えさせられる。どれだけローコスト発電ができるか。合衆国の懐の深さを感じる。NuScale は西側商用航空機エンジン三大メーカの一つであるロールスロイスとも提携している。他社との技術提携と既存技術を活用して安全性の高い新原子炉で,小口電力会社に脱カーボン電力を売るつもりだ。

NuScale Integral System Test (NIST-1) facility located at Oregon State University in Corvallis, Oregon
Critical Heat Flux testing at Stern Laboratories in Hamilton, Ontario Canada
Helical Coil Steam Generator testing at SIET SpA in Piacenza, Italy
Fuels testing at AREVA’s Richland Test Facility (RTF) in Richland, Washington
Critical Heat Flux testing at AREVA’s KATHY loop in Karlstein, Germany
Control Rod Assembly (CRA) drop / shaft alignment testing at AREVA’s KOPRA facility in Erlangen, Germany
Steam Generator Flow Induced Vibration (FIV) testing at AREVA’s PETER Loop in Erlangen, Germany
Control Rod Assembly Guide Tube (CRAGT) FIV at AREVA’s MAGALY facility in Le Creusot, France

炉のクリティカルテストは米,加,伊,独,仏で実施されている。恐竜のような進化を遂げた東芝ウェスチングハウスとベンチャーの NuScale は実に好対照だ。東芝の合衆国原発建設事業が頓挫する間にも,別の原子力ルネサンスが合衆国主導で欧州企業と連携して実用化されつつあるのか。

小泉元首相らのシルバー民主主義の日本では到底不可能な地方自治体主導の iPWR だ。強いて可能性のある北海道だが,後進的な自立心の薄いアラスカ州みたいな精神風土だから無理だろう。王政復古させたような革新的長州のような県が出てきて推進しないと思うが,そんな事はあり得ない。衰退する日本にどうみても無理か。

iPWR は熱効率が悪そうだ。合衆国のような連邦制だからできる。官僚統制の中央集権国家なら,フランスがお手本か。フランスはガス冷却炉から PWR に移行した。テロ対策とか考えると,国家警察の強い日仏は原子力むきなのだが。スイスも有名な警察国家だけど,原発更新をしない決定をした。電力をフランスから買電するのだろう。

そもそも住民の原発反対運動の盛んな日本に原発建設を推進したのがおかしかったのか。明治まで農具プラウを拒否してきた日本だ。高価な液化天然ガスを生だきするとしようか。会社は高い電力代に閉口して海外とりわけ合衆国に工場を移転する。トランプの脅しは渡りに船かも。レンタルサーバ事業も電気代がネックだ。海外サーバが主流になるだろう。当然,栽培ハウスもヒートポンプなら電気代で韓国に勝てない。

合衆国の SMR プロジェクトの一つである SMR-160 は三菱重工と提携している。推進事業者 Holtec は 16個の AP-1000 に使用される熱交換器を製造したそうだ。DOE のファンドを受けずに計画するそうだ。原発事業のプライムにならず,コンポーネントを世界中に供給するというビジネスモデルの方がいいかもしれない。例えば,世界の航空機メーカは多いけど,エンジン供給は3社に限られる。同様に,乗用車の変速機は5社程度だ。他方,エンジンメーカは乗用車製造会社と同じくらいある。三菱自工はエンジンをヒュンダイにライセンス供与していたが,三菱はルノー傘下に入り,ヒュンダイは世界有数の自動車メーカになった。技術とビジネスは別物と分かる。

各 SMR プロジェクトがそれぞれ最終段階までゴールするのではなく,選抜淘汰および保険の意味合いがあるのだろう。合衆国官民一体の原爆開発にしても,ウラン型とプルトニウム型の二本立てであった。合衆国の軍用機は航空機製造会社間のコンペで決定された。ソ連も設計局間のコンペである。日独英もコンペだったが,人的資源に限界があったせいか指名に変わった。戦闘機の失敗で有名なのは烈風とタイフーンである。烈風は戦争に間に合わず,タイフーンは戦闘能力が低く,戦闘爆撃機として使用された。

石炭と原発と中国
NRC の審査認証に気の遠くなるような期間を要し,さらにアセスメントもある。人口密度の高い国では費用コストが見合わないだろうと思う。日本がかつて公約した気候変動条約は事実上,反古になっている。日本単独では国際ルールを変更する力はない。戦争ですらハーグ陸戦規定,捕虜の扱いに関するジュネーブ条約があり,戦前の日本は遵守せず,国際世論(西欧)の非難を浴びた。戦前の蛮行に,一体,日本会議の主張するような大義があるのだろうか。

脱炭素をどうするか。欧州のようなガスパイプラインのない日本で脱炭素は原子力を考えないと,なかなか難しい。2008 年における一人当たりの石炭消費量の多い国々を示す。単位はkg。

カザフスタン   5104
南アフリカ      3707
ポーランド      2170
韓国             2068
中国             2057
イスラエル      1831
オーストラリア1683
香港             1558
ウクライナ      1530
合衆国            1522
日本               1447

DOE の Energy Information Administration(EIA)によれば,
世界の一次エネルギー消費は図 1.2.1 に示すように、2008 年から 2035 年に向けて年平均 1.6%で伸び、2008 年の 127.2 億 toe(石油換算トン)から 2035 年の 194.0 億 toe に増大するであろう。同期間におけるエネルギー別の年平均伸び率は、石炭が 1.5%、天然ガスが 1.6%、石油が 1.0%で、石炭の伸び率は天然ガスと同程度と予測されている。全エネルギー消費に占める石炭のシェアは 2008 年の 27.5%から 2035 年に向けて殆ど同じ程度で推移すると見込まれており、天然ガスも 22.5%前後のシェアで推移するとしているが、石油は 2008 年の 34.3%から 2035 年には 29.3%に低下するとしている。同期間の原子力の伸びは年率 2.4%と、化石エネルギーの伸びよりも大きいが、そのシェアは 2008 年の 5.4%から 2035 年の 6.7%へと 1.3 ポイントの拡大にとどまる。同様に水力を含む再生可能エネルギーの伸びは 2.8%で最も高くなっており、シェアも僅かに拡大すると予測されている。
日本とかドイツの脱原発政策は世界に逆行しているのがわかる。発電に使用される一般炭の輸入は80年代からものすごい勢いで増加したが,最近その伸びが止まるかにみえたが,原発停止でそうもいかなくなった。PKO で世界貢献するのもいいけど,原発が怖いから停止して石炭を燃すのは先進国として,どうなんだろう。
中国国家核発電副総経理の鄭明光(チョン・ミングアン)氏は16日、英ロンドンで開かれた世界原子力協会会合で、中国が今後10年で原子力発電所60基を建設する計画を明らかにした。5年で30基のペースで作る。
中国は発展途上国だけれども,中国に脱炭素の世界貢献してもらうしかないのか。炉型式はウェスチングハウスの AP1000 が主力だ。ウェスチングハウスが破産すると,中国が買収するのが自然な流れか。

結局のところ,脱原発脱炭素を目指す日本は,まっとうなエネルギー政策の米韓の倍の電力料金だ。やせ我慢するしかないのだろう。

2011 年の 3.11 は反原発を脱原発に日本人を変心させた。かつての 2.26 のようにその動きはもう止まらない。国力の衰退が加速するだろう。2045 年頃の日本財政破綻も,早まるだろう。製造業と情報産業は壊滅だ。日本再生(ルネサンス)は 2080 年頃か。1945 年の原爆被害そして 2011 年のフクシマ危機だから,そのトラウマが緩和されるのはそんな感じだろうか。それまでに日本の人口は減るけれども,地球資源の節約に貢献できる。

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参考
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