自衛戦争と TPP
ごく普通のアメリカ人が考える「良い戦争」とは独立戦争,第二次世界大戦,そしてスターウォーズだろうか。司馬遼太郎は日露戦争は良い戦争で,昭和の日本の戦争はどうも良くないと考えていたようだ。中国では抗日戦争が良い戦争だろう。
中国文明に大きく影響を受けた朝鮮とベトナムではどうだろう。ベトナムは長い長い独立戦争の歴史がある。ホーチミンが抗仏戦争当時,中国人の糞よりフランス人の糞の方がましだと言ったとされる。朝鮮はベトナムに比べ,余りにも北京に近いせいか独立に拘るような戦史はないようだ。私の習った朝鮮史では,中国の植民地としての楽浪郡,帯方郡から始まり,中朝間の大規模な戦争を習った記憶がない。文科省の意図的な編集だったのだろうか。あとは高麗の元寇,倭寇,秀吉による両戦役だけだ。
朝鮮戦争が日本の位置づけを大きく変えた。日清日露および朝鮮戦争まで日本近代史で朝鮮を巡る国際関係が日本を翻弄し続けた。朝鮮戦争が米国の対日占領政策を大きく変えた。欧州では第一大戦後,小国の発言力が大きくなり,独ソの拡張政策の衝突があったにせよ,中世以来戦争ばかりだったのが,まがりなりにもECが戦争をさける大きな枠組みになった。その始まりは鉄鋼と石炭の共同管理だった。
TPPにはベトナムが含まれ,韓国は含まれない貿易協定だ。対中韓の外交を考えるうえでこの両国が含まれない経済協定は意味があると思う。日本が TPP妥結できれば,実質の日米を中心とする経済の枠組みであり,安全保障への影響が大きい。しかしながら日本が TPP から離脱するようになる可能性は農協と各県議会の動向からするとかなり高い。8/15の政府会議でブルネイでのTPP関係閣僚会合には,経済再生担当大臣が行くそうだ。交渉の手足の実働部隊は何処の省からの派遣なのであろうか。戦前の軍縮交渉では,外務,海軍さらに大蔵から随員が交渉に関わり,総理府は影が薄かった。政府会議のメンバは以下の通り。安倍総理はメンバではないのかな。たった,25分の会議だから出席しようと思えば出来ただろう。実際のところ,安倍氏は TPP に乗り気ではないのかもしれない。
菅 義偉 内閣官房長官
甘利 明 経済再生担当大臣
岸田 文雄 外務大臣
麻生 太郎 財務大臣
林 芳正 農林水産大臣
茂木 敏充 経済産業大臣
加藤 勝信 内閣官房副長官
世耕 弘成 内閣官房副長官
杉田 和博 内閣官房副長官
中韓に対する外交戦略上,TPP は有効だと思うのだが国内情勢を考えると無理か。安倍氏が下から上がってくるレポートにどれだけ真摯に対応できるか。戦前,省庁を枠組みを越えて,陸軍の肝いりで対米戦争の可否について総力戦を研究した。その結果,見事に実際の太平洋戦争の経緯と一致したが,時の陸軍大臣東條は無視した。海軍省は予算獲得第一主義で総力戦などどうでも良く余り協力的ではなかった。太平洋戦争は自衛戦争だったか?中韓との摩擦を避けるための TPP という発想が安倍氏にあるのだろうか。彼の外交認識はどうなのだろうか。日経は懸念を表明して,『国の内側から世界を眺めて「守る・攻める」の議論に明け暮れていないか。日本自身は変わる気がないのか。各国は、政権安定を手にした安倍晋三首相と自民党に、改革を先送りする微妙な油断を読み取っている』との7/26の編集委員太田泰彦の記事,また,白石隆は広域FTAが中国の政治リスクをヘッジするとも述べている。日本からみれば,韓国もこれに含まれていいのではないかと思う。しかし,日欧,米欧間の交渉も始まり,TPPの価値が下がるかもしれない。
かつて,独ソ戦の帰趨が見えた時,米国は日米諒解案を反古にし,ハードルを上げたのだ。TPP もその二の舞になる気がする。安倍氏の改憲発言をみると,世界における日本の立ち位置と外交交渉時間感覚が少しおかしいのではないか。70年前,中国とアメリカに躓き,今度は東南アジアとアメリカにまた躓くのか。まあ,満州問題が国内問題の陸軍とリンクしていたのと同様,TPP 問題が国内の農水省とリンクしているのも同様なアナロジーだ。米欧間で妥協をみれば,米国は容易に日本と妥協しないだろう。また,戦前同様の袋小路か。安倍政権であろうとなかろうと先送りはどうしようもないな。

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中国文明に大きく影響を受けた朝鮮とベトナムではどうだろう。ベトナムは長い長い独立戦争の歴史がある。ホーチミンが抗仏戦争当時,中国人の糞よりフランス人の糞の方がましだと言ったとされる。朝鮮はベトナムに比べ,余りにも北京に近いせいか独立に拘るような戦史はないようだ。私の習った朝鮮史では,中国の植民地としての楽浪郡,帯方郡から始まり,中朝間の大規模な戦争を習った記憶がない。文科省の意図的な編集だったのだろうか。あとは高麗の元寇,倭寇,秀吉による両戦役だけだ。
朝鮮戦争が日本の位置づけを大きく変えた。日清日露および朝鮮戦争まで日本近代史で朝鮮を巡る国際関係が日本を翻弄し続けた。朝鮮戦争が米国の対日占領政策を大きく変えた。欧州では第一大戦後,小国の発言力が大きくなり,独ソの拡張政策の衝突があったにせよ,中世以来戦争ばかりだったのが,まがりなりにもECが戦争をさける大きな枠組みになった。その始まりは鉄鋼と石炭の共同管理だった。
TPPにはベトナムが含まれ,韓国は含まれない貿易協定だ。対中韓の外交を考えるうえでこの両国が含まれない経済協定は意味があると思う。日本が TPP妥結できれば,実質の日米を中心とする経済の枠組みであり,安全保障への影響が大きい。しかしながら日本が TPP から離脱するようになる可能性は農協と各県議会の動向からするとかなり高い。8/15の政府会議でブルネイでのTPP関係閣僚会合には,経済再生担当大臣が行くそうだ。交渉の手足の実働部隊は何処の省からの派遣なのであろうか。戦前の軍縮交渉では,外務,海軍さらに大蔵から随員が交渉に関わり,総理府は影が薄かった。政府会議のメンバは以下の通り。安倍総理はメンバではないのかな。たった,25分の会議だから出席しようと思えば出来ただろう。実際のところ,安倍氏は TPP に乗り気ではないのかもしれない。
菅 義偉 内閣官房長官
甘利 明 経済再生担当大臣
岸田 文雄 外務大臣
麻生 太郎 財務大臣
林 芳正 農林水産大臣
茂木 敏充 経済産業大臣
加藤 勝信 内閣官房副長官
世耕 弘成 内閣官房副長官
杉田 和博 内閣官房副長官
中韓に対する外交戦略上,TPP は有効だと思うのだが国内情勢を考えると無理か。安倍氏が下から上がってくるレポートにどれだけ真摯に対応できるか。戦前,省庁を枠組みを越えて,陸軍の肝いりで対米戦争の可否について総力戦を研究した。その結果,見事に実際の太平洋戦争の経緯と一致したが,時の陸軍大臣東條は無視した。海軍省は予算獲得第一主義で総力戦などどうでも良く余り協力的ではなかった。太平洋戦争は自衛戦争だったか?中韓との摩擦を避けるための TPP という発想が安倍氏にあるのだろうか。彼の外交認識はどうなのだろうか。日経は懸念を表明して,『国の内側から世界を眺めて「守る・攻める」の議論に明け暮れていないか。日本自身は変わる気がないのか。各国は、政権安定を手にした安倍晋三首相と自民党に、改革を先送りする微妙な油断を読み取っている』との7/26の編集委員太田泰彦の記事,また,白石隆は広域FTAが中国の政治リスクをヘッジするとも述べている。日本からみれば,韓国もこれに含まれていいのではないかと思う。しかし,日欧,米欧間の交渉も始まり,TPPの価値が下がるかもしれない。
かつて,独ソ戦の帰趨が見えた時,米国は日米諒解案を反古にし,ハードルを上げたのだ。TPP もその二の舞になる気がする。安倍氏の改憲発言をみると,世界における日本の立ち位置と外交交渉時間感覚が少しおかしいのではないか。70年前,中国とアメリカに躓き,今度は東南アジアとアメリカにまた躓くのか。まあ,満州問題が国内問題の陸軍とリンクしていたのと同様,TPP 問題が国内の農水省とリンクしているのも同様なアナロジーだ。米欧間で妥協をみれば,米国は容易に日本と妥協しないだろう。また,戦前同様の袋小路か。安倍政権であろうとなかろうと先送りはどうしようもないな。

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