2014/01/31

日中の長老システム

JB Press の「日本の大企業に似ている中国の政治システム」と題された興味深いコラムを読んだ。サブタイトルは「長老が人事を牛耳り、改革は先送りに」となっている。大企業が変革に乗り遅れ,最悪倒産するにしても国家が崩壊するわけでもない。しかし中国の場合,深刻だ。歴代中国の王朝がごく少数の遊牧異民族に簡単に倒される理由の一端がわかった。官僚制は平時には有効に機能するが,有事には弊害をもたらす事の方が中国の場合,多いように思える。漢族が建てた王朝は漢,宋,明,中華民国そして今の中共くらいしかない。北京は元来,異民族が北部に建設した都でもある。その異民族の王朝も漢化して,官僚制と儒教に基づいた統治を繰り返した。清が英国とアヘン戦争をしたとき,数隻の英王立海軍(ロイヤルネイビー)が黄海に出現したら官僚は狼狽して,アヘン売買の自由と香港の租借を認めた。

明治の日本は戦前の日米以上に国力差があるのにもかかわらず,朝鮮の覇権をめぐってロシアに挑戦した。日本海軍は水兵に牛肉を食わせてまでして,英海軍を真似てロシア海軍を圧倒した。日英同盟が解消され,海軍の先端情報が得られなくなり,また海軍の官僚機構も変革を受け付けないようになった。そのうえ,明治海軍にはなかった日本を極度に純化した皇国思想がはびこるようになってしまった。日本も清朝のようになってしまった。

日中において長老が蔓延るのは何故だろうか。官僚制と年功序列は相性が良い。日本は江戸期以降,儒教精神に基づく政治を理想としてきた。この事も関係しているだろう。頭の固い老人が脱原発を掲げて,政局を動かそうとしている。時代錯誤の悲しい物語にドンキホーテがある。

江戸期,尊王の精神は水戸藩に蓄積され,幕末にはその水戸エネルギが天狗党の乱になった。隠居の年老いた家老職をリーダに選び,尊王を掲げ水戸から慶喜公がいる京都に向けて進発した。途中の譜代藩は武装した一隊を阻止する事なく通過させた。皮肉にも阻止したのは外様の加賀藩であった。乱を起こした脱藩武士には極刑が課され,切腹は認められず斬首となった。不法な武装組織を通過させた諸藩の不作為に咎めはなかった。幕藩体制崩壊の始まりだった。

年老いた老人が国を憂いて起つ。遊牧国家では非常に珍しいことではないかと思う。元首相の細川氏と小泉氏の老いの一徹。政治的立場は異なるとされるが,細川氏は元自民党である。私は原発推進の立場だけど,両元首相の唱える主張の純化性には特攻精神同様,日本人の心性をゆさぶるものがある。百年後の日本にあって,日本の分水嶺になっているやもしれない。

やはり,日本は神の国だとつくづく思う。
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