2014/05/02

福島第二原発 9km 電力線布設

震災時の福島第二原発所長増田氏への毎日新聞インタビューからの引用。

原発事故の基本動作は「(原子炉の運転を)止める」「(原子炉を)冷やす」「(放射性物質を)閉じ込める」の三つです。社員の手だけでこれらができなければならないと思います。これまで社員の仕事は安全管理面が主で、モーターを交換したり、ケーブルを接続したりする現場作業は協力企業任せでした。

長さ約9キロの仮設電源ケーブルを人力で敷設することに時間がかかりました。通常は機械でやる仕事です。20人なら1カ月半かかる作業でしたが、約200人が早朝から深夜までかかって何とかケーブルを敷いてくれました。本当にぶっ倒れるくらい頑張ってくれました。私自身、一番つらかったのは、所員に「我慢して所内にとどまってくれ」と呼び掛けたことです。

各号機では(放射性物質を含む気体を排出し、格納容器の圧力を外に逃がす)ベントを準備していましたが、ケーブル敷設などで何とか冷却機能を回復しました。あと2時間遅れたら、第2原発も第1原発と同様にベントしていたことでしょう。紙一重のぎりぎりセーフでした。


9km の電力線布設がフクシマ放射能汚染の明暗を分けた。どのくらいの重さ太さの電源線か記述がないが,工事に使うような電工ドラムケーブルの太さとは大違いだろう。恐らく片手で持ち上げられいないほどの重量がある。ドラムもトラックの荷台に載せて運ぶ。ドラムの荷降ろしはクレーンを使用する。人手とは書いてあるが,恐らく重機を使用して斜面を高台の送電塔までよじ登ったのだろう。全長 9km のケーブルドラム数はいかほどになるか。しかし,東電原発の保守要員が電線の接続ができなかったとは驚きだが,事実だろう。工業高校の電気科卒なら実習があるけど,大学大学院では有り得ない。専用の工具を用いきちんとした手順で作業しなければならない。電線接続は電気のイロハのイだ。

これが航空会社や海自のように自ら使用する機器のメンテナンスをする際,分解組立てをしていたらダメコンの手技にまごつく事もなかったのだろうと思う。電力会社の社員でどれだけ電気工事の経験があるか。殆どないだろう。先にあげた海自にしろ,艦橋にいる士官は実務をできないだろう。ダメコンを支えているのは経験豊かな下士官だ。空自は航空機の分解は全くできないらしい。沖縄で飛べなくなった軍用機は現地で修理保守できないから,船で愛知まで輸送しなければならない。日米決戦となった比島戦では 2000 機戦力があったのに稼動機は 1/10 以下であった。組立て整備補給が全くデタラメだった。集団的自衛権とか有事法制とか整備する前に,東電化している軍官僚を何とかしなければならないが,そんな危機意識はないようだ。平和ボケだ。

現首相の目指す,集団的自衛権は法律論であるからその本質は対中国ではなく国内体制の締め付けなのだろう。目的は国民の統制だと思う。戦前の統帥権干犯の法律論争が結果的に統制(全体)主義への道を拓いた。ドイツは2度の世界大戦の敗戦を経験して,過度のナショナリズムの愚かさをようやく体得した。自民族優越主義の風潮が高まる中,過去を顧みない日本人はもう一度,敗戦の悲哀を経験しないとダメだろう。

今度の相手は中韓の連合軍だ。沖縄と対馬は失うだろう。九州も非武装地帯になるかもしれない。なぜそうなるか。現代戦は空軍による制空権がカギだ。震災時,水に浸かった対地支援戦闘機(戦闘爆撃機)の修理を空自はできなかった。戦前の陸海航空隊より整備技量は低いだろう。緒戦はいい結果かもしれないが,継戦能力はない。

米軍は朝鮮戦争とベトナム戦争で使用した兵器(軍用機,戦車)の修理を日本の民間業者に委託して戦争を継続した。非常時のダメコンと整備補給の後方支援のマネジメント整備が先だろう。しかし,何よりも先に諜報組織(スパイ機関)の整備が必要だ。明治に朝鮮侵攻ができたのは江戸期の倭館での情報があったからだ。今の日本外務省出先大使館が非合法の諜報活動しているとは到底思えない。

中国と韓国の直近の戦場がベトナムなのは意味深だな。ベトナムでの中国軍と韓国軍の行動を仔細に調査すれば,その弱点も明らかになる。日本はベトナムとは友好関係を深めなければならない。かつて米国は日本の旧軍関係者を懐柔(買収)して中国と朝鮮の情報を入手して冷戦に役立てた。日本はベトナムで同様の事を真似ればいいだけだ。買収は非合法なので諜報機関がどうしても必要だ。

現場から遊離した二重構造の社会は東電に限らず,一般の会社,役所,学校に蔓延している。これは儒教の考え方に行き着く。中国の高級官吏は詩文の才能が最も大切とされ,実務を忌み嫌った。軍事の素養がないのに外戦内乱の最高指揮官になった。別に異民族は中国の華夷秩序の儒教に則り戦う事はない。一方,西欧列強は帝国主義の国際法規に基づき中国を侵略した。知識人が軍を指揮したせいで蒋介石にしろ毛沢東にしろ負け戦続きだった。日本の東條も典型的軍事官僚で,自殺の際拳銃の使用方法を誤る程の火器オンチだった。陸軍幼年学校から陸軍大学校までの軍事教練は火器取り扱いについてどうだったのか。電気配線をした事がない社員が原発所長になるのと似た構図かもしれない。

毎日新聞は「現場力」と表現している。現場が実務をするのは当たり前だが,上層部が実務をできない弊害が日本でもまた増えているのだろう。防衛論争する位なら,まずは政治家が工兵兵站とかの体験入隊でもしてからにしたらどうだろうか。東大教授の下での諮問委員会が本当の有事に役立つとは思えない。繰り返しなるが,集団自衛権の法律論争は政府の国家統制が目的だ。中国の脅威は猫だましだ。統制のための種々の法律改正が恐らくなされるだろう。国会は戦前の翼賛会のようになり官僚政治が復活するだけだ。しかし,私が存命中に実現するとは思わなかった。

日本人は明治の自由民権運動そして戦後の民主制自治に失敗した。仏教が結局,日本の風土に根付かず戦没者を神道で弔うのも外来の文化は受け入れてもうわべだけだろうか。日本人は組織(会社軍)に従順だ。若者が特攻の命令も受け容れた。歴史を顧みれば,中国との対立を利用して統制を強化するには武力衝突と民間企業の排斥が必要だ。日中の官僚政治家はともに敵が必要だ。さて,民間人が殺されたら武力発動となるか。日本船籍の商船が災難になっても政府は動かないだろう。やはり,軍艦の不意の戦闘だろうか。朝鮮戦争の掃海に従事した旧日本海軍の戦死者は金毘羅神社に祀られている。自衛隊の戦死者が靖国に祀られたら,天皇の参拝は復活するだろう。

関東大震災が 1923 年で,満州事変が 1931 年だった。たった8年後の激変だ。天地異変があると歴史が大きく動いた。伝統的英米協調主義があっと言う間になくなり,ソ連ドイツの国家主義に瞬く間に傾倒した。西欧の危機はドイツおよびソ連によるポーランド分割で頂点に達し,世界大戦が始まった。日本政府は独ソ不可侵条約も独ソ戦の意義を深く考えず,中国対策ための米国カードとしかみなかった。

今,ウクライナ危機が日中韓諸問題と米国を介してリンクしているのは,戦前の教訓から明らかだと思うのにその論調はない。やはりマスコミは意図的に避けているのだろうか。9月にプーチンが来日する。ウクライナの強気の背景にはドイツの支援(干渉)がある。日本は独自外交のチャンスだが,交渉のための機密情報がない。フィリッピンのような属国意識に現首相が踏みとどまれればいいが,スターリンの提示に松岡洋祐のように舞い上がってしまったら誰が押しとどめるのか。谷内か菅か。。。

自民党の石破氏が訪米する。米国政府は値踏みでもするのだろうか。
関連記事

コメント

非公開コメント