2014/05/04

NY Times オバマ外交と日本の豚肉関税

米国自体がオバマ外交をどう捉えているのか気になり NY Times をみてみた。全文を掲げる。

WASHINGTON — President Obama envisioned building a foreign policy legacy in his second term: a nuclear deal with sanctions-strapped Iran, an end to United States involvement in conflicts overseas and a successful pivot to Asia, including a trans-Pacific trade pact.
Fifteen months after his second inaugural, those goals look more problematic, and Bashar al-Assad of Syria and Vladimir V. Putin of Russia have created new crises. Dashed foreign policy dreams aren’t unique to this second-term president: Dwight D. Eisenhower had to contend with the downing of a spy plane by the Soviet Union, the Iran-contra scandal bedeviled Ronald Reagan, and the Iraq war turned into a nightmare in George W. Bush’s second term. Mr. Obama’s woes are complicated by a sense — denied by the White House — of American disengagement.
“The perception of American withdrawal is palpable,” said Stephen J. Hadley, a national security adviser to George W. Bush.
William S. Cohen, who served as defense secretary under President Bill Clinton, said that “the Europeans and the Gulf states think that we’re leaving,” and that “the Asian countries think we’re not coming.”
Moreover, Mr. Obama is caught in a contradictory squeeze. On issues like Syria and Russia, he is depicted as insufficiently aggressive or tough. At the same time, the American public, turned off by the Iraq and Afghanistan wars, wants no part of more aggressive foreign entanglements. Even some Republicans are taking cues from Senator Rand Paul’s quasi-isolationist stance.
Some of the specifics seem bleak and intractable. The Syrian civil war is deteriorating, affecting the entire region, and Mr. Assad is getting stronger, even as the Obama administration says he must leave power. Despite the efforts of Secretary of State John Kerry, the Israeli-Palestinian peace process is barely on life support.
United States officials acknowledge that they lack a good read on Mr. Putin’s intentions. There is a good case to be made that Mr. Obama’s policies toward Russia are smart in the long run. Yet like every president since Truman, there is little Mr. Obama can do to stop Russian aggressiveness in the short term.
Even the two big areas where major successes are possible this year — an Iranian nuclear deal and sweeping trade agreements — are fraught with political complications.
Both sides want a nuclear agreement, Mr. Obama for security and legacy reasons, the Iranians for economic and political ones. Important details remain, informed sources say, but the negotiators have made progress, and there is even some hope of an accord before an interim agreement expires on July 20.
If that happens, there will be two critical questions: Although Prime Minister Benjamin Netanyahu won’t be pleased, and his government will express strong reservations, will the Israelis go all out to persuade Congress to sabotage the deal? Then, will two top Democrats — the chairman of the Senate Foreign Relations Committee, Robert Menendez of New Jersey, and Senator Charles E. Schumer of New York — join Republicans in trying to thwart a deal?
At that point, would Mr. Obama be willing to expend enormous political capital by telling the country, as well as Congress, that failure to accept the deal means a nuclear-armed Iran or war?
The other conceivable victory would be obtaining so-called fast-track negotiating authority for trade agreements, followed by the signing of the Trans- Pacific Partnership, which would be the biggest trade deal in American history.
Mr. Obama’s problem is his own party. A majority of House Democrats oppose the pacts under consideration, and the Senate majority leader, Harry Reid of Nevada, has signaled little interest in bringing any agreements to a vote this year. The White House, already worried about the prospect of Republican control of the Senate in Mr. Obama’s final two years, has difficult calculations to weigh.
The president is to return on Tuesday from a trip to Asia, where his pivot policy has alienated China without assuaging American allies. When he lands at Andrews Air Force Base, he may feel that even the recalcitrant and partisan Congress isn’t any messier than this uninviting global landscape.


以前に,英東インド会社(英議会)と清官僚(マンダリン)との通関交渉になぞらえて TPP は日本官僚と米議会との交渉だと書いたが,概略合致しているようだ。第2期のオバマ外交はシリア問題,イラン核問題,パレスチナ問題のはかばかしくない結果に対してアジアへの展開は数少ない成功と捉えているようだ。北朝鮮問題に関しての言及は全くない

下院の多数を握る民主党は TPP そのものに反対。上院は今年度 TPP 法案を通さないとしている。アジア歴訪に関する記事ながら,中国 China の語句はあるが日本 Japan の語句は全く出て来ない。今回の歴訪は対中国を意識したものだろう。日韓は米国の属国扱いなのだろうか。両国とも親米国だし,中国の脇腹に位置している。中国が南進しようにも遼東半島を喪失したら黄海北京はあっという間に危機に陥る。

太平洋戦線で数少ない兵力の米軍は日本軍と戦いながら1945年の夏,米海兵は秦皇島に進出し,陸軍航空隊の B-24 長距離爆撃機は満州にまで駐機するようになっていた。海兵は最初ガダルカナルに上陸したとき1個師団,太平洋戦争末期でもたった3個だった。欧州には数十個の陸軍師団を派遣していたけど。

米国のロシア警戒感は海洋国家であった英国と同じ感覚だろう。GDP は少なくとも核保有と豊かなエネルギ資源が脅威なのだろう。東アジアの日中韓はエネルギ自給の術はない。日本の脱原発は即安全保障上,米国依存になる。イランがペルシャ海峡を封鎖しても欧米は東アジアほど困らない。中国はイランと交渉して石油を得られるだろうが,日韓が米国の意向に反して交渉できるとは到底思えない。韓国は原発があるから何とか耐えられるかもしれないが,日本はどうするのか。集団的自衛権の法律論争の前に,原発の再稼動をどうするかの方がどうみても大切だろう。

現首相は福島第二原発廃炉を明言している。反中国親米を気取っても,エネルギが自動的に買えるわけでもない。日経の記事によれば,米上院はオバマのアジア歴訪後 USTR のフロマンを査問し,日本の円安政策の報復処置を TPP に盛り込むよう提言している。一方,日本国内は豚肉の関税報道に集中している。豚肉の代替は他の肉でも可能だけれども,通貨政策は独立国の最後の砦だろう。TPP とは単なる関税問題ではなく通貨問題だとしたら,見方も変わる。独仏の通貨統合により,ドイツ経済は大きく発展したが,日米の通貨の場合はそうはいかない。ドルは基軸通貨だし,経済力も違い過ぎる。ただカナダオーストラリア日本が協力し合えば TPP 内通貨政策もドルに埋没する懸念も薄れるかもしれない。ここでも豚肉が問題だ。たった豚肉の関税の譲歩ができないばかりに,通貨,エネルギ,安全保障まで影響を及ぼす。何故このような馬鹿げた事が生じるか。首相は議会多数党の代表ながら各省庁の意向を無視できなく,リーダシップがとれない。オバマは通商大権を議会に握られたままだ。

米国にとり a pivot to Asia とは何であるか考えてみると,これは実質的には China を意味する。TPP 諸国のなかでは日本は人口も大きく,経済規模も大きいが所詮,没落しつつある国だ。ここは謙虚にカナダオーストラリアに譲歩して対アメリカ外交政策を練るべきだろう。戦前に中国をめぐり9カ国条約があったけど,うまく機能しなかった。日本が対中,対英そして対米の個々の交渉に固執したからだった。オーストラリアとカナダは非核保有国だし,伝統的に米国の同盟国だ。両国の米国に対する働きかけが効果があるかもしれない。

戦前の日本陸軍と松岡外交による米英離反政策は全く功を奏さなかった事を想い起こそう。農水省が米豪離反を画策しても徒労に終わるどころか弊害の方が大きいだろう。米ドラマをみると,よくプランBというフレーズが出てくる。代替案の事だ。リスクを低減するには代替案が多いほど良い。米国にとり TPP とは対中外交の切り札のうちの一枚ぐらいとの認識だろうか。昔日米軍縮交渉の際,対米7割が政局になった。TPP 交渉でも農産物関税が聖域として脚光が浴びている。外交交渉に聖域など設定したら足元を相手に見透かされるだけだろう。隣国の指導者とも会談ができない国が TPP で主体的に交渉できるだろうか。核保有国のイスラエル北朝鮮の例をみれば分かるだろう。

米国にとり TPP は would be the biggest trade deal in American history とも書いてある。私の思っていた通りだ。米ソの核兵器削減交渉のようにとんでもない長期の交渉になるのだろうか。ソ連崩壊まじかになって交渉が成立した。米国は冷徹に日本の国力低下を読んでいるのだろう。多分10年とか20年単位だろう。余力のある内に妥結しないと,アジア通貨危機後の韓国のようになってしまうが,太平洋戦争の開戦と敗戦同様にどうしようもないか。またしても官僚のミスリードだね。昔陸軍,今農水省か。。。

悲しいかな今も昔も米国民に日本産の必需品はないのだ。必要なのは中国朝鮮への派兵基地軍港とこれらを守る自衛隊と後方支援役務だ。米中が戦った朝鮮戦争における日本の位置づけを再考してみてはどうか。そうするとロシアが北方領土に固執するのも理解できるだろう。アラスカからアリューシャン千島日本列島のラインの方が米国にとり重要だ。そんな軍事環境のなかで中東からの石油を日本まで輸送なんて不可能だろう。昔インドネシアからの石油輸送すら,米潜水艦により滞った。海自が豪語するような対中潜水艦戦なんて旧海軍が米潜水艦の通商破壊を無視していたのと同じような間違いだろう。九州と沖縄の輸送すら危ういかもしれない。

大国の米国がベトナム戦争に敗退したのは国内が分裂し,黒人市民権運動が過激化したからだった。中国も同じような国内のアキレス腱を抱えている。現代中国は人口の高齢化もあり,かつての大清帝国のような繁栄はないかもしれない。毎日新聞によれば国内治安費が国防費を超えたらしい。農民の反乱と西欧列強の侵略に苦しんだ内憂外患の清末期に近づいているのかもしれない。かつての五四運動のような大衆運動が起きる可能性だってある。中国は官僚統制国家であるけれども,濃厚な宗族意識と郷鎮共同体意識は共産党政権下でも強固らしい。日本の企業はどこまでそのリスクを承知して投資しているのだろうか。かつて米国の排日と中国の反日運動を的確に評価損ねた苦い経験は活かされていないような気もする。数年前,日系資本のスーパである湖南省の「平和堂」が襲われた。反米意識が高揚した60年代でも日本では在日米企業を襲ったりはしなかったと思う。日中の対外資本に対する嫌悪感大きな違いがある。それは中華思想だ。儒教で高尚化された排斥思想だ。その実体は宗族,郷鎮,幇,任侠が絡み合って日本人の理解を超えていた。

列強が中国官僚と結託して江南地帯で利権争いをし始めた頃,キリスト教を基にした太平天国の乱が起きた。南京に都を宣言するまで強大になったが,天津攻略に失敗し,郷軍に破れた。清の官軍は鎮圧に役に立たなかった。夥しい遊民を吸収し長期に渡る大乱となった。キリスト教もマルクス共産主義もヘブライズムの亜種とみなせば,現共産党政権は70年程,奇妙な宗教政治が続いているとも言える。本来,宗教心の薄い中国人が本当に共産主義を信奉しているとも思えない。外国の軍隊が駐留する事がなくなった独立した中国が米軍の保護下にある日本を執拗なまでに非難するのだろうか。しかし,そんな擬似宗教統制国家によく日本の会社経営者が投資できるな。ロシア中国統制国家およびファシズム国家の共通点は私権の制限,所有権を侵害する。菅直人の私企業への介入は特に酷かった。元ファシズム国家の原発企業はメルケルが廃止を宣言したとき,国を訴えたが,日本の電力会社は国の不法行為を訴える事ができなかった。国家統制の凄みが現出したけど,民の私権制限に対して報道が異を唱える事はなかった。先の震災は国家統制を強化する基点となった。関東大震災と同じ政治状況になるのだろう。ファシズム発祥のイタリアは共同体国家で自由がないけれども,議会は機能している。イタリア国王は議会によって追放されたまま,今でも帰国できない。日本の通商大権は首相にも議会にもなく,各省庁の協議に委ねられている。一省庁がノーと言えば,妥結できない。今の TPP 交渉をみると,戦前の日米交渉諒解案を思い出す。その肝は中国からの撤兵だった。東條は陸軍を代表して妥協しなかったので,首相を押し付けられる事になった。

戦前は対中問題が米国の門戸開放政策とリンクしていたように,日中の懸案が日米の交易にリンクした。円の対ドル為替は半分まで暴落したにも関わらず日本の景気は良くならなかった。軍事費増大と満州北支への邦貨持ち出しが日本の財政を極度に悪化させた。

戦後,対米関係を含めてこれほど対外関係が悪化した事がない。今日の毎日新聞の大きい見出しが,「米,豚肉関税50円提案」だ。農水省のリークだろう。戦前,陸海軍と大手新聞社の癒着が酷かった伝統が今でも活きている。閉鎖的な省庁記者会は何とかならないのだろうか。統制社会だから仕方がない。しかし,NY Times と毎日との記事内容の落差が余りにも大きい。陸軍は対米英戦争を大東亜戦争と豪語したが,太平洋戦線には中国戦線の半分しか軍事費を投入しなかった。陸軍は主戦場が中国だったから,沖縄が玉砕しても東條らは戦争に負けている気がしなかったのだろう。東京大空襲と2個の原爆でも,本土決戦による玉砕全軍特攻作戦を天皇に具申している。畑俊六という元帥がいた。彼は本土防衛線を視察して,天皇に戦う自信がないと述べた。陸軍侍従が傍らに佇立していただろうから,陸軍省憲兵に筒抜けだっただろう。さすがに憲兵でも元帥を拘引する事はできなかったのか,左遷される事もなかった。彼は生粋の軍人で欧州戦線でハンガリー平原をソ連軍が突破すると,東部戦線が瓦解すると断定した。日本陸軍全体がナチス親衛隊のような狂気集団ではなかった。各師団長の行動をみると臆病な将軍ばかりだ。農水省も TPP 反対一色でもなかろう。問題は東條のような能吏だが,平凡な悪を感じる事ができない(良心の欠如)官僚をどうやって排除するか。これはハンナアーレントの「エルサレムのアイヒマン」の受け売りだ。小泉純一郎とか安倍晋三らの戦後世代の世襲政治家になると,特攻を美化するまでになった。今では,中国米国の忠告も耳に入らなくなった。政治の舞台では良心にうったえても票にならなくなった。堂々巡りになるが,中国のように官僚の属性に悪がつきものだとみなせばいいのかもしれない。しかし宗教心のない中国官僚は凄まじいな。摘発される高級官僚の賄賂が千億から3千億円を超えている。こんな国とどんな交渉をすればいいのか。やはり,買収が確実だろう。非合法のスパイ機関は必要だ。合衆国は国会議員に寄付すれば合法的に買収できる。

しかし,唯一の慰めは簡単に米英の論調を入手できるようになった事だ。戦後の英語教育と通信自由化のおかげだ。


追記
悲惨な玉砕戦が続いたのは,陸軍参謀本部作戦課の理不尽な作戦指導にあった。米軍の水陸両用作戦を学習する事はなかった。現場の師団長は陣地構築の時間もなく,その資材もなかった。概略,送り込んだ兵士の1/3は潜水艦により海没,食糧は半分,重火器に至っては2/3は輸送途中で失われたのではなかろうか。

船団護衛は海軍の担当だから,海軍は陸軍より酷かった。ダンピールの悲劇から,補給船団への的確な攻撃を陸軍と海軍は感じとる事はできなかった。船団情報は暗号解読により筒抜けだったのだが。

米軍の上陸作戦を研究して対案を編み出したのは参謀本部作戦課ではなく情報課だった。日本海軍に至っては,対潜水艦作戦の司令官は予備役の閑職だった。米海軍は大西洋では作戦部長のキング,太平洋では太平洋艦隊司令長官ニミッツの直率だった。

海自の装備をみると,本当に商船を護衛する意志があるのだろうか。米軍との集団的自衛がもっぱら話題になっているけど,台湾,フィリッピン,インドネシア,オーストラリアおよびインド洋諸国との協力による潜水艦対策の方がはるかに大切ではなかろうか。とりあえず,日本の潜水艦を輸出してこれらの対潜水艦戦能力を高めてもらわなければならない。米軍は自軍の事しか考えていない。何処の国でも当たり前だと思う。日本の補給路は何処の国も守ってはくれない。よって,中露との軍事対立は不可能だ。海自は戦前の日本海軍同様,無責任だ。戦前の海軍は米国と戦えないのに平気で戦わざるは亡国と言った。軍人ではなく軍事官僚だった。海自にもその傾向があるようだ。石油,石炭,天然ガスを輸送する長大な航路は日本の最大安全保障リスクだ。そのリスクを低減するのが原発なのだが,国民は戦前同様,海上のリスクを考えない。あれだけ苦しんだのに不思議だ。やはり,日本では安全はタダなのだろうか。

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